記録.85『泣き喚く少女』
「…フン」
剣を振り、付着した血を飛ばすエビふりゃー。
奴は格好つける様に鞘に剣を仕舞い、空を見上げた。空は酷く蒼く、どこまでも続いていると思わせるような美しさがあった。
「――綺麗だ」
エビふりゃーが真っ青なくらいの空を見上げたまんま、そう言った。
その足元には、滅多切りにされたラック君と狐面が倒れ伏しているのだった……。
怪物達の宴……全カット…!!!
◇■◇
なぁ、エビふりゃーよぉ。
ラック君がグズグズの肉塊から再生する様を見ながら、俺はおにぎりを頬張った。
隣ではエビふりゃーが幕の内弁当みたいなものを食べている。
「なんだ」
口に食べ物を含んだまま、奴は俺の方を向いてそう言った。
米粒やら鮭やらが俺の顔面に飛来する。俺はそれを甘んじて受け入れながら、奴に問うた。
くっちゃくっちゃとわざと音を立てる奴を前にして、俺は怒りを覚えることはなかった。いつもならば、怒鳴り散らして奴に飛びかかったことだろう。
しかし、今は目の前でラック君が再生しているという神懸かり的な光景がある。俺はこの光景だけで飯を五杯は食えると断言しよう。
「遺跡を神聖視する連中、知ってっか」
俺の言葉に、エビふりゃーは箸を止めた。
急に奴は箸を止めたせいで、掴んでいた海老フライをそのまま地面へと落とした。
「あ、あぁ……」
エビふりゃーは一瞬だけ絶望した様な表情を浮かべ、すぐに顔をキリリと戻すと落ちた海老フライを即座に箸で掴み、そのまま口に運んだ。そして、何事もない様に再び俺の方を向くと、ジャリガリと口から音を漏らしながら、
「知っている。ギルメンを殺した連中だ。調べてある」
そうか。
んじゃいい。奴らどうやら小物臭いから、出来ればそっちで処理しといてくれ。俺のとこにも来たんだが、面倒臭い事この上ない。
俺達の眼前で、ラック君の身体が先程までの倍以上に膨れ上がり、それは遂に人の姿を形取った。
「いや、廃人の皆もあちら側いた。彼らは僕の方で片をつけるよ。幸い、最近は少しだけ余裕があってドラ子さんもムイさんの手も有り余っている筈だ」
あ、まじぃ?じゃあ任せるよ。よろしくね、ラック君。
「頼んだぞ、ラック君」
俺とエビふりゃーはそう言って、ラック君に自分たちのご飯を渡した。
俺は梅干しの種を、奴はエビの尻尾を渡した。
ラック君はそれを受け取ると、嬉しそうに貪るのだった…。
◇■◇
「はーなーせー!!」
子供の様に俺は奴の腕の中で暴れた。
しかし、所詮俺は低レベルの雑魚…。力比べで勝てるほどこのゲームは甘く出来ちゃいない。
クソがッ!どうしてこんなことしやがる!
俺は今からルーキー共のスカートの中を――!!
「どうせ暇だろ?」
太陽に照らされて、奴の銀の長髪が風に揺れる。
爛々と輝く赤い瞳に、口元には楽しそうに歪んだ笑みが浮かんでいた。
だーからてめぇは嫌なんだ!
お前がいる時は決まって面倒臭い事になる!お前がいるってことはあれだ!どうせムイもいる!あいつ最近怖いんだよ!なんか異様な雰囲気纏ってんだよぉ!
暴れる俺を、奴は軽々と抑えながら目的の場所へと歩いていく。
行きたくなぁあああい!行きたくないよぉおおおお!!!
「大丈夫だって」
そう言って、奴―――ドラ子は俺の方を向いてニッコリと獰猛な笑みを浮かべるのだった……。
◇■◇
ぐぇっ。
目的の場所に到着したのかドラ子は俺を地面へと放り投げた。
ゴロゴロと砂埃を立てながら、俺は地面を転がる。
こ、このまま逃げる…!
いくぞ…!俺はスーパーアルマジロを習得した男だ!
心の中で叫び、俺は転がるスピードを上げた。ギュンっと速くなった俺は、そのまま地平線の彼方へと―――、
「わっ」
瞬間、上から高いソプラノが聞こえた。そして、それと同時に俺の転がりは何者かの封鎖によって止められた。
俺が咄嗟に上を向くと、そこにはたわわな峰々があり、俺を止めた元凶のプレイヤーの顔は見れなかった。
どらぁ!誰じゃ俺の快進撃止めたのはぁ!!!
この場から逃げる事が叶わなかった俺は、その原因を作った元凶に文句を言いながら、立ち上がる。
どこの誰だ。
俺の逃走劇を食い止めてくれちゃったフィジカルお化けはよぉ。
そう言って、ガンをつけようとそいつに目を向けた。そこには……。
「う、うわぁ……」
「…こっちの台詞です。何をしているんですか?ルート」
桃色の髪に巫女装衣…。
俺を睨みつける剣呑な目付きに、もにょもにょと動く小さな口…。
め、”女神”、ムイぃぃ………。
俺は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて、目の前のシステム外パワー盛り盛りの低身長巫女を見た。
な、なんだってお前こんなところに…。
「なんでって、それはこっちが聞きたいところです。」
あ?俺はあれだよ。
ドラ子に連れて来られたんだ。
俺はそう言って、後ろを親指で指さした。そこには、こちらに向かって、必死に走ってくるドラ子の姿があった。
「は、掃き溜め、お前…」
ぁあ?なんだ?俺はただ地面を転がりたい気分だっただけだぞ。逃げようとした訳じゃねぇよ。現に今、俺はしっかり二本足でこの場に立って、お前を待ってやっていただろ?
俺の言葉に、ドラ子は押し黙る。例え、中身は違くても外から見ればそう見える。それだけで十分なのだ。ドラ子はお頭が弱いから、すぐに言いくるめられる。
「た、確かに…?」
案の定、ドラ子は簡単に言いくるめられた。
しかし問題は…、
「―――」
ムイがどれだけ口を挟んでくるのかなのだが…。
俺の警戒とは裏腹に、奴は口を噤んだまま微動だにしない。…なんだ?何故ドラ子をフォローしない?いつもならば、もう…。いや、いつもならばドラ子が言い包められる前に口を挟んでくる。こいつ、いったい何を考えて…?
俺は、あまりにも静かすぎる桃色の少女を睨みつけた。
「?…?」
そんな俺とムイを交互に見て、ドラ子が疑問符を頭に浮かべた。
数秒、静寂の時間が流れ、「あれ?これもしかして逃げられるんじゃね?」と考えて、ドラ子を再び言い包めて逃亡を図ろうとした時、遂にムイが動いた。
「丁度良いです。ルートも行きましょう」
―――…ぁ?
ムイは両手をパチンと鳴らして、そう言った。
その言葉を聞いたドラ子は、瞳を輝かせてムイに飛びつく。な、なんだこいつら…。一体全体何の話をしてやがる…?
俺は喜ぶドラ子と、それを微笑みながら見つめるムイを尻目に見ながら、じりじりと後退る。
か、関わってられねぇ…!
何でもかんでも分かりづらく言えば良いってもんじゃねぇぞ。ここって時に濁すのが大多数の心を掴むんだ。廃人共はいつもそうだ。ずーっと濁し続けやがる。そりゃ嫌にもなる。
未だじゃれるドラ子を、ムイが優しく宥めている。
俺はそれを見た瞬間、ぐるんと体を百八十度回転させて、思い切り地を蹴った。《疾風》を発動させ、速度を上げた俺の体躯は風を切り、その場からの離脱を―――、
「――ルート、貴方の感情は本当にころころと色を変えますね」
そんな声が、頭上から聞こえて―――。
「ぶぼッ」
俺の頭が硬い何かに踏み付けられて、俺の身体は前のめりに地面へと倒れ込んだ。顔面がざりざりと地面を抉り、俺は人間スケボーとなった。ならば、俺の上に乗って頭を踏み付けているムイはコナン君だろう。
「ぶぼぼ、ぶぼぶぶぶ!」
「え、ぁ、ちょっ」
人間スケボーと化した俺は、地面を抉るスーパーカーの如く、ムイを乗せたまま近場の海原へと突っ込んだ。
ばしゃーん!と勢い良く水飛沫が上がり、口の中に海水が濁流のように流れ込む。
海の中で、射殺す勢いで俺を睨み付けるムイが視界に映る。
俺はそんな奴を嘲笑の目で見ながら、海上へと向かう。しかし、それとは正反対にムイは謎の部族ダンスをしながら、深海深くへと沈み込んでいくのだった……。
「………」
俺が海から上がると、砂浜にいたドラ子がこちらに近づいて来て、
「掃き溜め!ムイは!?」
「あぁ、アイツは乙姫様だから海深くに帰ってったよ」
俺は無表情で、淡々と、純粋無垢なドラ子へとそう言うのだった。
果たしてそれは、優しい嘘か、事実を覆い隠す悪か。
◇■◇
「ばかっ!ばかっ!しねっ!」
結局俺は再びドラ子に捕まって、一緒に行動している。
傍では、やべー奴ことムイさんが罵倒しながらドスドスと俺の脇腹にチョップを入れている。
なぁ、ムイさんよぉ。お前はどうしてそんなポンコツになっちまったんだ?そうは思わねぇか、ドラ子。
「んー?」
お頭が弱いドラ子は適当な返事をする。
なぁ、ムイさんよぉ。
俺はチョップする奴の手をガシッと掴んだ。
β時代のお前は、本当に女神みてーな奴だと俺は思ったぜ?あぁ、思ったとも。そこに疑う余地はねぇ。お前は、数多の廃人共に手を差し伸べ、かつその廃人共を”勘違い”させなかった。その手腕に俺は感動したさ。
だがな、最近のお前はあまりにも”女神”染みていない。
俺の前で口を開けば罵りの言葉だ。β時代は、ちょこちょこ俺の後ろをついてくる可愛らしい温和な巫女さんだったぜ?
それがどうして、今のお前に俺は”女神”の欠片も感じない。
お前は誰だ?お前は本当にあの”女神”ムイか?人は確かに変わる。それが俺達ゲーマーだ。誰だって同じテンションでゲームをずっとしていられる程図太くねぇ。時にははっちゃけるし、深夜テンションにもなる。それでもな、ムイ…てめぇの変わり様に俺は否を突き付けるぜ。あの頃のお前が好きだって訳じゃねぇ。今のお前が嫌いだって訳でもない。お前を信用する為に、俺はお前に言ってんだ。
嘲るような視線をムイへと向けて、俺は握られた奴の手からぬるっとした手汗が分泌されるのを感じた。
「―――」
俺の言葉に、ムイが押し黙る。
「おい、掃き溜め…」
流石に、とドラ子が俺の肩に手を置く。
しかし、俺はそれを意に介さず、言葉を続けようとして――、
「う、ぐ、ふぅ」
目の前の少女の瞳に、大粒の涙が溜まっている事に気が付いた。
え、ぁ?お、おい。
しどろもどろになって、そう声を掛けた時には、もう何もかもが遅く――。
「う゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛ん」
桃色の髪を揺らして、少女は大口を開けながら空を見上げて泣き出した。
「あーぁ…」
ドラ子がやらかした奴を見る目でこちらを見やる。
しかし、俺は理解できていなかった。ど、どどど、どういう事だ?な、何で泣く?どうして泣くんだ?は?え?
俺は瞬時に、ムイの頭を撫でるという行動に出ながら、ドラ子の方を向いた。よ、よーしよし…
せ、説明しろ!
こいつは、こいつは本当に今までと同じ”女神”ムイか!?
子供のように泣き喚く少女の姿は、あまりにも”女神”なんて呼べる代物じゃなかった。それは、本当にただの子供であって…。
「そうだよ」
あの温和な!?
「うん」
あの優しい!?
「うん」
感情の色を勝手に見る覗き魔の!?
「そうだっていってんだろ」
俺は更に混乱する。
こ、この女、本当に訳が分からない…!
俺は泣き喚く少女の髪を撫でつけながら、奴のつむじを見た。βでも同じようなつむじを見た。つむじは人を映す。こいつのつむじは、間違いなくこいつのもんだ。
「…元々、ムイはこんなだよ」
「……ぁ?」
ムイの泣き喚く声が響く。
その中で、ドラ子はそんな事を言った。
「βの頃、意地張ってただけだ。そのせいで”女神”なんてレッテルを張られた。私もそれに気づけず依存しちまったしな」
………。
「女神女神と囃し立てられて、その仮面を被るしかなかったんだ」
ドラ子は言う。
俺はその言葉を、ゆっくりと一つずつ確かに嚙み砕いていた。
βテストが終わり、確かにムイは今まで見せなかった本性を見せるようになった。
百合を眺めていたいという想い、システム外パワーと化してしまうくらいに溢れ出す感情、温和だったころの面影が見えない生意気加減。
その全てが全て、それが奴の”本当”だった?
俺の言葉に、ドラ子はゆっくりを頷いた。
俺はふるふると震えて、唇を開いて―――、
「あっっっっそ!!!!」
全身全霊でそう言葉にした。
泣き喚くムイを小脇に抱えて、俺はドラ子に言う。
おら、さっさと俺をお前らが目指す場所に連れてけや。なんだってこんな意味ない事で時間を食わなきゃならなかったんだ。時間無駄にしたじゃねぇか。
ぷんすかと怒る俺を見て、ドラ子は一瞬だけポカンとすると、直ぐに立ち直って言った。
「…お前らしいよ、掃き溜め」
たりめーだろーが!!!
なんで俺が、廃人に気を遣わなきゃならねぇ。それがルーキーならばともかく、このムイとかいう女はどうしようもない廃人様だぜ?
俺は片耳を塞ぐ仕草をする。
今でこそ、こーんな騒音発生器みてーになってるが、こいつは自分で立ち上がって自分で歩ける。そういう奴だ。基本廃人共は甘えるんだよ。自分で立ち上がれる癖に、立ち上がれない振りをして手を伸ばしやがる。だから俺の人間関係が拗れるんだ。
ララも、狐面も、プロペラも、ラミミも、ボロも………。
――――……?
ざわざわ、と何か嫌な感じがする。
―――ラミミ?ボロ?
物の名前?いや、固有名詞…人の名前なのか?言葉だけが独り歩きして覚えている。思い出がついてこない。い、一体どういう…
「掃き溜め、もう着くぞ」
ふと、ドラ子の声が透き通る様に俺の頭に響いた。
あ、あぁ。
まぁ、良いか。どうせ大したことじゃない。そんな事を思い出そうとするよりかは、今はこいつを何とかしなきゃだしな…。
小脇に抱えられたしくしくと涙を垂らすムイを見て、俺はそう思った。
泣き声も収まったし、もう平気だろうと俺はムイを地面に置いた。
すると、奴は泣き腫らした瞳で俺の顔を見た。鼻を啜って、瞳を潤ませる奴は、あまりにも年相応に見える。
はぁ~…、俺は深い溜息を吐いて、ポケットから飴玉を取り出した。
「ほら、好きなのとれよ」
手の平には四つの紙に包まれた丸い飴玉が転がっている。
おずおずとムイは全ての飴玉を掴み取り、紙を取って口に放り込んだ。そして、きらりと瞳を輝かせて、前を向いて言うのだ。
「さっさと行きますよ、ルート。皆が待ってます」
その表情に、先程までの泣き喚いていたムイの姿はどこにもなかった。
こ、こいつ……リジェネメンタルの化身か……?
俺はすっすすっすとドラ子の下へと進んでいくムイの背中を見ながら、そう思った。
◇■◇
ドラ子とムイに追いつくと、そこには見知った顔がいた。
「あれ?ルート?どうしてここにいるんだい?」
それは、数刻前に別れたばかりのラック君その人だった。
「遺跡を神聖視する人たちはこっちで対処するって言ったじゃないか」
ラック君が困った様に、俺に言った。
俺はそれを聞いて、申し訳なさそうな感じを出しながらムイとドラ子の方をちらと向いた。
あー……、ラック君、そのなんだ。あいつらがな…俺をここに連れて来たんだよ。
俺だって別に行くつもりはなかったよ。でもな、何の話もなしで俺はここに連れてこられちまったんだ。悪いな。
俺の言葉を聞き、ラック君はドラ子とムイがいる方へと向かっていく。
俺は特に何をする訳でもなく、他の”β組の良心”達が集まっている輪へと近づいた。
「よぉ~」
俺が手を挙げて近づくと、”良心”達はこぞって珍しいものを見たような表情を浮かべた。
「ルートじゃないか。久しぶり」
「元気してたんだね」
「色々大変らしいけど、頑張ってな」
「バイト代出してあげるから、今度ルーキー育成手伝ってくれない?」
「最近まで忙しくてフレ交換出来てなかったよな?今しようよ」
しかし、それでもやはり”良心”……!
言葉遣いは優しいし、話し方の端々からはどことなく気遣いを感じる。
俺はフレンド交換をしながら、久しぶりに会った”良心”の皆様と語り合う。
「幼女ちゃんは元気かい?βの頃は危なっかしいところがあったけど」
あぁ、大丈夫。
あの子は元気だよ。今度、遊びに行ってやってくれや。〔コウザン〕の火事場で今も元気にトンカンやってるさ。
「きつねちゃんは平気?友達出来てた?」
あー、いや、アイツは相も変わらずだ。
好意に弱すぎるな。βの頃もあったろ、惨殺しちまう事件。あの頃からなーんにも変わっちゃいない。微妙に内弁慶で、好意にめっぽう弱いフール女だよ。
「空は今も上を目指してるのかい?」
プロペラか?
アイツも何にも変わっちゃいないよ。でもあいつはβの頃と違って、結構な時間空を飛べるようになってるぜ。滑空して喜んでいた頃とはずいぶん違う。
「おいおい、俺も混ぜてくれよ」
俺と”良心”達が昔を思い出して、語り合っていると、そこに不純物のような声色をした何かが混ざり込んでくる。
俺はピキピキと青筋を立てながら、その声がした方に顔を向けた。そこには……、
「なーんでてめぇがいるんだ?決戦兵器…!」
古代物質に身を包む古代兵装の男、決戦兵器がこちらを見てランプをちかちかと点灯させていた。
俺は、奴に詰め寄り、硬い古代物質におでこをぶつけて、ガンをくれる。
「依頼されただけだって、そうカリカリすんなよ」
決戦兵器は、俺の顔を無理矢理に引き剝がしながらそう言った。
依頼、依頼、ねぇ。
どうせ、エビふりゃーに情報を抜き出せとか言われたんだろーが。見え見えなんだよ、【終着駅】様の手法はよ。
毒づきながら、決戦兵器から離れる。
……加速因子が二人、か…。
俺の独り言に決戦兵器がピクリと反応する。そして、奴は俺の首元をガッと掴み、そのまま”良心”から離れる様に距離を取ると、しゃがみ込んで小声で俺の耳元に囁いた。
「や、やっぱり…?やっぱりお前もそう思う?」
まぁ、流石に感じざるを得ないだろ。
現に俺は幾つかの事象を加速させちまった自覚がある。お前だってそうだ。まず、お前の存在で古代アイテムの存在が明らかになったし、その究明も進んでいる。それはお前が為した加速結果だ。
「だ、だよなぁ。加速因子二人…明らかに何らかの意思を感じるぞ…」
うだうだ言ってもしょうがねぇ。
ゲームが加速するんなら勝手に加速させればいい。
…これ以上、こそこそしても怪しまれるだけだ。さっさと解散するぞ。
「あぁ、そうだな…。何も起こりませんように…」
…廃人がいのない奴め。
何も起こりませんように?んなわけがあるか。
相手は遺跡を神聖視する連中だぞ。
それに付け加えて、”不死身の聖人”ラック君、”鉄槌”ドラ子、”めが…ムイを加えた”β組の良心”オールスターズ。
今は無き遺跡の産物、古代兵装纏いし決戦兵器。
そこに加速因子持ちのルート君だ。
絶対に想定外の出来事が起こる。
ムイとドラ子を連れて、ラック君がこちらに走り寄ってくる。俺はその姿を見て、一抹の不安を蹴飛ばす様に”良心”達の方へと寄っていくのだった。
あ!野生のヤバい事象が飛び出してきた!
どうする?
▶戦う
▷戦う
加速因子の話
記録.46『加速するゴミ』https://ncode.syosetu.com/n9225gp/47/




