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ゴミ溜めVRMMO記録  作者: どうしようもない
62/115

記録.62『ドキッ⁉まさかのあの子とラブラブデート⁉』

 

「はい、お金」


 あ、あざーす。

 俺はお礼を述べながら、卑しい手付きで金を受け取った。

 俺は攫われてしまったが、ラミミは結局密漁船に残った。その為、かなりの金が懐に入った。


「おいしい……!」


 相も変わらず、ボロの食欲は旺盛だがな。

 モリモリと俺の作ったオムライスを食べるボロを見て、俺はフッと笑った。


 ちょっくら出かけてくる。ラミミ……お前も行かないか?

 俺がそう言うと、ラミミは首をふるふると横に振った。……ッスゥー…そうか、んじゃなんか土産でも買ってくるよ。


 手袋をつけ、コートを羽織り、扉を開けた。

 最近は雪の勢いも弱まり、そこまで猛吹雪も無かったくせにここに来てまた降雪イベントがはっきりと再来しやがった。俺はぐちぐちと文句を言いながら、雪を踏みしめた。


 ざくざく、ざくざく。

 まだ踏まれていない場所の雪を踏みながら、俺は街を歩く。俺の家があるのは〔シンリン〕だ。その為、街中に木々が大量に生えているし、その木々から雪が落ちてくることはよくある。あぶない。

 俺は落下してくる雪に直撃しながら、転移門で〔サイショ〕に転移し、おはぎのところで和菓子を買った。その後で、適当に商店街を回り、待ち合わせの場所である噴水広場へと到達する。

 そこには―――、



「お、おそい」



 真っ赤な顔で俺にそう言う狐面の姿があった……。




 絡んだ人間関係の糸が(ほど)けたと、いつから錯覚していた?


 ◇■◇


「い、一時間の遅刻だぞ……別に帰っても…」


「別に……いいよ」


 余りに献身的な狐面を前に、俺は恐怖で震えた。

 狐面の格好はいつもの黒いチャイナドレスみたいなものではなく、コートにミニスカートと言う寒さを考慮しないお洒落命のコーデ……。


 やべぇ…。

 心の中で俺はそう呟いた。


 ◇■◇


 ……時は一日前に遡る――。



「――…い。おい!ごみ溜め!起きろ!」


「……んぁ」


 目を覚ますと、視界に一人のプレイヤーが目に入る。

 そのプレイヤーは、俺の首を持って無理矢理に地面に立たせて、椅子をテーブルの上に置いていく。


「帰れ、ごみ溜め。とっくに店仕舞いだ」


 そう言われて周囲を見渡すと、確かに人っ子一人いない。……頭が痛い。


 その痛みで思い出す。

 そう、こいつはここの店主。んでもって俺は酒を飲んで……酔い潰れた…?


 俺の言葉に、店主が頷く。

 そして、しっしと手で俺を追い払うジェスチャーをした。

 おい、待て待て…金は?いくらだ?払わなきゃ無銭飲食になっちまう。俺はゴミでも流石にそこまではしねぇぞ。


 財布を出しながらそう言うと、店主は俺を見て溜息をついた。


「お前のツレが払ってくれたよ。律儀にお前の分までな…感謝しておけ、あの子が余分に金を出したから、俺はお前を寝かせたままにしてやったんだ」


 …ああ?

 ツレってのは…?…まぁいい。感謝しとくよ、ああ、感謝する。

 んじゃ、俺は家に戻って二度寝するわ。じゃあな、よく覚えてないが多分美味しかったよ。

 そう言って、俺は店から出ようとする。すると、


「おい、しっかりエスコートしてやれよ」


「……ぁあ?」


 突然訳の分からない事を口走る店主を前に、俺は怪訝な顔をする。


「楽しみにしてたぞ、あの子」


 てめぇ、何言って…?

 俺はそう聞き切る前に店から追い出された。チッ…なんなんだよ、あいつはよぉ。

 俺はポケットに手を突っ込んで、朝の街路を歩いた。


 そこで、気付く。

 …あ?なんだ?メッセージが溜まってんな…。

 俺はそれを凝視し、メッセージリストを開いた。そこには、狐面からのメッセージが数件あり、内容は…



 〔きつね:明後日の7時にサイショの噴水広場集合ね〕

 〔きつね:約束だからね〕



 その(しゅんかん)、脳裏に全てがフラッシュバックし―――。






 ことの発端は俺の一言だった。


「もうすぐバレンタインだぜ?なーんで俺たちゃ救いようのねぇゲームしてんだよ」


 事前アンケートの結果、このゲームにリア充は存在しない事が分かっている。

 まぁ、いるとしてもアンケートの存在すら知らない無回答連中だ。

 本当に救いようがねぇぜ。なぁ、そう思うだろ?なぁ、おい、なぁ。聞いてるか?


 酒を天に掲げながら、俺は一緒に飯を食っていた狐面の肩に腕を回す。

 おいよぉ、お前も寂しい奴だなぁ。おい、お前俺以外のフレンド何人いる?プロペラに、エビふりゃー、ラミミ、……あれ?

 俺は指で狐面の知り合いを数えだす。

 いち、にー、さん、……ふっ…あはははははは!!!お前フレンド少ねーな!可哀想!


「……うるさ~い」


 狐面が顔を顰めて、俺を睨んだ。

 狐面は微妙に内弁慶だ。自分の事を知っている人には普通に接せられるが、自分の事を何も知らないガチの初対面には、最近のラミミみたいに全然喋らなくなる。

 俺が数えた限りは狐面のフレンドは三人だが、真剣に推理するならば七、八人ってところが妥当なとこだ。一応ドクターやらとも面識があるしな。


 しかし、それにしても少ないぜ。

 それでもお前、β組か?もっと本気出してこーぜ?

 俺の煽るような言葉に、狐面が舌打ちをする。そして、テーブルに置いてある瓶をかっ喰らう様に飲み干した。


 あ!てめぇ!それお前のジュースじゃなくて、俺の酒!

 狐面は酒をあまり飲まない。飲んだとしても度数の弱いものだ。しかし、こいつは今、俺が飲んでいた素数の高い酒を飲んだ。その結果……、



「あははははははははは~」


 出来上がった狐面を見て、俺は楽しい気分になる。

 素面ならば冷たい目線でもくれてやったが、俺も酔っている。何でもかんでも楽しくなる。俺は狐面が頼んだチーズグラタンを勝手に食いながら、言った。


「お前、もっとフレンドつくろーな!俺を見習え!俺を!」


 アツアツのチーズグラタンで口の中を火傷させながら、俺は狐面にそう言った。

 俺のフレンドリストは基本知らない奴らで埋まっている。しかし、知らない奴らで埋まっていたとしても、そいつらから誘いのメッセージが来ることは多いのだ。んでもってどうせ暇だし、その誘いを受ける事も多い。

 その結果、また芋づる式に俺のフレンドは増えていく。

 一度サイクルが出来れば、あとは為すようになる。循環する様に俺のフレンドは回っていくのだ。


 俺の傲慢な言葉を聞いて、狐面はぷくーっと頬を膨らませて地団太を踏んだ。


「ぐうううう!じゃあ立ち振る舞い教えてよ!!どうしたらいいのか分かんないもん!!」


 子供のような我儘を言い出す狐面…。

 俺はそれを聞いて、気分を良くした。人は自分より下の奴を見て、一安心する。俺はこいつを見て、自分への優越感を満たした。


 自尊心(エゴ)を満たせた俺は、酒も相まって高揚感の中にいた。


「いいぜ~。俺の立ち回りを盗み取ってみろよ~」


 だからこそ、俺は言ってしまったのだ。

 このフール女を前に、あまりにも考えなしの台詞を…。


 ◇■◇


 かなり前になるが、拗れた人間関係をどうにかしようとラック君が俺の下に来てくれたことがあった。あの時は、抹茶がわざわざ忙しいラック君を呼び寄せた。


 確かにあの時は、ラック君と会えて凄く嬉しかった。

 しかし、あの時抹茶がラック君を呼んでさえいなければ、今この状況も訪れていなかったかもしれない。そう思うと、どれほど抹茶がこの世に害する存在かがよく分かる。


 ラック君があの場にいてしまったから、俺はより人間関係を拗らせてしまった。

 ラック君が優しすぎたから、俺は見損なわれたくないと人間関係をより拗らせてしまった。

 ラック君を好きだからこそ、俺は自分を偽ってしまった。


 ああ、ラック君……!

 俺はβ組の中の一番の良心を空目して、瞳に涙を溜める。今頃、どこで何をしているのかな…廃人共の尻拭いをしているのかな……。

 俺は、必死に駆け回っているラック君を想うと胸が痛くなる。最近のナビ召喚事件で迷惑を掛けたばっかりなのに、これ以上迷惑を掛ける訳にはいかない。

 俺の心に覚悟の炎が燃え盛る。


「ね、ねぇ…」


 覚悟が決まった俺のコートを狐面がちょいちょいと引っ張る。

 俺が後ろを向くと、狐面は顔を赤くしながら、おもむろにこう言った。


「て、手……さ、寒いから…」


 そう言って、手を差し出した狐面。

 え?なに、どういうこと?寒いから何?え?もしかして手袋寄越せって事?え?図々しくない?なにこいつ、やば……。

 しかし、俺は自分から立ち回りを盗み取れ、と言ってしまった。下手に断って、暴れられるのが一番困る。俺は渋々はめていた手袋を取り、狐面の差し出した手の上に乗せた。


「……は?」


 狐面の顔が惚けたような表情に切り替わる。


 は?なんだよ、欲しかったんだろ?感謝しろや。

 お前、こういうことだぞ。こう言う優しさ溢れる立ち回りがフレンドを増やすコツなんだ。お前も、優しさを持って、俺に手袋を返すくらいのことしてみろよ。なぁ。


 俺の言葉を聞いて、狐面はしばらくぽかんとして、すぐに頬を膨らませてぶつぶつと何かを言いながら俺の渡した手袋をはめた。


「そうじゃないし……鈍感キライ…」


 何言ってんだお前…。

 俺のどこが鈍感なの?ねぇ。

 俺は、狐面の言葉を流石に許容できない。


 分かりづらい要求だったのに、俺はしっかりと手袋を渡した。それも、俺のやつを。

 そのせいで俺の手は真っ赤っ赤だというのに、なんで鈍感と言われるのか。

 なぁ、どうしてだよ、俺分かんねぇよ。なぁ、フール女さんよぉ、教えてくれよ。鈍感な俺に教えてくれよ、何が正解だ?ああん?


 寒がる狐面に近付いて、おでこをぶっつける。

 近距離でガンをつけると、狐面は途端に顔を真っ赤にして、そのまま白煙が顔から立ち昇った……。


「ぷしゅ~……」


 謎の効果音が、狐面から飛び出る…。


 えぇ…?

 なにこいつ…。

 俺は正直、すぐさま帰りたかった。

 こいつは、下手に関わっていくとどんどん怠くなるタイプだ。もしも、たった二人で出歩いているところを狐面のファンクラブに見られてみろ。恐らく、俺は地の果てまで追いかけ回され、ズタズタに引き裂かれる事だろう。


 こいつと関わっても、百害あって一利なし。

 関わるべきではないのだ。厄介事を背負った鴨葱。それがこいつ、きつねというプレイヤーだ。


 目の前で煙を出す狐面を見て、俺はそう思う。

 しかし、俺はママだ。

 一度こいつに信頼された以上、俺はこいつを自立させるまで付き合い続ける責務がある。例え、それが死に包まれた……母性とは程遠い関係性でも、俺は諦めない。

 だからこそ、



「おい、行くぞ。いつまでもぷしゅってんじゃねぇ」


 俺は狐面の手を引く。

 それが、地獄への入り口だとしても――。

文面に出てきたラック君と拗れた人間関係の話

記録.13『誰か助けて』 https://ncode.syosetu.com/n9225gp/13/

記録.14『星達が見守る夜』 https://ncode.syosetu.com/n9225gp/14/

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当作品はゴミ共の命によってモチベーションが賄われています。
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