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ゴミ溜めVRMMO記録  作者: どうしようもない
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記録.82『話題のVRMMOで遊ぼう!Part1(終)』

 

『Soul・Learning・Online』と呼ばれるスキル構築型のVRMMOがある。

 市場には数少ないながらも、幾つかのVRMMOゲームが存在するが、『Soul・Learning・Online』は頭一つ抜きんでて、人気を誇っている。

 ――しかし、人気度とプレイヤーからの評価が必ずしも一致するとは限らない。


『Soul・Learning・Online』は、プレイ人口こそ多いもののその中身は生ゴミを煮え繰り返したような地獄…。

 α、βテストプレイヤーや、その他廃人達が我が物顔で闊歩する魑魅魍魎が巣食う場所だった。



「はーい、こんちはー。」


 だからこそ、このゲームを配信する配信者は少ない。

 大抵の輩が裸足で逃げだすくらいの深淵がこのゲームには広がっているからだ。


 しかし、逆に言えばそれは好機…。

 このゲームの配信者はこのオレ……『ハイシン』君ただ一人と言う訳だ。このゲームの覇権をオレが握ってやる…。


 ハイシン君、もといオレは放送を見ているリスナーに向かって、挨拶をしながらそう考えた。

 やはりと言うべきか、『Soul・Learning・Online』の配信は少ないようで、いつもの十数倍以上の数の人がオレの放送を見ていた。


「初めての人はこんちはー!ハイシンって言いまーす。今回は新シリーズ!『Soul・Learning・Online』の世界を遊んでいきたいと思いまーす!」


 オレが元気よくそう言うと、コメ欄が一気に加速する。

 なるほど…皆やっぱりこのゲームの配信見たかったんだろうな。オレもニーズに応えられて、リスナーの皆も見たいものが見れて、WIN-WINってわけだ。


「はーい、取り敢えず最初に選んだスキルは《召喚》《銃》《Skillドロップ!》でーす。召喚した奴に前線任せて後ろからチクチクしたらいいかなーって思って」


 オレはスポーンした草原を適当にてくてく歩きながら、説明をする。

 にしてもここ本当にゲーム内か…?風は髪を揺らすし、草木は揺蕩い音も立てる…。現実とほぼ大差ないだろ…これ。


 オレはほとんどの事前情報をシャットアウトして、このゲームを始めた為、知識が無い。だから、コメ欄に助力を求めることにした。


「このゲーム、最初に何すればいいの?知ってる人いる?」


 ゲームオプションで設置した視界の右上のコメ欄が加速する。

 オレは適当なコメントを一つ拾って、読み上げた。


「このゲームの人優しいから……そこら辺の人に聞いてみれば…か」


 オレはそのコメントを読み上げて、首を傾げる。

 あれ…?このゲーム、プレイヤーが酷いって聞いたんだけど…オレの勘違いだったのか…?

 まぁ、こう言ってくれているわけだし、適当なプレイヤーに話しかけるか。


「んじゃ、そこら辺にいる方に話しかけてみましょー!ですが、今は確か皆さんイベント中なので、あんまし人いませんねー」


 そう、オレがこのゲームを始めた時期…それはほとんどのプレイヤーが迷路イベントで本来いるマップから消えている時間だ。この時間ならば、自分の思い通りに冒険ができ、リスナーも獲得しやすいと踏んだ。

 しかし、その配慮が裏目に出たな。プレイヤー…プレイヤー…。


 オレは、きょろきょろと辺りを見回し、プレイヤーを探す。

 すると、イベントに参加しなかったのかそれとも参加したがすぐにリタイアしたのか、二人組のプレイヤーを発見。

 オレは丁度良いとその二人に走り寄っていった。


「なんでついてくんの?」

「べ、別に良いじゃないですか。他に誰もいないし、暇なんです」

「飴ちゃんあげるから消えろや」

「…嫌です」


 走り寄っていくと、そんな会話が聞こえてくる。

 そしてその声が聞こえ出した瞬間、コメ欄が先程の比ではないレベルで加速していく。


 ―――――

 *** あ

 *** やば

 *** あ

 *** 逃げろ!

 *** ご冥福案件

 *** 悪運つっよ

 ―――――


 読み取れたのはそこまでで、そこから先はコメ欄が加速しすぎて碌に読めなくなってしまった。

 す、すごい…!これが『Soul・Learning・Online』の力…。

 オレは嬉しくなる。そして、視界の前方にいる二人組に声をかけた。


「すいませーん!ちょっとお聞きした「()ねや」―――ぇ」


 オレの耳元に何か言葉が聞こえて、次の瞬間にはオレの視界は空を舞い、地面に落ちていた。


 ……は?

 突然のことに頭が真っ白になる。

 声が出ない。な、何故だ…?オレの手は…足は……?

 混乱の中で、どうにか立ち上がろうとしてオレは気付いた。


 か、身体が……なくなってる…!?

 オレの首から下は消失し、今やオレは頭だけの存在となっていた。音は聞こえるし、目も見える。しかし、声は一切出ない。


 い、一体…何が…。

 死に逝くオレの視界の中に、恐らく先程の二人組の足が入り込む。


「る、ルート!なんで殺したんですか!だから貴方はいつもいつも…」

「へいへい、うるせぇなぁムイさんはよぉ。小言言わなきゃ生きていけないんですかーって」


 ―――――

 *** やっぱルートじゃん…

 *** 誰だよプレイヤーに聞けって言った奴

 *** ムイって…あのムイ?

 *** ムイって女神サマかよ

 *** なんでこいつら一緒にいんだ?

 ―――――


 ルートと呼ばれる少年が、オレの頭の前にしゃがみ込む。

 そして、そこら辺の雑草を引っこ抜き、オレの口に詰め込みながら言うのだった。


「お前さぁ、新参か?だったら良かったな。最初が優しい俺で」


 ぶちぶちと草を抜き、オレの構内に詰め込む彼を、傍にいたピンク色の髪の少女がやめさせようとする。


「せ、せめて詰め込むなら薬草にしてあげなさい…っ、ルート…!」

「ちょ、ムイさん。普通に教えてあげてるだけだから…ちょ、じゃ、邪魔…邪魔ヤメテ!!」


 目の前でピンク髪の少女と白髪の少年が言い争いを始める。

 オレはその口論を聞きながら、重くなっていく瞼をゆっくりと閉じた。命の水泡が瞼の裏で下から上に上がっていく。


 口が乾き、鼓膜も機能を果たさなくなっていき、そうして―――。




 再び目を開けると、オレは最初にスポーンした場所に立っていた。

 どうやら、教会というリスポーン場所に到達しなければそこで復活できずに、ここからのスタートとなってしまうらしい。


「け、結構死がリアルっすね……」


 先程の死の臨場感を思い出し、身震いした。

 コメントが次々に流れていく。とりあえず、オレは再び歩き出した。しかし、歩き出して直ぐ……、


「よぉ」


 聞き覚えのある声が耳朶に響く。

 オレはその声がする方を向くと、そこにはやはりと言うべきか先程の二人組が立っていた。確か…ルートとムイ…とか言ったか。


「あ、えーと、こんにちは」


 オレはとりあえず挨拶をした。

 しかし、脳裏に付き纏うのは先程オレが殺された情景…。このルートと言う少年…、危ない奴なのでは?とオレの中で警報が鳴り響く。


「先程はルートがすみません。しっかり言い聞かせますので…」


 隣のムイと名乗った少女がそう言って、ルートの頭を掴み、無理矢理に下げさせた。


「や、やめっ…」


 しかし、ルートはムイの手を掴み、必死に頭を下げるのに抵抗する。


「く、クソがッ!!お、俺にルーキーに頭を下げろと!?俺は奴に厳しさを教えてあげただけだろーが!他の廃人共ならこれほど慈悲深いこたねぇぞ!!」


「殺している時点で同罪なんです!ルート、貴方って人は…!」


 ムイがそう言うと、オレの目の前で二人はにらみ合うと、取っ組みだしてそのまま喧嘩を始めた。


 な、なんだこいつら……。

 オレは助けを求める様にコメントを見る。


 ―――――

 *** はよ逃げろ

 *** 草

 *** ごみ溜めはやっぱちげぇや

 *** マジモンのガイジとは聞いていたが、ガチガチじゃねぇか

 *** 職業就こう

 ―――――


 …に、逃げろ?

 逃げていいのか?

 オレは、目の前で取っ組み合う二人を見て、少しずつ後退し始めた。


 ま、まぁ、逃げていいだろ…。

 この人達、関わるだけヤバそうだし…さっさと教会とやらに行ってリスポーンも固定しなきゃらしいし…。

 オレはじりじり、じりじり…と後ろに下がると、一目散に走り出した。


「はぁ、はぁ…!み、皆…街の方向…教えて…」


 ―――――

 *** あっち

 *** こっち

 *** 今の視点から丁度右45度くらい

 *** そっち

 *** 息くっさ

 ―――――


 俺は走行角度を右45度に補正する。

 魔物が至る場所からオレの後ろに引っ付いてくる。それは、次第にモンスタートレインとなり、途中にいた何人かのプレイヤーをそのまま轢き殺していった。


「ひ、…ひぇ…ぇぇ…」


 息が荒くなっていく口から、言葉が零れる。

 最早、コメントを見ている暇すらない。足を止めれば殺され、止めずとも大量殺人犯となる。こ、これが……戦犯…!!


 俺は心の中でそう呟いた。

 そして、見ている暇のないコメントの荒れ具合を想像し、顔を真っ青にする。


「えぇ…お前何やってんの…?」


 そんな中で、走るオレの横に並走する様に突然ルートが現れる。


「る、るー…な、なんで…!?む、ムイさん…は?」


「あ?あいつ?知るかよ。俺はスキルあっからお前に追いつけただけ。ムイはどっかで元気やってるよ」


 ルートはそう言って、指先から赤い液体の様なものを噴出して見せた。

 しかし、オレには最早それに反応してあげられる程の余裕はなかった。背後から聞こえる轟音が、自分のしでかしたことの大きさを伝える。

 それを感じ取り、泣きそうになる。


「……なるほど。なぁ、ルーキー。契約をしないか?」


「けっ…けいっ、やくっ……?」


「あぁ、そうだ。破りに破れぬ希望の契約だ」


 ルートの口角は吊り上がり、それは最早人間とは思えないくらいに邪悪な笑みを浮かべていた。


「このモンスタートレイン。俺が処理してやる。だから、お前はこれから俺に血液を用意するんだ。勿論、新鮮なお前の血でいい。俺はそれで満足さ。どうだ?お前のオワタ的な状況を、これから先血液を提供するだけで、俺が解決してやるんだ」


 それは、断る事の出来ない契約。

 オレは一もにもなく、その誘いに乗るしかできなかった。


「わ、分かりました…!だ、だから!だから頼みます…!」


 俺がそう言った瞬間、ルートの笑みはより一層深くなり―――、


「よく言った。契約は結ばれた。千切れぬ、血の契約だ―――。よろしくな、血液倉庫(ブラッド・バンク)君」


 ◇■◇


 大量の魔物は、途中で合流したムイによってほとんど片付けられた。

 ルートはそれを見て、酷く満足そうに頷いていた。

 コメント欄はほとんどお葬式状態で、「ご冥福を…」というコメントで埋まり尽くしていた。


「る、ルートさん、ムイさん…本当に助かりました…」


「あぁ、良いってことよ」


「初心者にはよくある事ですからね」


 ルートとムイは優しい口調でそう言った。

 オレはちらとルートという少年を見る。この人は恐らく危ない人だ。状況的に契約を結んでしまったが、結局あの魔物を処理したのはほとんどムイだ。


 まるで、ムイが来るのを知っていたかのようにオレと契約を結び、自分の美味しいところだけを全て搔っ攫っていった。

 ムイが、ルートに何かを話しかけている中でオレは盗み見る様にルートとコメントを見た。


 ―――――

 *** ごみ溜め野郎が

 *** ハイシンさん逃げた方が良いですよ。その人そのゲームで一番ヤバい人ですから

 *** だからダストなんだよ

 *** お前のオンライン料金月額1780円はこれから闇に吸われるんだよ…

 *** もう逃げられねぇだろ

 ―――――


「ごみ溜め……?ダスト…?」


 ふと洩れた言葉の端々。

 その瞬間―――、ムイと話していたルートの纏う雰囲気の形質がぶわりと変化したのに気付いた。それは、多分だが良くない方向での変化であって……


 空気が変わったのを感じて、オレはゆっくりとルートの顔を見た。そこには……


「―――あぁ、バレてんの」


 無機質な笑顔を浮かべる白髪の少年がいた――。

 次の瞬間、とんでもない力でオレの腹に蹴りが入る。


「おぼッ!!?」


 地面にバウンドして、吹っ飛ぶ俺をムイさんが追いかける。


「あ、ああ…!ルート!いったい何を!」


 ルートは耳を小指でほじり、息でそれを拭いた。

 そして、酷く機嫌が悪そうに苛立ちを隠す事無く、オレたちを睨むのだった。


 オレは咄嗟に《召喚》を発動する。

 《召喚》の事は良く知らない。唯一知っていることと言えば、自分の強さに伴った戦力の何かが召喚されるという事だ。

 オレの目の前に白煙と光を伴い、召喚紋が出現する。そして、そこからボフンッと更に煙を伴って、兎のような魔物が召喚された。


 オレは、がむしゃらに兎に思念で”主を守れ”と命令する。

 それに従い、兎はオレを守る形でルートと俺の間に立った。しかし、兎は所詮兎…。ルートの前方から突如出現した赤い腕が兎に向かって振られ、オレの召喚獣は一瞬にしてミンチになった。


「あ、あぁ…う、うさ太郎…」


 俺の口から言葉が漏れる。



「―――ルートッッッ!!」


 ルートが兎を撃破したと同時に、ムイが再び吠える様にルートの名を呼んだ。

 しかし、ルートはその叫びにすら不真面目に体を揺らした。


「はぁ……、俺はよぉ。そこのルーキー君が俺のこと知らないと思ったから絡んだんだよ。折角…はぁ…、折角俺の天秤で血の契約を交わせると思ったのによぉ」


 そう言いながら、ルートは亜空間から血液の入った袋を取り出してそれにストローを差して、吸い出した。それと同時にルートの周りに一つ、二つ、三つと赤い腕が造られていく。

 その赤い腕の創造は数が七を超えた辺りで止まり、ルートはオレとオレに寄り添うムイを見る。


「なぁ、分かって貰えねぇだろうがよ…天秤っつーのは疲れるんだ。しかも、俺はこのゲーム置いて、恐らく最も自由度の高い天秤保持者だ。だからこそ、血の天秤を利用した契約の制定には大きなデメリットを背負う」


「ルート、何を言って……」


 ムイが汗を垂らし、ルートを見る。

 オレも得も言えぬ雰囲気を纏う彼を呆然と見る事しかできなかった。


 ルートの周囲を防護する様に浮遊する赤い腕が、グーパーグーパ―と手の平を開いては閉じている。


「血液無限補充の契約条件は俺こと、ごみ溜め君をこの先も一切知り得ないことだ………なぁ、ルーキー君。お前、なんで突然俺の事を知り得た?お前は明らかに俺のことを知らなかったはずだ。おかしい。おかしいなぁ。おかしいよなぁ」


 目をこれでもかと開き、こちらを見るルートは酷く恐ろしい。

 ムイがじりじりとルートに近づいていく。

 しかし、それに呼応する様にルートの周りの赤い腕も臨戦態勢を取り、拳を強く握りしめるのだった。


「どうせお前らは今までの事を聞いたってチンプンカンプンなんだろうよ。だから、話した。なにせ俺はゲームを加速させる役割があるからな」


 こ、この人は…此奴は一体何なんだ……?

 オレがそう思うと同時に傍にいたムイが勢いよく地面を蹴る。

 それに従い、ルートも右手にナイフを握り、左手付近に赤い縦の様なものを出現させた。


 ―――――

 *** 天秤って何

 *** 加速させる役割…?

 *** 相変わらずきな臭いゲームだな

 *** 海外動画と雰囲気違いすぎん?

 *** こいつそういや血液操作スキル持ってたな

 ―――――


 ムイが亜空間から取り出した細い杖と、ルートの赤い腕が激突する。

 火花を散らし、システム外パワー蔓延る戦闘が繰り広げられる。

 配信画面には、激しい戦闘を繰り広げる二人の姿が確かに映っていた。


 オレは地面に座り込み、暫くそれを傍観するとカメラを自分の方に向けて、言うのだった……。



「はーい。それじゃ、このシリーズは今回で最期となりまーす。高評価、チャンネル登録よろしくねー。ハイシンのチャンネルからTwitterにも飛べますんで、そちらもフォローして頂けると嬉しいでーす。それじゃ、ばいばーい」





 そりゃ意味不明過ぎて心も折れますよ。

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当作品はゴミ共の命によってモチベーションが賄われています。
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[一言] 飴ちゃんあげるで特定できる主人公......!
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