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ゴミ溜めVRMMO記録  作者: どうしようもない
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記録.53『恐るべき子供たち』

 

「供養は終わりだ。先へ進むぞ」


 プロペラの墓の前でしゃがみ続ける俺と抹茶に、エビふりゃーがそう言った。

 薄情な奴だな、エビふりゃー。てめぇには人の心がねぇのか?プロペラは偉大な人類史の貢献者だ。奴がいたから、俺達は今生きている。

 その事実を理解して、お前は地面を踏みしめてんのか?ああ?


 エビふりゃーは、分かった分かったとおざなりに俺の言葉をのらりくらりと躱す。ふん、まぁいいさ。プロペラの意志は俺が継ぐ。元気でな、プロペラ。


 俺はプロペラの墓に酒を掛けて、立ち上がった。

 おい、そろそろ行くぞ。さっさとお前も立て、抹茶。


「…元気でね…空さん…」


 抹茶はそう言って、大きな杖を地面について立ち上がる。



 俺達は進む。

 薄暗い坑道を。一体、あとどれくらい進めばいいのか…それは誰にも分からない…。


 ◇■◇


 暫く進むと、E区画へと突入した。

 E区画の連中は俺らを見て、驚愕したような顔をして、すぐに俺達に向かって罵りの言葉を吐いた。


「て、てめぇらッ!!なんでこんなとこにいやがる!お前らの区画はもっとあっちだろうが!!!なんでここまで出て来てんだ!!さっさと帰れやッ!!」


 おいおい、随分とイラついてんじゃねぇか。

 一体全体どうしてそんなに苛立ってんだよ。俺達が何かしたか?ああ?


 俺が更に言葉を重ねようとする。

 しかし、口が動く前にエビふりゃーが俺の肩を掴んで前に出たあ?エビ、てめぇなんのつもりだ。今は俺がこいつと話して……


「ルート」


 決戦兵器が俺の腕を掴んで首を振る。

 見てろってか?この人の心が理解できない最強廃人の対話を?

 俺がそう言うと、決戦兵器は頷く。


「終着駅の奴だ。エビになら…」


 ……そう言う事か。


 俺は信じる事にした。

 終着駅というトップギルドを束ねる男の、ギルドマスターとしての力を。




「よぉ」


「え、エビ…なんでここにあんたがいる…!帰れよ…!あんたは負けただろう!あの子に…!」



 ―――この鉱山の採掘場に連れてこられた廃人共は、初めこそただただ楽しく採掘をしていた。

 どうせ、ワールドクエストのほとぼりが冷めるまでだ。そう時間も食わないだろう…。そう、誰もが思っていた。


 事件は採掘が始まった一時間後に起きる。

 勝手に帰ろうとした廃人がララによって細切れにされた事から始まる。

 既にララの〈禁忌に触れる者(アンノウン)〉については、廃人達皆が知っている事だ。「殺人欲求でも抑えられなくなったか~?」と誰もが笑っていた。


 しかし、違かった。

 ララは鉱山から出ようとする廃人を軒並み殺して、こう言った……。




『まだまだがんばれるよねっ!』




 エビふりゃーは、ララのあまりの傲慢さに耐えかねて、武力での廃人解放を狙った。しかし、エビふりゃーの身体はララに触れた瞬間、いきなり爆散したのだ。

 そして、エビふりゃーは抹茶に蘇生を施され、その場に復活を果たした。


 ララは、まるで最初から用意していましたと言わんばかりに区画ごとにプレイヤーを分け、無理矢理に採掘作業に従事させた……。




 製品版最強廃人のエビふりゃーが、手も足も出ずに(いち)生産勢に負けたのだ。

 その光景は、エビふりゃーの実力を知っている者ほど恐怖を覚えるものだ。誰しもが叶わないと、太鼓判を押された男が、何も出来ずに消し飛んだのだ。


 終着駅のギルドメンバーこそ、最も衝撃が大きかったのではないだろうか。


「お前じゃ…勝てないんだよ…」


 だから、こいつはこんなにも辛そうに言うのだ。

 自分たちのリーダーの敗北を。

 妄執してしまっていた自分への弾劾を。


 今、ここにいる連中は俺を除いてみんな終着駅のギルドメンバーだ。


 正直、気まずい。

 俺そんなにエビふりゃーの事評価してないし、どっちかと言えばほぼ自力でレア職業に進化させたプロペラの方がすげーと思うし。


「次は勝つ」


 エビふりゃーが言う。


 この風潮やめね?

 エビふりゃーが天才っつーこの感じ。嫌なんだけど、こいつが天才って言われてるの腹立つんだけど。なんでじゃあ俺は天才って言われないの?ねぇ、あいつはサスケか何か?なんとか言えよ、なぁ。


 感動風の何かが目の前で始まっている中、俺は納得できずに周りの連中に問い質す。


「知るかよ」


「黙りましょう」


「ゴミちゃんは(たぶら)かす天才だよねぇ」


 目の前のよく分からないドラマを見ながら、奴らはそう言った。

 納得できねぇ。納得できないなぁ。夢オチエンドくらい納得できねぇよ。


 俺が納得できないを連呼していると、突然視界にメッセージが入る。ああ?んだよ、こんな時に。誰からだ?

 俺はメッセージの文面を見る。そこには…―――、




 〔きつね:いけないんだぁ〕




「みーんなみんな、逃げてる~」


 突然響いた第三者の声。

 その声は、俺達が進んできた坑道の方から聞こえた。ざり、ざり、と地面を踏みしめる音が聞こえる。その音を響かせる正体は……


「いけないな~」


「フール女ぁぁぁああああああああ!!!!!」


 俺が叫ぶと同時に、狐面が爆発の魔法を唱える。

 それを察知して、各自E区画から散開し、それぞれが近くにある坑道へと逃げ込む。


「生きろッ!」


 爆音が響くコンマ数秒前、最後に聞こえたのは誰かのそんな言葉だった。



 ――――。

 爆音が鳴り響く。

 俺の身体が突風を受けて吹っ飛び、一回二回と壁や地面にバウンドして跳ねる。

 咄嗟に耳を塞げたから、鼓膜までは破れていないが、耳の奥がキーンと痛む。


 クソ…!

 フールがッ!!あいつ、この鉱山を破壊するつもりか!?いや、倒壊が起きていないってことはあの周辺は恐らく対爆破の障壁でも張られていたことになる。そして、自分すらも巻き添えになりかねない爆発の大きさからして、狐面にも対爆破の障壁が張られていたのだろう。


 つくづく用意の良い…。

 しかし、障壁…?そんな魔法…しかも中々にマイナーな魔法を狐面が覚えているか…?いや、覚えている訳ない。とするならば、マイナー魔法を覚えている協力者が…



「ご機嫌如何かな。ルート氏」


 ……なるほど。

 てめぇが障壁を張った犯人っつー訳だな…ドクター。



 俺の言葉に、ドクターは頷く。

 狐面にドクター。

 お前らは一体何で俺達の邪魔をした?狐面だけならば、ただのちょっかいだって思えたさ。だがな、あんたが出てきたとなったらただのちょっかいじゃあないだろう。


 俺がどうにか言葉で奴の考えを聞き出そうとすると、ドクターは亜空間から一つの試験管を取り出す。


「お、おい…ドクター…?」


 俺の言葉など意に介してないかのように、ドクターは試験管の中身の液体を地面へと落とした。


 その瞬間、液体で濡れた地面から桃色の靄のようなものが立ち上る。や、やばい…!何かは分からないが、あれはやばいと断言できる…!


 靄はすぐに俺の周りを取り巻く。

 く、くそ!

 俺は服の裾で口と鼻を抑えて、どうにか吸引しない様にする。


 ドクターはいつもペストマスクをしている。

 恐らく、奴のペストマスクはガスマスクの機能も果たしているのだろう。その証拠に、見せつけるかのように目一杯深呼吸をしては吐いていやがる…!二酸化炭素製造機が!


 俺は口と鼻を抑えながらも爆発で吹っ飛ばされてきた道を戻ろうとする。しかし…!


「あ~、ダストっち~」


 行く先を阻む様に狐面がふらふらと現れる。

 は、挟まれた!まじかよ、なんでてめぇら俺んとこに集まるんだよ…!俺が万事休すか、と諦めかけた時、


「ダストっちはほん………すぅ…すぅ…すぅ…」


 し、しめた…!

 狐面の奴…思い切り靄を吸って、眠りやがった!

 この靄の正体は、昏睡効果か!


 はははははは!!!

 ばーか!狐面のアホさを恨むんだな!てめぇ一人頭良くても、仲間が頭悪くちゃどうしようもねぇなぁあああ!!!!じゃーな!!またどっかで会おうな!!どく……zzz…zzz…zzz…。



 煽り散らかした結果、俺は靄の空気を思い切り吸い込み、狐面の上へと倒れ込んだ。


「ぐぇっ」


 狐面が内臓が飛び出たような声を上げて、俺の身体を受け止める。

 俺の……かちだ…。

 ざんねんだったな…ど、くたー……。


「zzz…zzz…」

「すぅ…すぅ…」


「うわぁ」


 二人の寝息が響く坑道。

 その中で、ただ一人起きている男が引いたような声を上げた。


 ◇■◇


「だすとっち、だすとっち」


 ああ…?

 目を開けると、そこには眠そうに欠伸をする狐面がいた。


 ん~?

 なになに、朝ごはん?

 ラミミは?ボロは?なんでお前いんの?


「ここダストっちの家じゃないよ。ラミっちもボロちゃんもいないよ~」


 ああ、そっか。

 あれ、どうなった?どういう状況?ドクターは?エビふりゃーは?フローは?他の連中は?


「解散だよ~。目当ての鉱石出たからみ~んな解放」


 えぇ?

 ホントに鉱石欲しかっただけなんかよ、あいつ。

 俺は立ち上がって、砂を払う。


 …ここどこ?

 俺が辺りを見渡すと、そこは坑道ではなく石壁で出来た部屋だった。ソファや冷蔵庫などが完備された本当に普通の部屋。


 問い掛けると、狐面は言う。


「採掘場の受付だって…ふわぁ~」


 二度目の欠伸をした狐面につられて、俺も欠伸をする。

 んじゃ、帰るか。結局ドクターとお前はなんだったわけ?なんであんな邪魔したの?


「ん~?ドクターは力が無さ過ぎて、私はセンスが無さ過ぎて全然掘れなかったから、採掘から逃げる人たちを捕まえる役割を任されてたの」


 ああー、看守ってことか。なるほどなぁ。

 俺はうんうんと頷きながら、鉱山を出た。太陽が酷く眩しい。


 〔コウザン〕の街に入ると、その中でルーキーと廃人が言い争いをしているのが見えた。


「恒例のなんで参加しなかったのか討論だね~」


 そだねー。

 俺はその行く先を知っている。

 俺達は前回のワールドクエストも参加をしなかった。そして、前回それを責められた時、エビふりゃーは言ったのだ。



『次の〔ワールドクエスト〕には参加する。今回はすまなかった』



 約束を取り付けられたからか、ルーキー共は前回それで留飲を下げた。しかし、廃人共は今回も参加をしなかった。ルーキー共は腸が煮えくり返るような思いだろう。


 件の言葉を発したエビふりゃーが前に出た。

 俺は奴が言う言葉を知っている。β時代からこういうことになった時、ずーっと俺やエビふりゃーが使ってきた言葉だ。


 エビふりゃーが息を吸い込む。

 ルーキーはどんな謝罪の言葉が出るのかを待ち、廃人共はどうでもいいと言ったような面持ちでエビふりゃーの背中を見た。




「それって何時何分何秒地球が何回回った時っすか~?????」






 口約束ほど信用できないものなどこの世にないのだから……。

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当作品はゴミ共の命によってモチベーションが賄われています。
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