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砂漠の梟  作者: CANDY
幸運の星
21/28

推理して墓穴を掘る

 晩御飯はヤカナーンの双子様と一緒。

 贅沢だし礼儀がわからんし。

 ん、お前らは清潔にして涎をたらさなきゃ大丈夫さ。

 存分に食べるのだ。

 私も存分に食べるのだ。

 ん、前の端っこのお肉で作った料理が食べたい?

 私の貧乏料理が好きか?すまぬ、そんなものばかり食べさせて。

 ん、お前ら肉食だよなぁ、元々何食べてんの?


 涼しい風が吹き抜ける広間。

 まだ、主賓は来ていないね。私達は案内された席について、飲み物や果物をすすめられる。

 二匹は大きなお皿に綺麗な水だ。

 ヒンヤリ冷えた果物を食べながら、今日もいろいろあったなぁと振り返る。


 嵐。


 砂船が来なかった私の時間、日数を勘違いしてなかったらとうに過ぎてる。


 嵐は、来なかった?


 むむっと考え込む。

 やはりクゥの所在と護符を渡さねばならない。

 ルフト医師の所在に、ラウロの人質。

 どれも、私だけではどうにもならない。

 考え込んでいたら、ふわっといい匂いがした。

 お香かな?

 木々の香り、花の香り、もっと深いお酒のような香り?

 西の戸口から、ふわっと漂ってくる。

 すると持て成す女性に連れられて、砂漠の長衣を着た人が入って来た。

 砂漠の長衣は陽射し避けもかねているが、凝った刺繍が施されているから礼装にもなる。

 白い長衣にゆったりとした下衣、ア・メルンより暑い場所から来たんだなぁとよくわかる。

 私は一度、座から降り、年長者に対する礼をとった。

 まぁ大体が、私より上の階級の人間しかいない。

 目に入る事も許されないんだけどね。

 けれど今は、ニラガ姫様の客?

 従姉妹?偽装なので、普通の挨拶をする。

 すると、その人は入り口で立ち止まると、砂漠式の挨拶を返した。すっと片足を引き片手で胸に手をおいた。

 叩くんじゃなくて、そっと手で押さえる感じ。

 ばさっと服の裾がはためいて、格好いいね。

 これ私がやると、かっこ悪くなる奴。

「こんばんは、お嬢さん。良い夕暮れですね」

 こんばんは〜と、挨拶を返してから困る。

 招待客が先に来てるし、そもそも聞いてないし。

 そしてオジサンのお髭には見覚えがあるし。

 困惑していると案内の女の人が、オジサンを席につかせた。

 公爵が急な要件で暫し遅れる事を侘びている。

「サリーヤ様、もう少しお待ちいただけますか?」

 大丈夫なの、果物美味しいのさ。

「お連れ様は先にお食事にいたしますか?」

 二匹も待てるの、大丈夫お姉さん、食いついたりしないからね。

 案内役兼接待役のお姉さんが、食前酒をすすめている。

 私はそれをシャリシャリ果物を食べながら眺めた。


 嵐はこなかったようだ。


 目の前に、アデイム・アルダ・ガルダ・アスラムさん。

 クゥの義理のお父さんで、ルフト医師のお父さんがいた。

 到着してるし。

 つまり、今日から十日の出来事だ。

 でも、アマドお爺ちゃんは元気ピンピン。

 ルフト医師は偽物のラウロ。

 護符は私が持ってる、うんうん。

 リカラ氏もお仕事してる。

 謀反の計画は頓挫。

 懸念事項はルフト医師の行方。

 そしてアデイムさんが来たのは、やっぱり息子さんの騒動についてだよね。

 でも、血筋判定どころか別人が偽装していた。

 こうなると本人は何処へいったのか?

 あぁ、ラウロの人質の話が急遽上がったから、それのせいでオルロバ様が遅れてるのか?

「どうしました、お嬢さん?」

 凝視してたら、そりゃ気になるよね。

「素敵なお髭ですね、上にはねてるの始めてみました」

 私の返事に、お世話係の女性の動きがとまった。

「上に、はねてるお髭って特別に何かするんですか?」

 お姉さん、こっそり合図されても、発言は取り消せねぇです。ごめん、失礼だったかなぁ。

「女性の髪と違って、匂いのある物は使っていませんね」

 おぅアデイムさん、ちゃんと笑顔で返事をくれた。

「アマドお爺ちゃんのお髭は白くて山羊さんみたいですけど、上にはねてるお髭も格好いいです。じゃぁ髪みたいに何か塗って固めてるんですか?」

 お姉さん、ごめん話を引っ張っちまったよぅ。変な話題もちだして。笑顔が硬くなってるね。

「蜜蜂の蝋と牛酪で作った物で固めるのですよ。女性の唇にも塗る成分ですね」

「じゃぁお髭でも気にならないですね」

「手入れはかかせませんが、偉そうにみえるでしょう?命令する時に便利ですよ」

 たぶん、お髭がなくても命令を実行させるのに問題はないと思うよ。眼力の圧がすごいもの。ごめんなさいって何にもしてなくてもペコリってしそうだもん。

 会話の間に、お姉さんが復活した。

 アデイムさんに何か言っている。

 何、茶色、飽きた?じゃぁ寝てなさい。もうちょっとするとご飯出てくるから。

「二匹のオラ・ゾエル、よくなれていますね」

「サリーヤと言います。オルロバ様からの紹介の前になりますが」

「これは失礼した、私はアデイム・ガルダ。ニィ・イズラの族長の一人ですよ」

 本人確認終了。

 クゥは同行していないのかな?

 あの時のアデイムさん、ほんの一時見ただけだ。

 金の装飾品を胸に下げるアデイムさんは、思ったよりも若く見えるね。

 日に焼けて浅黒い肌に麦色の瞳だけど、金色なのかな。

 頭髪は頭衣で見えないけど、お髭は暗赤色。

 ルフト医師は赤毛って聞いてるし、髪の毛も同じかな?

 服で見えないけど、これまた大きな人だ。

 まぁ私からすると、重量の大きな獣人は、皆、巨人。

 クゥだって重量種なんだけど、やはり長命種族との混血だから圧迫感がない。

「族長様の御住まいの近くに、彼らの暮らす場所があるって聞きました」

「アデイムで良いですよ、サリーヤお嬢さん。

 オラ・ゾエルの生息地が近くの水場にありますよ。

 木々が茂る場所で野生動物も多く、安息地と呼ばれていますね。ほぼ、砂漠を渡りきった場所になる。彼らの生息地以南は山になり、越えれば南の海ですね」

「遠くから来たんだねぇ、お前たちどうやって来たの?」

「そう、私も気になっていた。どうやってア・メルンまで運び込んだのか」

「灰色はセドリック・モストク渡り神官様が連れてきたです。茶色はよくわからないです」

 あっ、その顔知ってる。

 ニィ・イズラの族長様に、うわぁってされるセドリック神官様。すごいなぁ。

「なるほど、それは奇縁。サリーヤお嬢さんに、穏やかな風が吹くことを願っていますよ」

 あぁ聞かないほうがいいって判断ね。

 穏やかな風って、お茶を濁す時のシメの言葉だね。

 ほかに、神がお許しになればっていう、曖昧な返事とか。

 共通語にすると中々変な感じになるけど、現地の言葉だと決り文句になる。

 一言二言で、あぁそうなんだぁもう聞かないよぅ。厄介な話になりそうだからね。って意味。

 髭の口元をクイッと片方引き上げる笑顔。

 格好いいねぇ、きっとルフト医師も似てるのかなぁ。

 お世話のお姉さんが、ちょっと頬を染めている。

 お姉さん、そのオジサンは奥さんいるからね。

 あっ、でも何人か奥さんいても良い部族もいるからね。いいのかな?

 うぅん、セドリック渡り神官様と面識があるのか。

「どうしましたサリーヤお嬢さん」

「サリーヤで大丈夫です、アデイムおじさん。おじさんの所は奥さんいっぱいもらえる部族だったかなぁって」

 質問が思いもよらなかったのか、アデイムさんは片方の眉をあげた。

「おや、私の所に嫁ぎたいと?困りましたね、私の所は厳格な神聖教信徒ですので、妻は一人ですよ。」

「わぁ残念、アデイムおじさん優しそうで格好いいから、お嫁さん募集してたらよかったのに。お姉さんもそう思うでしょ?」

「はい、そうでございますね、お嬢様」

 冗談とわかったのか、アデイムさんとお姉さんが笑った。

 まぁ、冗談はさておき、セドリック渡り神官様が訪問していた可能性は大きい。

 アデイムさんの所は、神聖教の布教地域、なるほど。

 灰色と長櫃が最初から一緒だったかどうかは、わからないけれどね。

「あら、楽しそうねサリーヤ、それにガルダ様お待たせして申し訳ありません。兄も参りましてよ、さぁ用意をはじめてちょうだい」

 ニラガ様が合図をすると、それまで外で控えていたのだろう使用人が動き出した。

「食事の間は、面倒な話はなしだから大丈夫よ」

 そして、ニラガ様が私に囁いた。

 面倒な話があるって事だね。


 野菜を中心にいっぱい食べた。

 新鮮な野菜は貴重だ。贅沢贅沢。

 本当に、お粥とか雑炊の食生活に戻れるのか不安だ。

「どうしのサリーヤ?」

「姫様、最近贅沢しすぎた。太る」

「まぁサリーヤ、大きくなれないわよ。もっとどんどん食べなさい」

「食べてるし、でも、あんまり贅沢すると、下の生活ができなくなるよ」

 オルロバ様とアデイムさん、そしてアマドお爺ちゃんが最近の政治のお話をしている。

 なので、ニラガ姫様とコソコソお話。

「下って、もし、流浪民としての生活っていう意味なら、サリーヤは私のお客で、本当にア・メルンに籍を置くこともできるのよ。それにリプア様から聞いてるでしょ?」

「聞いてるけど、それとこれとは別。人間、どんな風になるかわからないって考えが流浪民。」

「それはどんな階級の人間でも同じね。でも、少なくともオラ・ゾエル様がたと一緒なら、食事には困らないわ」

「そなの?」

 灰色が骨付きの肉をかじりながら、尻尾を動かした。

 ボフッって側の座布団が飛んだ。これこれ。

「砂漠で彼らは食料に困らないし、人里なら供物があるでしょう」

「砂漠?供物」

「砂漠で頂点の生き物ですからね。サリーヤを養う事など簡単ですよ。」

「いや、姫様。私が養うのがつとめ、飼い主の責任でしょ?」

「飼い主じゃなくて家族。家族はお互いを養うのでは?」

 お肉に齧りついてる猛獣二匹を見て頷く。

 確かに、家族だ。

 今まで生きてきた中で、これほど寄り添ってくれる生き物はいなかった。

 寂しくて辛いと思っても、彼らがいてくれたから生きられた。

 クゥに会えたのも、灰色と出会ったからだ。

「真理」

「サリーヤ、美味しい食べ物を食べている時は、他の心配事は忘れるのが一番よ」

 確かにそうだ。


 食後のお茶を貰う。

 二匹は庭園が見える場所で伸びている。

 そして控えの侍女さん二名が櫛で毛並みをすいていた。

 初めは何するんじゃぁという二匹だったが、特別に作ったという櫛を取り出されて一考。

 選抜された侍女さん二名が食後の毛繕いを許可された。

 何、格好つけてるんじゃお前ら。

 美人のお姉さんが笑顔でお世話してくれるんだぞ。

 尻尾は嫌?贅沢をいうんじゃない、そう、握らなきゃよいか、よいのだな?すごい抜け毛だ。


「次回の遠征に関しては、ホルホソロルから大規模な人数を予定している。

 精神汚染があるようなら、その遠征前に本神殿に相談する事になる。

 ただ、私個人、ニィ・イズラとして先にルフトの捜索を行いたいのだ」

 う〜ん、何か、忘れている。ふと、思った。

 アデイムさんが来た。


 我は嵐を待っている。


「サリーヤ?」

「ニラガ様、なんだかモヤモヤが」

 姫様の耳に囁く。

「ルフト氏はお父さんと喧嘩中」

「そうね」

「それ、ヤカナーンの血統問題から、それとも前?」

 クゥを混血で偽物と言い出したのが先って言っていたよね。

「どういう事?」

 姫様は眉を寄せた。

「聞いてみて」

 躊躇いが無いのが姫様だ。

 兄と客の話題をぶったぎると、まっすぐに質問。

 静まり返る宴席、侍女と楽師がすすっと退出していった。

「ご存知でしたか」

「そうなのかい、ニラガ」

「いいえ、ちょっと気になったのです。もし、今回の騒動以前に何かあったのなら、それも知っておきたいと思いましたの」

「そうですね、もしかしたら異変と関わりがあるかもしれませんね。差し支えない範囲でお話願えても?」

 それにアデイムさんは、苦い笑いを浮かべた。

「たいした理由ではありません。私と妻が養子をとりまして、その事で揉めたのです。」

 ニラガ姫様が目配せするので、バレバレですが耳打。

「それだけでは、勘当しないです、姫様」

 姫様の愛想笑いが固まる。

「ガルダ様、ルフト医師を勘当しましたの?」

 微妙な空気になったが、ここが大事だ。

 アデイムさんは私をちらっと見た。

 ちょっと眼力が怖いから。

 代わりに灰色が隣に来て、威嚇。

 いや、そんな歯茎までみせんなよ、アマドお爺ちゃんが心配そうに見てるし。

 アデイムさんは、そんな灰色を見て表情を緩めた。

「そうです。部族内で対立を深めるような言動が多くなりました。私も部族をまとめる者として、息子の考えの無い発言を処分しなければなりません。去年の秋には、息子を居住地から出しました」

 また、姫様が見る。うぃ、わざとらしいが耳打再び。

「勘当はワザとかなぁ」

「直接、話しなさい。怒らないから」

 と、アデイムさん本人に言われた。


 喋っている内に、時間稼ぎが目的かなって。

 中央軍の介入を遅らせる事。

 このア・メルンに中央軍が押し寄せる事態は困る。

 だって、シシルンの墓に入って、何かをしたいのだ。

 混乱はほしいけど、武力鎮圧されては元も子も無い。

 だから、あくまでも小賢しい争いを続けてほしいのだ。

 もともと、直系殺害は予定外だしね。

 実子のクゥは陽動。


「勘当されないと困る理由の方がある」


 アデイムさんは、長い指で自分の眉間をたたいている。


「もともと破綻しやすい計画だった。だから、成功すれば尚良として、何か別の何かを狙っている?と、言うことかな」

「呪い虫は?」

 オルロバ様の問いに、アデイムさんは首を振った。

「遺跡に関わりのあった者は、体調の変化に気をつけるように、通達はした。今の所、異変は..」


 こちらでの動きが先んじているから、ニィ·イズラの不穏分子が来ていない?

 アデイムさんより先にア・メルンには入れなかった。

 こちらの動きが順調でうまくいっているから?


 アデイムさんの顔を見ながら、モヤモヤが増す。

 なんだろう、なんか駄目な予感?


 シシルンの怒りの声が耳に蘇る。


 ラウロ達は、ジュミテックより更に南東。

 灰色達は西南で、ニィ・イズラは。


「盗賊、盗賊って遺跡にそんな簡単に入れるの?」


 私の質問に、アデイムさんは何の話しだという顔。

「簡単ではないね、盗掘者でも遭難者でも、遺跡は我が領地で管理をしている。

 あの遺跡は四方を岩山で囲まれているからね、天然の囲いの中にあるんだ。

 だから、すべての入り口となる谷や裂け目には、出入りを監視する者がいるんだ」

 そこまで言葉を続けたが、オルロバ様の表情が無くなる。

「お兄様」

 姫様も気がついたが、出た言葉は戻らない。ごめんね、不敬発言は私である。

 当然だが、アデイムさんは私をじっと見つめた。

「盗賊か」

 その呟きは、少し震えていた。

 恐ろしい形相だ。

 思わず灰色に手をやると、ベロリとなめられる。

 茶色は呑気に寝転がってる。

 お前は可愛いから良いや。


「サリーヤ、どう思ったのか教えてくれるかしら?」

 姫様の声に、注意を戻す。

 アデイムさんは、自分のお茶の杯に視線を落とした。

「ラウロの部族の住んでいる場所は、灰色達が旅をするようにはいかない。船に乗らなきゃね」

「そうね」

「じゃぁ誰が砂の海を案内するのかな?盗賊ってそんな万能な集団なのかなって」

「確かにそうね」

「砂の海を渡れるぐらいだったら、盗賊になんかならないでしょ」

 オルロバ様の顔色が悪い。でも、この懸念は、私が聞いた方がいいと思うんだ。不敬だからこそね。

「ニィ・イズラが盗人だと言うのだな?」

 怒るよね、でもまだアデイムさんは、ちゃんと聞いてくれてる。不快な意見でも耳に入れてくれるのは、きっと心の隅で可能性を計算してる。つまり本当は冷静。

「誰が砂漠の海を渡れるのか?

 ジュミテックの兵隊さん、砂船の船員さん、ニィ・イズラの人達、周辺の砂漠の人達」

「ヤカナーンの人間は含まれないのかな?」

「少なくとも、人族種のヤカナーン様は、半日も砂の海にいたら死ぬと思う」

「いや、そこまで弱くないぞ」

 オルロバ様の反論に、私は頭を振った。

「アデイムおじさんなら、わかるよね。」

 それに厳しい表情のまま、彼は頷いた。

「私が知っているのは、流浪民の奥地から来た人を知っているからだよ。ア・メルンの暑さを嘆くのは北の人間だけだって」

 それにアデイムさんは、ため息をついた。

「よく生きる為の勉強をしている、良いことだよ。無知は死を招く」

「何か違うのか?」

「船員でも案外知らないだろうな」

「どういう事ですの?」

「姫様の考える暑さは、遺跡より北側の気温を言っているの。

 私とアデイムさんが考える暑さは、ジュミテック城塞より南下した砂漠地帯。

 ラウロがいる集落はジュミテックの近くって話でしょ。

 そこの砂は焼いた状態なの。

 船の中にいないと、きっと息もできないよ」

 補足するようにアデイムさんが言った。

「砂蟲の巣があるのは、砂の温度が高温だからだ。そこで卵を温めているのだよ。

 確かに、タウロスの近くから村人を攫い小舟に乗せて砂漠を渡り、遺跡に隠す?不可能だ。

 盗賊共の出没地は地下水脈がある岩窟か地下と相場が決まっている。どうやっても煮え滾る砂を渡れるとは思えない。だが、それでも我が部族の者が盗賊の真似事とは」

「ラウロの人質の話は信じられない?」

「証拠は君たちの証言だけだ」

「そうだね、未確定の話は無意味。

 でも、これが理由だと偽物ルフト医師の行動は説明できるね。そしてラウロ達を誘拐してくる理由にもなる」

 嫌な話をするのは疲れるね。

「ラウロの部族は、いろんな種族が仲良く暮らしているみたいだね。

 だから、ラウロは長命種族の先祖返りだ。

 そして不思議な能力もある。

 きっと彼の住む場所は、亜人や獣人、人族も仲良く暮らしているんだよ。

 それでアデイムおじさん、偽物のルフトさんの主張に賛同していた人達はどんな人かな。その人達は、今、どうしているのかな?」

 彼は肩をすくめた。

「それぞれの族長にまかせた」

 野放しだねぇ。

 偽物呼ばわりされたクゥ。結局、混血を外の者って思っても仕方ないよねっで処理したんだ。

「私も混血。怖い事から逃げるには、情報って重要。混血を排斥する人は、血筋だけで免罪符がもらえると思ってる。神聖教徒に混血を貶める言葉はないし、王国の公王様を馬鹿にする事だ」

 まぁ、クゥのお話だけど同じく私の事だ。

「知っていたか、どこで耳に」

 アデイムさんは、庇ったと思いたい。実子を勘当したのは、どちらを守ったんだろう。

 けど、情報漏洩を先に気にするとか、アデイムさん減点。

「ラウロ達が狙われたのは、きっとヤカナーンと誤認する血が流れている事と、彼が先祖返りだったからだよね。

 犯人の人物像は絞られると思うよ。

 長命種族の貴族が出入りしたら一発でバレるし、たとえ手を組んでいたとしても、砂漠の端の部族の情報を知っているなんて、ホルホソロルか周辺の部族民ぐらいだよ」

 ふぅすっきりした。

 嫌味な事を言いまくっちゃった。

 予定が狂いまくってるからね、もう、前の時の流れで色々考えるのは危険だ。

「順番はこうかな?

 ルフト医師は、地下遺跡にて異変に遭遇失踪。

 ルフト医師偽は、ニィ・イズラにて反社会運動をし、仲間を集める。

 ルフト医師偽は、わざと親子関係を断つ方向へ誘導。

 疑惑を回避する為と、他の工作の為?

 協力者達は、ラウロの部族を襲撃、神殿判定の混乱とラウロの技能を狙って誘拐。

 ここまでの利点は、ニィ・イズラの対立がルフト医師の失踪偽装に役立っているって事。」

「偽装を見抜けたのは幸運だっただけ、本来は敵の動きが速すぎて負けているわね」

 発掘調査で異変から一年だ。争乱の種はあれど、これは危険だよね、敵側の首謀者、原因は素早く残酷とか。

「ア・メルン側は、まず最初に毒殺。

 犯人は血統問題で来てる客。

 今日みたいに晩餐の途中で、アマドお爺ちゃんが毒殺、アデイムさんが犯人。

 これだけでそうとうややこしい事になる。

 そしてその間に、唆された人が簒奪に動く。

 筆頭家臣代理が無双だね。

 お城内部で邪魔な人達を排除、ニィ・イズラ内分離勢力も引き入れる。

 ヤカナーンが混乱している間に、ラウロが遺跡に侵入。

 自爆行為で、墓の罠が発動。

 シシルンの墓の位置が大凡特定されるのと、流浪民が追い出せる。

 死傷者が地下で出て騒ぎを拡大。

 呪い虫やその他、兵力内に忍ばせていた異形により、領兵を無力化。

 その破壊や混乱に乗じて、ヤカナーンを制圧できれば上々。

 オルロバ様達を拘束し、主権の移譲を求める。

 改めて、ルフト医師偽が登場し、ヤカナーンは彼が支配する。注意点は、中央の軍事介入を避ける事かな」

「サリーヤ、貴女、こういう策略を考えたりするの好きでしょ?」


 言われて、まわりを見回す。


 オルロバ様とニラガ様は、何か納得顔。

 アマドお爺ちゃんは一生懸命、書付をかいている。

 そしてアデイムさんは困り顔?

 うわっ喋り過ぎた。

 腹立たしさと興奮で調子に乗ってたよ。

 傍から見たら、嫌味で小賢しいわ。

 行方不明者もいるし、不穏な話で盛り上がるとか。

 不敬だし、うわっ嫌な奴ぅ。

 ごめんなさいの意を表すべく、遅すぎる謝罪の格好を決める。

 腕を重ねて少し頭を下げて、ごめんねごめんね。


「あらあら、私が聞いただけでしょう。謝らなくていいのよ。だだ、たぶんこのあと厄介な事になっちゃうかも」

 お説教ですね、わかってます。

 そっと後ろに下がって灰色の影に座る。茶色が後ろから寄りかかって蓋になる。ごめんなさい。

「ニィ・イズラ内部と遺跡の警備の確認か」

「お兄様、ホルホソロルからの人員も精査いたしませんと」

「盗掘問題として最初は片付けるしかあるまいな」

「爺や」

「記録はしております」

 アデイムさんは、困り顔のままだ。

 そりゃそうか、部族をボロクソに言われた上に、信用ならんという話。そして息子は行方不明だ。

 そうだ、クゥに護符を渡したいんだけど。どう言えば良いのだ?

 それに先ずは、渡すクゥがわかっているかどうかだ。

 いきなり、これを渡されても、知らないクゥだったら危険だしなぁ。

「サリーヤお嬢さん」

 アデイムさんが呼んだ。

 まだ、困り顔だ。

「すまなかった」

 何に対しての謝罪かわからなかった。

 首をかしげる私に、アデイムさんは晩餐が終わるまで困り顔のままだった。


 次の日、アデイムさんからニィ·イズラへの招待があった。

 招待と言う名の、連行ですね。

「二匹も一緒に色々見せてくれるって、部族会議で」

「まぁそうなりますわよね、ほほほ」

 初めての船旅は、強制連行のようだ。

 クゥに会える機会ができるからいいのかな。

「サリーヤのおかげで、ア・メルンは落ち着きましたからね。こんどはニィ・イズラに安らぎをもたらしましょう」

「灰色と茶色がね、姫様」

「大丈夫よ、サリーヤ。良い星回りはそのままでしてよ。ただ、ちょっとサリーヤが困るお話がありそうですけど」

「どんな?」

「まぁある意味、楽しいかも知れませんわよ。楽しみですわね、おほほほ」

「不安」

 ドヤった顔で、クゥから仕入れた知識で喋り倒したら、天罰覿面だった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] サリーヤが賢く年相応にかわいくて、灰色と茶色がとんでもなく愛らしいです [一言] CANDYさんの、動物描写が可愛いなあと以前から思ってましたが、砂漠の梟の犬しぐさ(?)の描写がすっごくと…
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