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ゴミ溜めVRMMO記録  作者: どうしようもない
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記録.69『塵と猫』

 

「新スキル使い勝手どうなん?」


「ぼちぼち」


 そんな会話がそこら中から聞こえてくる。

 新世界が拡張されて、俺達は未だに一つの街も見つけていない状況だった。一つでも街を見つけられれば状況は大きく動くが、それすら見つけられないんじゃどうしようもない。


 エビふりゃーやその他ギルドマスターを中心に、プレイヤー達は新世界に野営拠点を築く羽目になった。警戒怠れない戦闘区域にての拠点は誰もが嫌だったが、拠点が無きゃ碌に活動できないのも事実…。効率を求める廃人共は必死に拠点を組み立てる他無かった。


 まぁ、それでも結局は近くに教会がねぇからわざわざ遠い教会で復活してはえっちらほっちら走る日々。

 最初は見てておもろかったが、少し経てばウザくなってくる。



 そんな中、俺は拠点陣地内で所狭しと存在するプレイヤー共を睨み付ける。

 拠点には大きく分けて、三つの種類のプレイヤーがいる。

 まず廃人、そしてぺろりん率いる精鋭ルーキー、最後にその他有象無象だ。有象無象共は数こそ多い癖に物見遊山の実力不足が大半だ。怠い事この上ない。


「はーい、皆さん帰りましょうねー」


 俺はその有象無象を見分け、血液腕でそいつらを次々に殺していく。


「て、てめごみた――」


 有象無象の一人が、言葉を言い切る前に肉塊になってしまう。ああ、悲しい。悲しいねぇ。

 俺は心にも思っていない事を口走りながら、攻撃を続けた。

 しかし、狩っても狩っても奴らは目を離すと無限に湧いて出てくる。ゴキブリと同じ原理だろう。


 それでも、俺は狩り続ける。

 一人のプレイヤーにつき1000……!エビふりゃー君がそう約束してくれたからな…。

 俺は殺戮マシーン、人々に癒しを与える…そんなマシンに私はなりたい…。





 無限の稼働力をもって動く、エコなスーパーヒーロー!(稼働源はエビふりゃー君の財布から捻出されています)


 ◇■◇


「通報してやる!ダスト!てめ――」


 ああ、はい。勝手にどぞー。

 俺は尻餅をついて無様に喚き散らかすプレイヤーを押し潰した。そして、返り血だらけの指を折って今で何人を殺したかを数える。


「……135…か?」


 別に虚偽報告をしても良いが、努力義務っつーもんはある。一応近しい数字は覚えておくべきだ。背後に迫ったプレイヤーをナイフで殺しながら、俺は数え直した。


 ……136。

 よし、今が136人な。

 反芻し、頭に覚え込ませる。

 再び魔物がポップする様にプレイヤー共がわらわらと沸いてくる。フィーバータイムは終わらねぇなぁ…幸せなもんだぜ…!


 俺は踵を返し、装備が雑魚いプレイヤー共を再び狩り始めた。

 しかし、暫くその有象無象共の相手をしているとある違和感に気付く。



 ……おかしい、奴らの数が減らねぇ…?

 有象無象共が無限の数を誇るとはいえ、ここまで減らないのは明らかにおかしい…。血液腕を振り回し、奴らの数を観察する。やはり減らない…!

 いや、それどころか顔触れが変わらねぇ…。


「おい、てめぇらチートにでも魂売ったか?あ?随分と太い生命線じゃねぇか、ああ?」


 俺はゾンビレベルの生命力を得ている奴らにそう吐き捨てる。


「し、知るか…!俺だって訳分かんねーんだよ…!なんで俺達は死なない?何故傷が癒える…?」


 ああ?自分の身体の事すら分かんねーってのか?

 ここは文明遺跡みてーな不思議空間じゃねーんだ。何が起きるにも全ては理由がある。

 ……はぁ…、一旦休戦だ。

 おい、てめーら互いに傷つけ合ってみろ。それでも傷は癒えるか?


 俺の言葉を聞き入れ、奴らは武器を下ろし、互いに小さな傷をつけ合う。すると、その傷はたちまち逆再生でもするかのように癒えていった。


「な、なんだこれ…」


 そんな疑問の声がそこら中から洩れる。

 俺も自分の腕にナイフで切り込みを入れる。すると、少ししてその傷は塞がった。…おかしい。明らかにおかしい。まるでヒーラーがつきっきりで俺たち全員を治癒しているみてーじゃねーか。



「おい、お前ら二人一組に分かれろ」


「は?なんでそんな事…」


 俺の言葉に反発する様にプレイヤーの一人が俺に突っかかる。


 はぁ…、お前らルーキーは考えもしないだろうがな…まず、どんな技にもメリット、デメリットが存在する。

 効果が強力であればあるほど、それに付随するデメリット…または起動条件は重くなる。そういうもんだ。もしも、この謎の回復がそのプレイヤーの技によるものなら、なんらかのデメリットが浮彫になっていても可笑しくねぇ。起動している以上、条件は達成しているらしいしな。


 俺の言葉にルーキーは食い下がり、渋々と言った具合でそれぞれが二人組を組んだ。


 よし、組んだな。……あ?

 プレイヤーが二人組になるその中でたった一人、プレイヤーが余っている。…いつの時代も数の不揃いはあるからしょうがねぇ。

 おい、てめぇはこっち来い。俺と組むぞ。


 そう言って、俺は余ったぼっちに手招きをする。

 よくよく見ると、そいつは女だった。こ、この有象無象共…!とんだ腑抜け野郎ども…!ネカマだらけのゲーム内の女すら誘えず、よくVRMMOなんかやってるな…。

 俺はこの場にいる連中にドン引きしながらも、やるべきことを説明する。


 あ、あー、良いか?

 てめぇらが純粋ピュアピュアプレイヤーっつーのは分かったが、そこはまぁいいとする。

 まず、自分を傷つけ、回復するかの確認。

 次に互いに傷つけ合う。さっきした奴ももう一回だ。回復してなかったり、どこか変な奴が居たら報告しろ。


 まずはそれだけでいい。

 デメリットっつーのは自分に跳ね返っている場合が多い。

 この回復がプレイヤーの仕業なら、周りの連中を回復させる代償がヤミヤミの実みてぇにダメージを通常より多く喰らうとか、自分だけ回復効果を得られないとかの跳ね返りを受けている可能性があるからな。


 俺の言葉を聞き、ほとんどのプレイヤーは先程まで俺と殺し合いをしていたことなど忘れた様に、「ほー」と納得の声を上げている。


 分かったらさっさとやれや。モタモタしてんじゃねぇぞ~。

 俺の言葉を聞き、多くのプレイヤーが傷をつけていく。俺はそれをしばらく観察し、変な真似をしているプレイヤーがいない事を確認する。


 俺が奴らを観察していると、突然肩を叩かれる。

 後ろを向くと、俺をペアを組んだ女プレイヤーがいた。ああ、そうだったな。俺達もやらなきゃだ。

 俺は自分の腕をナイフで切り、それを見せた。傷のついた腕はすぐに塞がり、何事も無かったかの様な柔肌へと戻った。


 俺はペアにナイフ渡し、ペアが傷をつけている間に再び有象無象共の様子を見る。変な動きをする奴はいない…。炙り出し失敗か…?んなら次は…。

 俺はそう考えながら、ペアの腕を確認する。そこには確かに傷があった。赤い血がだくだくと流れる…白い…華奢な腕が………?



「―――ッ!!?」


 バックステップで勢いよく、後ろに下がる。


「ごみ溜め!?」


 突然の俺の行動に有象無象共は驚いたような声を上げる。

 俺は即座に、己が辿り着いた真相を告げようとした瞬間――!



 〔ルートさんが条件を達成…〕

 〔〈教唆者(アジテーター)〉から〈偽善者(セルフィ)〉への進化を確認…〕



 あ……ああ!?

 突然の職業強制進化…。しかし、今はそれを気にしていられる場合じゃない。

 システムコールのせいで一瞬詰まった言葉を、俺は再び解き放つ。


「てめぇら”莉翫☆縺先ュサ縺ォ(今すぐ死に)譎偵○(晒せ)”!」


 その言葉が世界に放たれた瞬間、それは人が聞き取れたものではない言葉へと変質した。

 ――な、んだッ!!?今の!?俺の声か?俺の言葉か!?


 動揺が走ると同時に俺の目の前にいた有象無象共が皆、それぞれの方法を取って自殺していく。

 血飛沫が上がり、血の雨が降り注ぐ。流石に一撃で死なれたら回復も間に合わないのか、プレイヤー達は為すべき事を為し血の海に沈んでいく。

 ……こ、これは…どういうことだ…?お、俺は狗巻先輩になったのか…?


 俺は先程進化を果たした〈偽善者(セルフィ)〉のフレーバーテキストを急いで引っ張ってくる。


 ―――――――


 〈偽善者(セルフィ)

 全ての能力に-補正。言葉を強くする。

 信用してくれる民衆がいる場合に限り、その民衆にのみ言葉を強制させる。


 ―――――――


 が、ガチ狗巻先輩じゃねぇか…!

 え?もしかして喋んない方がいい?おにぎりの具だけで会話する?

 …いや待て…、この能力がユニークスキルじゃないのか…?

 俺が血の雨を浴びながら動揺していると、背後からぴちゃぴちゃと血の海を歩く音がする。


 俺がそちらを振り向くと、そこには腕の傷が癒えていない女プレイヤーがいた。そいつは、血だらけの俺を見ると、少し苦笑いをして言った。


「な、なんかすごい事になってるっすね…」


「しゃけしゃけ」





 おにぎりの具はエビマヨが正義だと、道徳と図工の授業で習いました。


 ◇■◇


 …度を越した回復はお前の仕業で間違いないな…?


「はいっす。いやー、ずーっと回復させればごみ溜めさんが戦っているところをずっと見れると思ったんすけど…まさかこんな事になるとは…!って感じっす!」


 そうかそうか。

 俺は平静を装って、奴と接触する。

 ……くくく…!この女…、あの超越した回復からして間違いなくレア職業持ち…!

 他プレイヤーの目がある前で関わりを持つ訳にはいかないと思っていたが、それも僥倖…!

 職業の強制進化が嚙み合った…!狗巻先輩パワーで奴らは全滅…、魂だって教会から離れているここじゃ長居は出来ねぇ…!


 あまりに整った状況に俺はゲラゲラと声を上げて笑いたくなる衝動に駆られる。

 しかし、それを何とか抑えてほくそ笑む程度に留める。


 あ、あー?それで?

 結局お前はなんなの?あの回復からしてレア職持ちだろ?出来れば素性と目的をもうちょいはっきり教えて欲しいんだけど…。


「はいっす!」


 後輩キャラみたいなノリで目の前の女は無い胸を張って、銀に淡い青のグラデーションが掛かった髪を揺らして、口を開いた。


「製品版より参入しましたっす!職業〈治癒天使(ナイチンゲール)〉、猫埜(ねこの)っす!ごみ溜めさんを師匠として仰ぐべく、探してたっす!」


 …〈治癒天使(ナイチンゲール)〉!

 当たりも当たり…!大当たりじゃねぇか!判明しているレア職業の中でも分かり易く強力そうな職業の一つ!それもなんだ?俺を師匠…?おいおいおいおい、こりゃ時代来たわ。ルートさんの時代到来したわ。


 よぉし!猫埜(ねこの)?さんだっけ?


「呼び捨てで良いっす!」


 よぉし、猫埜(ねこの)

 いいだろう!俺はお前の師匠になろう!さぁ、何でも言ってごらん!飴ちゃんをやろう!ほら、林檎味だぁ!


 俺はポケットから飴を取り出し、瞳を輝かせる猫埜(ねこの)の手の平に落とす。


「わぁい!ししょー!」


 猫埜(ねこの)は破顔しながら飴玉を口に放り込み、ころころと口の中で転がしている。んで、俺の事師匠っつーけど何の師匠な訳?


 俺はポケットからもう一つ飴玉を取り出し、猫埜(ねこの)に渡した。

 猫埜(ねこの)は再び嬉しそうに受け取り、両頬に飴玉を装備しながら、答えた。


「はいっす!戦闘っす!」


 え?今なんて?


「戦闘っす!」


 せ、戦闘?

 おいおい、俺とは無縁の事じゃねーか。

 俺の身体を見ろ。筋肉は無いし、力こぶすら出ない。こんな俺のどこに師事するところがある?


 俺はゲーム開始時にエディットした自分のキャラの悪口を並べる。

 や、やばいやばいやばい…!俺が人に戦闘技術を教える?勘弁しろよ…!弟子に実力を抜かされた時とか一番惨めだぞ!俺は素直に讃えらんねーぞ!師匠より優れた弟子など存在しねーんだ…!


「ほ、ほぉ~、戦闘。戦闘ね~…」


 しかし、〈治癒天使(ナイチンゲール)〉と言うレア職業…。しかも広範囲の超越回復(スーパーヒール)持ち…!に、逃がすにはあまりにも惜しい人材…!

 しかも、わざわざ戦闘のプロフェッショナルではなく、戦闘アマチュアの俺に師事を仰ぐド天然。あまりにもお(つむ)が弱いプロペラタイプ…。


「自分も師匠と同じくナイフ使ってんすけど、全然師匠みたいに上手く扱えないんす!そのせいで生傷も絶えなくて、何回も何回も回復魔法使ってたらいつの間にかこの職業になっちゃったっす!」


「そうかそうか…」


 沢山使うだけでレア職業に就いた…?

 そんなはずはない…。そんな条件が緩い職業ならば、レア職業と呼ばれるはずがない。何か、こいつにも何か大きな事があったはずだ。じゃなきゃ条件を達成できるはずが……。


 …ハッ、違う違う。

 今はそんなこと考えている場合じゃない。

 戦闘……戦闘……戦闘……。俺教えられること殆どないんだよなぁ…。うーん……スゥ―…まぁ、いいか!

 面倒臭い事は後で考えよう!

 あんまし教えなくてもどうにかなるだろ!これゲームだし!


「よーし!んじゃ猫埜(ねこの)、今からここに来る雑魚共をどんどん殺すぞ!見て盗め!いいな!」


「はいっす!頑張るっす!」


 ん~、良い子だねぇ。

 猫埜(ねこの)は良い子だねぇ。聞き訳が良くて大変よろしいねぇ…。


 あ、殺した数を数えるの忘れないでね。




 弟子に金稼ぎを手伝わせる師匠はクズっす!

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当作品はゴミ共の命によってモチベーションが賄われています。
― 新着の感想 ―
[一言] エビマヨは最強、異論はない。
[一言] 信用されると操れるとか、悪役感が増したなあ(今さら)
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