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ゴミ溜めVRMMO記録  作者: どうしようもない
74/115

記録.74『焼却炉に人を放り込んで暖を取るタイプ』

 

 ――波の(まにま)に漂っている。

 己という足枷が、揺られ、揺蕩い、少しずつ削れていく。

 身体が心が摩耗して、望まれた形になっていく。望まれた…形に――。




「……っ、ここは…?」


 柔らかなベッドから飛び起きる。

 俺は何故ここにいる?

 思い出せ…思い出せ…。一体何があった…?何が起こった…?



 記憶の捜索を始めると、案外直ぐに色々な事を思い出せた。


 俺はフローと吹っ飛ばされた。

 そして、俺は限界を迎えて地面に倒れ伏し……そして、そして…?


「やぁ、元気になったようだね」


「……ッ、…なるほど、”万来の魔女”ってこった」


 俺が寝かされていた家の扉が開かれ、誰かが俺に話しかけた。

 そいつは、あまりにも魔女っぽい格好をしていた。黒いトンガリ帽つけてるし、間違いないだろ。これで違かったら、とんだ策士だ。



 …倒れて直ぐ、誰かの足が目に映った。

 それが恐らく、この女…”万来の魔女”のものなのだろう。

 気付けば焼き切れた筈の左目も治っており、鼓膜も正常に機能している。他を見れば、ありとあらゆる怪我が修復されている。


 ……随分と親切じゃねぇか。ああ?

 万来の魔女なんて大層な呼び方もされてる。その呼び名がこちらに伝わっている以上、俺達以外の奴も助けたのか?まずお前は”万来の魔女”か?


 ……いや、違うな。質問の意図を変えるべきだ。


「――お前は、”βテスター”を知っているか?」


 俺は、扉の前で立ち尽くすそいつにそう質問した。


「べーたてすたー?知らない言葉だね」


 ……OK。

 嘘はついていない。お前は”万来の魔女”で間違いない。疑うような真似をして悪かったな。それに、勝手に質問して、勝手に解決しちまった点も悪かった。

 助けてくれてありがとうございますぅ。助かりましたー。



 βテスター。

 その言葉を知らないプレイヤーはこのゲームにほとんど存在しない。例外として、最近参入したルーキーは”知らない”に区分されるだろうが、一定時間このゲームをプレイすれば、どこかで一回は必ず聞く。そして、進めていけばいくほど、その言葉を聞く機会は増える。


 βテスターとは、言い方を変えたβ組の事だ。

 βテスターの方が正式名称だが、β組共はこぞって自らをそう呼ぶため、そちらが浸透されているだけであり、通常はβテスターと呼称される。


 そして、俺のあの損傷具合をこうも完璧に治している点を踏まえるならば、こいつはかなりの実力者。

 βテスターという単語を知らなければ、NPC。少しでも知っている、又はそれを隠すような挙動をすれば、こいつはプレイヤーという方程式が成り立つ。

 この女は本気でβテスターという単語を知らなかった。それ故にこいつはNPC、そして”万来の魔女”であると確定させることが出来る。


 しかし、一つ気になる点があるとすれば…


「……フロー…、連れの子はどこに行った?」


「あぁ、それなら――」


「あ、ゴミちゃん起きたぁ?」


 万来の魔女が何かを言いかけた時、彼女の後ろからひょこっと中華帽子を被ったキョンシーが顔を見せた。

 俺は、その元気そうな姿に心の中で死んでいなかった事への落胆と、助かっていた事への安堵という二つの溜息を吐いた。


 よぉ、元気そうで何よりじゃねぇか。

 正直、てめぇが死んじまってた方が色々と都合も何も良かったんだがな。


「あはは、こっちの台詞だよぉ」


 互いが互いに毒を吐く。

 相も変わらず可愛くねぇ奴だぜ、キョンシーガールが。


 ◇■◇


「街まで案内してくれるとは、随分と優しいじゃねぇか。万来の魔女さんよぉ」


 俺は隣を歩く魔女に皮肉る様にそう言った。

 しかし、魔女はそれすら気にしない様に笑う。…食えない奴だ…。これがNPCだとは、やはりこのゲームの技術は他と比べて頭一つ、いや二つ三つ躍進しているように見える…。


 にしても、魔物が全然いねぇな…。

 俺は周囲を見渡しながら、呟く。新世界の入り口付近とは大違いだ。あそこは化け物共の巣窟だ。まるであそここそが、新世界の試練とでも言うかのように魔物が集合している。


「魔物がいないのは、私が定期的に倒しているからだよ」


 …へぇ。

 自発的に魔物を討伐したのか。そりゃ随分と殊勝な心掛けで。

 だがよぉ、魔物がいないっつっても一匹もいない訳じゃないだろ?あいつらは無限に湧くし、殺り残しだってある筈だ。

 なのに、良いのか?

 ()()()()()()()()()()()()()…。


 俺は魔女に聞いた。

 しかし、魔女はそれすらも一笑する。


「彼女はもう弱くないよ。目的は達成できずとも、抜け道を提示してあげたからね」


 …目的?抜け道?

 お前、何を言って…?

 魔女に聞き返そうとした時、先行するフローの前に突如として魔物が沸いた。


 俺はそれを横目に見て、小さく笑った。

 アイツ死んだじゃん。なんつー都合の良さ…。いや、しかしこれで新世界の街の所在を知るのは俺一人……!情報の総取りが成り立った…!

 くけけ……!ラッキーだ!邪魔な奴が勝手に自滅しやがった。やっぱ運は俺にツイている!


 口角が吊り上がり、声が漏れる。

 しかし、その笑みはいとも簡単に崩されることになる――。


 魔物と対峙したフローは、突然手の平をパチンと合わせた。その甲高い音が蒼の草原に響き渡る。

 それを見て、俺は自分自身への合掌なのだと解釈した。


 可哀想に……、あんなことをしなくては自分の死を受け入れられないのだろう…。

 俺は心の中で奴を憐れんだ。大丈夫…人はいつだって死を怖がるものだ。お前のその足搔きを俺はしっかり後世に伝えていくからな…!フローは臆病な死を怖がるキョンシーだったよ…ってな…。


 …しかし次の瞬間、フローの放った魔法があまりにも容易く魔物の体躯を貫いた。

 そして、貫かれた魔物は周囲一帯を巻き込む様に爆散し、突風がこちらに襲来する。


「………ぁ?」


 突風に目を細め、視界を手で遮る。

 しかし、それを持ってしても口から零れる不可解なそれを止める事は叶わなかった。


 ……おい、万来の魔女…、てめぇ…フローに何を仕込みやがった…?

 キョンシータグが付く前の奴でさえ、あの火力は出ていなかった…。いや、瞬間火力だけで言えば今までの魔法職を足蹴に出来るレベルだろ…あれは…。


「君たちは、あれを呪いの装備と呼ぶようだけど、それは大間違いさ。あれはアドオン…君で言うところのメリットとデメリットの天秤ってやつさ」


 ……なんで俺の事を…。いや、そんな事言ってても始まらねぇな。

 確かに、同じ呪いの装備仲間の決戦兵器に取り付けられた古代兵装は、通常プレイヤーでは得られないほどの高性能兵器だ。

 つまり、お前は使い方を教えただけ……そういう事か?


「勿論。あの装備は例外中の例外が起こらない限りは取れないからね」


 例外中の例外、ね……。

 此方に嬉しそうに笑みを浮かべて走ってくるフローを見ながら、俺は舌打ちをした。

 嬉しそうにしやがって……、こりゃ契約は破棄の流れだな。あそこまでの火力を手に入れたとなったら、寧ろ手放すのが惜しいだろう。

 はぁ、結局良い方向に転びやがったか…。下せねぇなぁ。


 俺は上っ面に笑みを浮かべる。

 良かったなぁ!使い方を教えてもらったんだって?


「ふふーん、羨ましいぃ?」


 ああ、羨ましい羨ましい。

 お前がキョンシーガールのままでいてくれて俺は心底嬉しいよ。

 まぁ、お前がその力を手に入れたのも何も、全部俺が意識の無いお前を守ってやっていたからに他ならないけどな。


「ありがとねぇ」


 俺が笑顔のままそう吐き捨てると、フローはふにゃりと破顔させて礼を述べた。

 はっ!

 言葉での礼ほど意味のないものは無いけどな。まぁ、それを言ったら俺も万来の魔女に何を言われるか分かったものではないので、黙っておく。


 それにしても、アドオンね…。

 遺物の欠片(オーパーツ)と同じ匂いがプンプンするぜ。

 まぁ、何はともあれ戦闘において俺の出番は来ないみたいで安心したぜ。俺の分まで頑張ってくれや、フローちゃんよぉ。


「……?何言ってるんですかぁ?」


 あ?

 …いや、だからぁ、お前が覚醒したんなら俺が戦う必要ないだろ?元より、俺はどちらかと言えば舌戦よりで、この身一つで戦う戦闘は得意じゃないの。職業補正で元々のステータスに-補正もかかってるんだよ。

 分かったか?分かったならさっさと前行けや。


「言っただろう?メリットとデメリットの天秤さ」


 万来の魔女が口を挟んだ。

 てめぇ、どういうことだ?俺が何かする必要なんてないだろうが。なんだって俺を戦わせ…、


「君がそうであるように、彼女もまた天秤を傾かせているんだよ」


 ……あぁ?

 ……あー、……つまりなんだ。フロー、お前のあの超火力は天秤のメリットで、何らかのデメリットがあるって事…か?


 俺の嫌そうな言葉に、フローは満面の笑みで頷くのだった……。


 ◇■◇


 何らかの超過した力には、超過した分の負債が乗る。

 決戦兵器で言えば、プレイヤーネームの強制変更、職業の固定、スキルの大部分制限などだ。


 俺だって同じだ。

 他のプレイヤーが使えるとは思ってもいなかったが…、俺で言えば《血液操作》の天秤。

 何かを強化し、その分何かを弱くする力だ。

 とんでもない細さの血液糸を作るならば、その分の何かを削る。その何かは、例えば操作権だったり、距離だったり、生命力だったり、様々だ。


 フローのキョンシータグも、その例に漏れる事は無かった。

 聞く限り、奴の通常時は今までよりも更に弱くなった。しかしその分、たった一瞬に賭ける命の重さに比例する様に火力が底上げされた。


 ――それが奴の天秤。

 たった一瞬の命の煌めき。

 いつもはそれを弱くする事により、ここぞという時にその煌めきを強くする術だ。



 しかし、だからこそ、安全策を取るならば誰かが盾になってあげるのが吉。

 つまり……、


「ん、ぶ……ッ!!」


 一点集中の血液盾を持ってしても、新世界の魔物は強力だ。

 蛙型の魔物の舌が血液盾にピンポイントで直撃し、俺は吐瀉しながらそれを防ぐ。ちょ、早く魔法練りあげてくれません!?限界なんですけどぉ!!?


「まだぁ掛かるぅ」


 ああ!?

 おい、クソキョンシー!!それ何度目だ!?ゴミが!それだから俺達はゴミゴミって言われんだろーが!俺みたいな優しい奴が、お前らみたいなゴミのせいでゴミ認定されるんだよ!!数多のゴミが、少数の優しき人々を潰すんだ!!死ね!潰れろ!息絶え、――ろ゛ッ!!!?


 文句を言っていた次の瞬間、再び蛙の舌で俺の身体がふわりと吹っ飛ぶ。


 ちょ、マジで……もう死ぬ…。

 俺が現世から魂を解き放つ準備をし始めた時、遂にフローの魔法が練りあげられ、周囲の環境を破壊しながら蛙目掛けて、射出された。


 …あれ?これ…俺射程範囲に入ってるくね?

 俺はちらりとフローを見ると、奴は俺を見て下卑た笑みを浮かべていた。…あ、あの野郎…!俺を魔法に巻き込んで、街の場所情報を独り占めする気満々じゃねぇか!だからあんなに練ってやがったのか…!


 俺は咄嗟に壊れかけの血液盾で二本の腕を成形し、それの手の平をパーにすると両肩をそれで思い切り押した。後ろに推進力を得た俺の身体はそれに従い、背後へと跳ね飛ぶ。

 その瞬間、俺の眼前で爆発が起こり、その爆風で更に吹っ飛ぶ。


「ぶ、べっ、ん、ぼふッ」


 地面を幾度と無くバウンドして、俺はフロー達がいる場所にボロ雑巾の様な姿で戻ってきた。

 ポーションを振りかけながら、俺は立ち上がり、上からフローの額に額をぶつけ、ガンをつける。


 おう、ナイスマジック!

 後はお前がこの場で俺に土下座して、無様に死に晒したら百点だぜ?


「何の事ですかぁ?」


 はははは、白を切るのがお上手ですね!

 そういうところがゴミなんですよー?そろそろ分かりましょうねー?


「仲がよろしくて結構、結構」


 万来の魔女が俺とフローの会話を聞き、そんな事を言う。

 それを聞いた俺達は、互いに何とも言えない顔をする。恐らく、考えている事は同じだろう…。



 こ、この魔女……ド天然か…?



 ◇■◇


 何もない蒼の草原を歩き続けて、早一時間…。

 俺の精神はそろそろ限界を迎えそうになっていた。なにせ、イベントと言ったら本当に戦闘一択。それ以外の事は何にも起きない。

 しかも、万来の魔女は何故かぐねぐねと蛇行するように歩きやがる。「真っ直ぐ歩かないのか?」と尋ねても、「これでいいんだ」としか言わない。だるいったらありゃしねぇ。

 一応、新世界にもダンジョンが生成されている事は確認されている。しかし、それすらも見当たらない。それどころか、何かを壊したと思わしき瓦礫の山が偶に落ちている。


 俺とフローはそれを見る度に、顔を見合わせてビクつく。

 そう、瓦礫の山を見るとこう思うのだ。



 ……あれ?もしかしてあの瓦礫…、ダンジョンだったものじゃね…?

 万来の魔女はここら一帯の魔物を駆除する。

 ならば、ダンジョンは?魔物と同じ様に自然湧きするダンジョンは魔女の中でどういう判定になる?


 ……結果、俺達は深く考えるのをやめた。

 もしも、ダンジョンすら破壊できる力を万来の魔女が持っているとするならば、それはれっきとした人外の所業だ。

 俺たちは顔を見合わせて、身震いした。



 そうしてようやく、街のようなものが見え始める。


 す、すいません。あれって街ですかね…?

 俺の控えめな問いに魔女はおかしそうに笑いながら答えた。


「ああ、そうだよ」


 よっしゃー!やっと着いたんだー!!

 俺は嬉しさのあまり走り出す。それを魔女は優しい目付きで見つめ、フローはお子ちゃまだ、と一蹴するように嘲笑った。

 そして、俺は心の中で下卑た笑みを浮かべる。

 く、くけけけけ……!馬鹿が!最初に街に着けば命名権は俺のものだ!着いた暁には、街の名前は〔フローママ〕だ!!ビオレママみてーになって苦しめやぁああああ!!!!


「フヒッ…フヒヒッ……」


 俺は込み上げる笑いを堪える事叶わず、口から少しずつ笑みが零れる。

 しかし、俺が街に向かって足を回転させていると、突然俺の足が何かに嵌まり、囚われたように動かなくなる。


 ……あ?

 俺は自分の足元を見ると、そこには地面に埋まった俺の足があった。

 な、なんだ…?ぬ、泥濘(ぬかるみ)…?それにしては足が全く抜けねぇ…!な、なんだ…!?明らかに何かがおかしい…!


 異変に気付くと同時に、今度はどぷんと腰までもが地面に埋まる。


 な、な、なんだこりゃ!!

 腰まで嵌まった俺の身体は、少しずつ地面に喰われる様に沈んでいく。こ、これは……!


「あぁ、底無し沼に嵌まってしまったか」


 追いついてきた万来の魔女がそう言って、俺はようやく自分が何に嵌まっているかに気付いた。

 魔女の後ろでフローが小さく笑っている。

 て、てめぇ…!知っていながら俺を先に行かせやがったな…!


 俺はフローの悪行に怒りを露わにする。しかし、フローは両手で知りませんポーズを作って、俺を見る。


「しっかり見れば気付くよぉ?だから蛇行してたんだよぉ。ごみちゃぁん」


 こんの……ゴミが…!

 しかし、これ以上敵対していては俺の命は風前の灯火のままであることに変わりない。俺は、すぐさま表情を変えて媚び諂う様に話しかけた。


「あー、えっとぉ、魔女様?助けていただくことは可能でしょうか?」


 俺の言葉を聞き、魔女はしばらく唸り、悩む仕草を見せた後にフローにこう言った。


「…これは君達で解決するべきだね。この子を助けるかは君が決めなさい」


 そう言って、万来の魔女は底無し沼に嵌まった俺を置いて先に行ってしまった。

 あ……、待って…!

 い、行かないで…!貴女が、貴女がいないと…!この、この女は…!


 俺は手を伸ばし、訴える。

 しかし、その言葉が届くことはなく、フローの前に霧散する。


 あ、ああ…あああああ………。

 キョンシーガールが俺の手が一歩届かない場所にしゃがみ込む。

 こいつは…こいつは絶対に俺を助けない。助けた助けられた関係なく、容赦なく蹴落とし合うのがβ組だ…。

 しかし、俺は希望を捨てない。可能性がある限り、生き汚くとも一矢報いてやるさ…!


「あ、パンツ見えてますよ」


「―――」


 ………。

 俺の言葉にフローは動揺することなく、しゃがんだ足をぴちっと閉じた。

 流石にこの程度じゃダメか……。



 わ、悪かったって!

 マジで!本当にそう思ってる!

 だから、な?頼む!目の前で死にそうな俺を救ってくれ!頼むって!


 何が悪かったかは分からないが、とりあえずそれっぽく謝る。

 これでなんとなく許す雰囲気になってくれたりは……


「―――」


 しないね。うん。分かってたけどね。


 俺が次の一手を出そうとした時、フローが尻に付いた砂を払って立ち上がる。


「…じゃあね…、ごみちゃん」


 その言葉を聞いて、俺は焦りに焦り散らかす。

 ま、待て待て!待ってくれ!お、置いていくつもりか!?俺を!?

 そりゃ殺人罪だ!人を助けられる位置にあって、それを助けないってのは立派な傍観殺人だぞ!いいのか!?それに俺はお前を守ってやった!その分を返す時が今じゃないのか?キョンシー可愛いよ!?その姿保ったまんまで強さ得られてよかったじゃねぇか!な!?俺もお前のそのキュートな姿をまだ見れるって思うと心が弾むわ!な?マジで、本当に嬉しい!嬉しすぎて泣きそう!てか泣いてるよ!ねぇ、ごみ溜めさん泣いてるよ!お前の可愛さの前に泣いてる!わぁ、凄い!俺感動しちゃった!だから、ね?ね?俺を救って、俺を助けて、俺に手を差し伸べて…。それだけで俺はお前の事もっと大好きになれるから。お前のことについてこの先、絶対に売らないって約束できるから!ほ、ほらお札の件もこうして手伝ってやってるだろ?だから俺を信じろって?な?俺を助けたらなんと、お金あげちゃうから!ね?ね?それともなんだ?フローちゃんは焼却炉に人を入れて、その炎で暖を取るくらいに残虐な人なのかな!?俺はそんな光景目の当りにしたら引いちゃうなー。普通の人の感性持ってる俺は引いちゃうな―。何が欲しい?欲しいものとかあるかなー?今助けてくれたらなんと!なーんでも買ってあげちゃう!物も、人も、それこそエビふりゃーの命だってなんだって!ごみ溜め君に任せて!得意分野だから!あ!飴!飴あげようか!そういえば、飴あげたことなかったよね、あげるあげる~。何味がいい?苺、メロン、林檎、オレンジ、なんでもあるよ!縁日補正で今ならもっと美味しく感じるよ!こんなの今だけだよぉ!だからね、ね?俺を救って☆お願い!フローちゃん!


 言葉を紡ぐ、繋ぐ。

 途切れぬように、行かせぬように。


 そして……、


「ごみちゃん……」


 フローが俺に手を差し出した。

 ふ、フロー……!

 俺は人間の強さを再認識する。人ってのはやっぱり分かり合えるんだ…!やっぱり俺達は心の底では仲良しだ…!


 そして、更に腹の底で俺はケラケラと嘲笑した。

 甘い甘い…!甘すぎるんだ…!人を信用するには、まず相手がこっちにそれ相応の代償を差し出さなくちゃ、信用なんてしちゃいけないんだよ…!

 フロー、てめぇは本当に甘ちゃんだなぁ…だが、今はその甘さに救われたぜ…!



 あ、あ、ありがとう…フロー…!

 俺は手を伸ばす。

 そして、フローの手と俺の手が重なる瞬間…――。



「――元気でね、ごみちゃん」


 俺の手は、パチンと弾かれた。

 ……フロー?なんの冗談だ?らしくないぜ。なぁ、ミスっちまっただけか?しょうがねぇ奴だ。ほら、もっかい。


「ごみちゃん」


 フローが俺の名を呼ぶ。

 俺は、ゆっくりとゆっくりと、顔を上げてフローを見た。そこには、感情が抜け落ちたような顔をしたフローがいる…。そして…、


「ばいばぁい…!」


 憎悪を詰め込んだような、人間の悪意を凝縮させた声色でフローは俺に言った。


 ずぶずぶと沈んでいく。

 救いようがなく、沈んでいく。

 ああああああああああああああああ!!!!クソキョンシーが!助けてやった恩を仇で返しやがって!!待ってろ!必ず俺がお前を殺す!お前を殺す俺をよく覚えておけ!俺の名は……!


 口が沼に飲み込まれる。

 せめて最後まで俺がいた証を残すべく、拳でグッジョブを作り、それを上に突き出した。



 I'll be back………



「わぁ、きたなぁい」





 涙なしでは見れません……。

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当作品はゴミ共の命によってモチベーションが賄われています。
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