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ゴミ溜めVRMMO記録  作者: どうしようもない
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記録.66『信じるか信じないかはあなた次第です』

 

 ルーキー狩りをする心地良い昼下がり……。

 俺の気分はすこぶる良かった。花は咲き、小鳥はさえずる。木々の葉は風に揺蕩い、欲しかったスキルがルーキーからポロリと零れる。


 今日のラッキーカラーは赤だ。

 今、俺が勝手に決めた。もしも、本当のラッキーカラーなんて口にした日にゃ、特定への一項目を埋めちまう。それを許されるのは、無名のプレイヤーだけだ。

 俺は違うという、特別感……。

 全てのサーバーに存在するという自負と加速因子(イレギュラー)の存在が、限りなく気持ちを落ち着かせる。


 そんな中で、一つの声が背後で響いた。


「お、俺…!貴方みたいになりたいんです…!」


「…ッ!?」


 突然、あまりに唐突なそれに俺は大きく飛び跳ね、唸り声をあげる。

 きゅうりを与えた猫みたく大跳躍を決め込んだ俺を見て、そいつは目を輝かせたまんま俺を見つめた。


 ……こ、こいつ…、気配が限りなく薄い…。

 …!そうか、こいつ暗殺型ビルドか…!陰キャ戦法じゃねーか!




[Skill build]No.24『暗殺型』考案者・………

 βテスト初期に生み出された隠密性、殺傷能力に特化したスキルビルドだ。

 一人のプレイヤーが考案した初心者でも扱える強ビルドの一つだ。

 強ビルドと呼ばれる所以は、まずスキルが簡単に揃う事、それから攻撃力にスキルを振っているにも拘らず、隠密性も高める為、戦闘以外でも活躍しやすいと言う点だ。

 ……まぁ、良い構築だよ。うん…。



 …くそ、だから気付けなかったのか。

 今は察知系のスキルもあんまし積んでない。レベルの低い俺じゃあ気付けないのも頷ける。

 しかし、今でも十分通用するとはいえ、かなり昔の構築だ…。

 新スキルが増えてきて、初心者おすすめの新ビルドも次々開拓されている今、これを使う意味はない。それも、()()()で……。




 未だ目を輝かせてこちらを見る少年が、俺には酷く眩しく見えた。

 視線の切り方、足の動かし方、暗殺系ビルド特有の隠密頼り故の警戒心の薄さ、全てが全て「自分はルーキーです」と物語っているようなもんだ。


 ……消えろや、陰キャ野郎。

 俺もチーズ牛丼を食う身だ。あんまし人の事は言えねぇけどな、そんなゴミみたいなスキルビルドを使ってる時点で、てめーはポケモンでも受けループを使うクソ野郎っつーのが見え透いてんだ。

 罵詈雑言を浴びせるが、それでもなお目の前のこいつの目は輝いたまんまだった。


「ルートさん!俺、貴方の様なプレイヤーになりたいんです!初心者を狩って、人を脅して、人のお金で生きていく…、ルートさんみたいに!」


 え?貶してる?

 お前の言い草、完全に俺の事馬鹿にしてるよね?酷くない?

 俺、面と向かってここまではっきり言われたの初めてだわ。罵詈雑言吐かれた事はあるけどさ、ここまで前向きな言い方で馬鹿にされたのは生まれてこの方お前が初だよ。すげーな、才能あるぞ。逆に。


「ほ、本当ですか!有難う御座います!」



 ……うん、なるほどね!

 お前、友達から変わってるって言われるだろ。

 俺別に褒めてないもん、皮肉ったもん。


 それに、なんだ?

 俺みたいなプレイヤーになりたい?

 馬鹿言えよ、やめろ。これ以上、ゴミプレイヤーを増やすな。新規共は新規共で健全に楽しめや。どうせ、廃人共が邪魔すんだから。


「ルートさんがゴミプレイヤーだなんて…!そんな訳無いじゃないですか!だって……、貴方は…()()()()()()()()()()()なんですから!」


 ……βテスト初期、隠密系、攻撃系統の一部スキルはゴミスキルの烙印を押され、産廃を決めつけられていた。

 それに、不満を持った俺はその二つを両立させ、かつ環境に食い込めるビルドにするべく一時期没頭する様にビルド研究をしていた時期があった。ああ、あったとも。

 その結果出来上がったのは、隠密と攻撃スキルをガン積みし、敵の意識外からの一撃に命を懸ける影迹無端ビルド。

 暫くβテストの間も使っていたが、使っていて性に合わないと気付いて、すぐに捨てた。

 しかし、出来だけは良かった為、今も時たま使う奴はいる。

 ……だから、嫌なんだよ。



 俺は目を輝かせたプレイヤーの目を見た。


 あのなぁ、そのビルドは所詮ゴミなんだよ。

 隠密と攻撃に特化させたが、言っちまえばどっちつかず。他のプレイヤーに見つかればただの鴨だ。使ってるだけ無駄のゴミ構築。だから、俺はそれを使うのをやめたんだ。分かるか?


 俺の言葉にルーキーは黙り込む。

 作った本人からそんな言葉を聞くとは思わなかったのだろう。落ち込んだように俯いてしまった。


 じゃあな。俺になりたいんなら、精々足掻けよ。

 俺は踵を返して、その場から離れようとした。もう見たくもないぜ、あんなビルド。

 しかし、俺が奴から離れようとした途端、



「う、え、えぇええぇぇぇぇええん……」


 そいつは地べたに座り込み、そのまま泣き出した。

 頬は赤く、服がめくれ、へそが少し見える。膝小僧がほんのり赤くなっており、自然とそこに目を惹かれた。


 ………はぁ。

 俺は、再び奴の方に向き直り、泣きじゃくる奴の傍まで近づいてしゃがみ込んだ。


 はぁい!

 暗殺ビルドサイコー!やっぱ時代はこれなんだよなぁ!!

 …これがおっさんやただの女だったらお前、殺してたよ。可愛らしい膝小僧を持つ少年で良かったなぁ、おい。

 あ、飴食う?何味好き?林檎飴でもいいけど。



 性癖の坩堝(VRMMO)に身を投じた者のストライクゾーンは幅広い。


 ◇■◇


「いいか?後ろで見てるだけだ。それだけだからな」


「ふぁい!」


 林檎飴を齧りながら、ルーキー君は元気よく返事をする。

 俺は、それに頷いてルーキー狩りを再開した。ガリガリ、と林檎飴を齧る音が聞こえる。


 その音を聞きながら、俺は遠くに見えた一人のプレイヤー向かって走り出す。

 武器、装備、警戒の薄さ、表情からして奴はルーキーだ。しかも、サイショで売られているありふれた装備に草臥れた剣。

 ああいう輩は分かり易い。

 装備も勝ったし、次は金を溜めて武器を買おう!ってとこだろう。買う順番が逆なところがルーキー感を更に醸し出している。


 いい鴨だ。

 俺は《疾風》をそのまま発動させて、奴の首を掻っ切った。

 奴が気付いた時には、もう首が切れている。首だけになったルーキーがパクパクと何かを言う。しかし、興味が無い俺はそんな頭を血液腕で殴り潰して、戦利品を回収した。


 そして、やっとこさ追い付いてきたルーキー君が息絶え絶えになりながら顔を上げた。


「す、凄い……ですね…!はぁ、はぁ…」


 俺の昔のビルドを使っている点を考えれば、こいつがいきなり敵になるという展開は無いに等しい。なにせ、セットスキル全てをわざわざ暗殺型に変更しなくちゃいけないからな。廃人共はスキルに強力なものを組み込む。その為、簡単にスキルを変更する事が出来ない。変更したら、また取りに行かなきゃいけないからな。わざわざ俺を騙す為だけにそこまでする馬鹿はいない。

 つまり、この称賛は本物。QED。


 褒められ慣れていない俺は、鼻を高くしてそれを受け止めた。


 ふふん、そうだろう。

 何せ俺はルーキー狩りだ。他のプレイヤーとは違う訳よ。

 中々良い目持ってんじゃねぇか。ああ?飴ちゃん食うか?飴ちゃん。


 ほれほれ、と俺はポケットから飴を取り出してルーキー君の頬に押し付けた。


「いえ…俺まだ林檎飴食べ切れてなくて…」


 そうか、じゃあしょうがないな。

 食べたくなったら言えよ!いつでもあげるからな。

 俺は優しい口調でルーキー君にそう言った。粗方ゲットした戦利品の整理をして、また周囲の探索を始めた。ルーキー一匹を殺しても大した額はゲットできない。その為、ルーキー狩りで生計を立てるならば、結局のところ数が必要なのだ。幸い、ルーキーはゴキブリだ。一匹いれば千匹はいる。少し待てば、サーバーの同期が行われ、またルーキーが沸くだろうよ。


 俺の言葉に再び関心する声を出すルーキー君。

 何て気分がいいんだ…!こりゃ良い…っ!自尊心が満たされていくのが手に取るように分かる!あぁ、やっぱりエゴを満たすには初心者に知識をひけらかすのが一番なのか!


 俺が気持ちよくなっていると、直ぐ近くで草を踏みつける音がする。

 ああ?俺がこんな気持ちよくなっている時に、一体……ハッ!


「な、なんですか……!こいつ…!」


 それは黒く楕円形の体に白い仮面をつけ、ずりずりと這いずり回る異形の存在……!

 そう、それは…!


「――カオナシ……!」


 カオナシが俺とルーキー君の前で立ち止まり、うねうねと身体から黒く小さな腕を出して、手の平を上にする。


「ア…ア……」


 乞食でもするように俺達に何かを寄越せとせびるカオナシ。

 尚、カオナシの中身は廃人なので、下手に断るとぐちゃぐちゃに惨殺される。その為、何かを渡すのが賢明だ。

 俺はルーキー君に講釈垂れながら、メロン味の飴を渡した。

 ルーキー君もそれに倣い、亜空間から適当なアイテムを出して、手の平に置く。


 カオナシは白い仮面を笑顔で歪ませた後に、ルーキー君をその小さな手で指さした。


「ア…ア……アァ…」


 その黒い手で指した先には、食べ欠けの林檎飴が握られていた。

 カオナシはそれを欲しがる様に楕円状の黒い体躯をくねらせて、鳴き声を上げる。ルーキー君は訳が分からないといった顔で、カオナシに食べ欠けの林檎飴を渡した。

 林檎飴を受け取ったカオナシは喜ぶような仕草をして体の中に林檎飴を入れた。


 そして次の瞬間、カオナシから何かを舐めるような音が聞こえてくる……。


「…いいか、これも社会勉強だ」


 俺はこの結果になる事が分かっていた。

 最初からカオナシの視線がおかしかったのだ。奴は俺を少しも見ずに、まずルーキー君の顔、首、胸、腹、そして膝小僧と脛を見た。そして、再び首を見て、最後に口を見た。完全に()()()()()()側の視線の向け方だ。

 分かっていて、俺は唇を噛み締め、歯を食い縛り、先程までの動向を見つめていた。

 そして、


「これが、カオナシの殺し方だ」


 俺はルーキー君にそう言って、気持ち悪い音を立てるカオナシに近付き、こう囁いた。


「ちなみにそれ中身おっさんが食った奴すけど……いいんすか」


「ア……ア……アア……アアア………アアアァ……アアアアアアアアアアアアア」


 ――……カオナシは、その言葉を聞いた瞬間グズグズの肉塊と化して消えた…。


「る、るーと…さん…」


 カオナシは脆い生き物なんだ。

 例え、嘘っぱちの情報でも信じてしまう真実の生き物。だから彼らは乞食になった。千の嘘に一の真実。それだけが、奴らの生きる糧だからだ。



 カオナシ達は今日も乞食く。

 はちみつください、と。秘薬ください、と。

 誰しもが持つ欲望の根源を奴らだけは隠すことなく、ひけらかす。それが間違ったやり方とも知らずに……。


 ◇■◇


 再びルーキー君に飴を与える。

 流石に林檎飴を二連続は嫌かな、と思い、俺は苺飴を渡す。ルーキー君は喜んでくれた。可愛い。


 そして、暫くルーキー狩りに勤しんでいた時にそれは起こる……。


「ねぇ」


 突然、俺の肩が叩かれた。

 き、キェェェェエエエエエエエエエエエ!!!!!

 背後に立たれ、声をかけられ、あまつさえ肩をトントンと叩かれた。俺は奇声を上げてその場から離れる。

 俺の肩を叩いた正体を見ると、そこにいたのは小さな身長に金色の可愛らしい髪のララだった。


 俺は一息ついて、安心する。

 んだよぉ~、驚かせんなって~。

 おう、ルーキー君。こいつはダチだ。警戒しなくてもモーマンタイ。カオナシみたいな変な事無しねぇよ。


 その言葉を聞き、ルーキー君は露骨に安心し、再び苺飴を齧り始める。…うーん、一本の串に四個の苺は多すぎたか?やっぱ無難に三個が良いのかな?

 俺は、ガリガリと苺飴を頬張るルーキー君を見てほっこりするが、すぐにララの方へ向き直った。


 んで?どしたの。

 急用?連絡も無しに突然だし、いつもなら場所くらい聞いてくるだろ?ピクニックって訳でもなさそうだし…。


 俺がそう聞いても、ララは何も答えてくれない。

 それどころか俯いて、顔すらもよく見えない。おいおい、しっかり上向けよ、お前は俺と違ってお天道様に顔向けて生きなさい。なんも悪いことしてないんだから、全くもう!


 俺はそう言って、ララの小さな顔を両手で挟み、俺と向き合わせた。


「――……ッ!!!」


 そして、気付く。

 こ、こいつ…!もう、正気を失って!!!

 しかし、そう気づいた時には何もかもが遅かった。

 ララは光の無い瞳で俺の顔面を見ると、少しも動いていなかった口をにこりと歪ませ、トンデモない力で俺を背負い投げをした。


「る、るーとさん!?」


 突然目の前の幼女に背負い投げされた俺を見て、ルーキー君は心配の声を上げた。

 俺は地面に転がりながら、手をルーキー君の方へ向けて”大丈夫”とジェスチャーをする。


 ララが俺の身体の上に馬乗りになる。

 息遣いが荒い、瞳に光が灯っている。しかし、その光は狂気に満ち満ちていた。ララが亜空間からずるりと一本のナイフを取り出した。ナイフが太陽に照らされてギラリと光る。

 反射光が目に入り、俺は少し瞳を細ませる。


 そして、その瞬間―――、ナイフが俺の心臓を突き刺した。

 突き刺して、突き刺して、突き刺して、突き刺して、突き刺して、突き刺して、突き刺して、突き刺して、突き刺して、突き刺して、突き刺して、突き刺して、突き刺して……、ララは何度も何度も俺の体中をナイフでぐちゃぐちゃに刺し続けた。


「ご、ごめんねっ…ごめんねっ……し、しょうどうが…しょうどうが…、ね?」


 刺される度にビクンビクンと痙攣する俺の身体。

 血塗れになってもなお、刺す事をやめない幼女。

 広がる血溜まり……。


 血溜まりがルーキー君の足下にまで及んだ頃、遂にルーキー君の手から苺飴がするりと抜けた。苺飴はべちゃりと音を立てて、血溜まりに落下する。

 その瞬間、糸が切れた様にルーキー君は尻餅をついた。そこで、ルーキー君の潤んだ瞳とガラス玉のようになった俺の瞳がバチリと視線を交わした。


「…ご、め……ん…な…」


 その言葉を最期に、俺は事切れた。

 未だに刺す事をやめないララ。

 ルーキー君はただ茫然として、もう魂の入っていない俺の亡骸を見つめると血溜まりに落ちた林檎飴を拾った。


 そして、ぺろりと舐めた。

 彼はその途端、その場で固まり、こう口にするのだった……。


「ア……ア……」




 世にも不思議なカオナシ増殖の瞬間――。


[Skill build]No.24『暗殺型』考案者・ルート

影迹無端、一撃必殺を心掛けた暗殺型のスキルビルド。

スキル全般を直ぐに揃える事が出来、更に強力な事から数多の使用者を出した為、マンネリ化、対策が進み、廃れたスキルビルドの一つ。

しかし、十分戦える性能はある為、パンピーのルーキー諸君は作ってみてもいいかもね!

【必要スキル】

《ナイフ》※キャラメイクでゲットしていれば楽

《抜刀術》※

《居合》

《静かなる心得》

《忍者》※

《闇紛れ》

《気配鈍化》

《有象無象》

《隠密》

《閻魔時間》

【採用候補】

《クリティカルヒット!》

《消音》

《不朽》

《しなやか》

《揺蕩う暗き》



[Skill build]とは

『β組のまとめ!』と呼ばれる初日限定で配られたキバオウの顔がプリントされた数量限定冊子に載っているスキルビルドの構築一覧である。スキルビルドは全59種存在し、有志により一部のスキルビルドはインターネット上に移行されている。しかし、冊子自体の母数が少なすぎる為、全てを移行する事は叶わなかった。

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当作品はゴミ共の命によってモチベーションが賄われています。
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