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ゴミ溜めVRMMO記録  作者: どうしようもない
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記録.47『人として廃れた奴ら』

 

「いくぞぉ!」


「おー!」


 俺はボロの「戦ってる姿が見たい!」という我儘のもと、魔物ひしめくマップへと二人で足を踏み入れていた。

 魔物ひしめくと言っても、別に強い魔物はそこまで多くない。精々、苦戦するのは一、二種類とレアスポーンの魔物だけだ。


 俺は、ボロのマフラーを巻き直して、しっかりと手袋をはめ直させる。

 しっかり付けとけよ。霜焼けにでもなったら大変だ。

 抹茶に、暖かい付与魔法しっかり掛けて来てもらったか?ラミミがついて行ってたから、大丈夫だとは思うが…寒くはないか?


 俺は何度も何度も、確認を重ねる。

 もしも、ボロに何かあったら俺の監督不行き届きだ。ラミミはボロのセーターを編みたいそうで今日は俺達についてきていない。


 平気?本当に平気?我慢してない?寒くない?


「だいじょーぶ!」


 俺の心配症な問いに、ボロは嬉しそうにピースサインを作って答えた。

 もしも、寒かったり、帰りたくなったら言ってね?すぐに帰ろうね。


 俺はそう言いながら、《血液操作Ⅱ》を発動させた。

 そう、やっとこさ《血液操作》も進化したのだ。新しく得た能力は単純強力。


 身体の傷から取り出すプロセスを踏まずに、突然何もないところから俺の血液が出現するようになった。これは非常に良い進化だ。傷をつけなくていいから、一部噛み合わなかったスキルとのシナジーも上がるし、何より背後に出現させて攻撃するという奇襲も可能になった。


 俺はボロの目の前で突然血液を出現させる。

 それを見たボロは、きゃっきゃと嬉しそうに俺の血液に指を触れた。


 既に凝固した血液はカチコチで、予想していた感触と違っていたのかボロはすぐに触るのをやめてしまった。寂しい…。

 血液を取り出し、ナイフを構えた俺はボロに近づかない様にと何度も何度も釘を刺した後、戦闘を始めた。


 最初の何回かはボロも目をキラキラさせて見ていたが、やはり子供……!

 五回目の戦闘に入った頃には足元のフンコロガシを見つめてやがる…!あ、飽きるのが早いのよ!

 俺はどうにか振り向かせてやろうと色々と戦闘に工夫を凝らす。中国雑技団の様な事をしたり、血液操作で薔薇を作って、それを敵に投げつけたり、色々した。しかし、ダメ…!


 俺の心はぽっきり折れた。

 傷心の俺は、悲しみに包まれながら巨大樹に勢いよく寄りかかる。その時、寄りかかった小さな衝撃で巨大樹の大きな枝に乗っていた雪が、俺のいる場所へと落下―――!


「きゃ――――――!!!」


 甲高い悲鳴を上げて、俺は雪の中に埋もれた。

 や、やばい…!で、出られない…!重すぎる…!くそ、雪の分際でぇぇぇ!!北海道民はこんなのをいつも平然と片しているのか…!尊敬するわボケ!


 どうにか顔だけを雪の塊から脱出させ、血液腕を成形する。そして、雪を掻く。しかし、掻いても掻いても上から雪が落ちてくる。くそっ…!これじゃ鼬ごっこじゃねぇか!


「ルー!へいきか!?」


 やっとこさ俺のやばい状況に気づいたボロが、雪に足を取られながらもこちらに向かってくる。あー、可愛いねぇ。


 平気平気。

 でも、出来れば誰か呼んでこれるか?ここから来た方へ帰ればすぐに〔サイショ〕の街に着く。今日は一段と雪が深いからな。エビふりゃーやら、廃人共も環境ペナルティを喰らってまでも外には出たくないだろうからな。


 俺の飄々とした口調にボロは安心したのかほっと息を吐く。


「まかせろ!」


 そして、そう言って雪の中を走っていくのだった。しかし、途中で何故かこちらを振り返る。どした?


「飛んでいーい?」


 んー、良いぞ。

 ただし、少しでも人がいたり、街が近づいてきたら歩くように。出来るか?


「うん!」


 そう言って、ボロは低く浮かび上がり、街へ向けて飛んで行った。


 よし……

 俺は耐えなきゃな…。

 ボロにああは言ったものの、雪の冷たさと重さは脅威だ。現に俺は少しずつ体力が奪われている。衰弱するのも時間の問題だ。あんまし体力も使いたくない。


 俺はフレンドリストを開いて、ボロとは別に救援メッセージを送ろうとする。しかし、



 〔現在、フレンドシステムのメンテナンス中です。終了時刻は16:45を予定しています。プレイヤーの皆様にはご迷惑をお掛けします〕



「くそが…」


 なんてタイミングの悪い…。

 俺は運営を呪った。こういう一番必要な時に限って、大体こうだ。狙っていやがるのか?ゴミ運営共が。


 俺は、埋もれた身体をどうにか雪から脱出させようと必死に体をくねらせる。死にたくない…!



 ◇■◇


 ボロは〔サイショ〕の街に着くと、急いで終着駅のギルドハウスに向かった。


「あれ?ボロちゃんじゃん。保護者のごみ溜めはどうした?」


 終着駅のギルドハウスに顔パスで入ったボロは、廃人の一人と出くわす。廃人は、不思議そうな顔でボロを見ながらそう言った。

 ボロは切羽詰まったように言う。


「まちゃとエビはどこ!?」


 ボロは人見知りをしない。

 しかし、他人の持ち得るポテンシャルも知らない。だからこそ、目の前の顔見知り程度の廃人を頼るのではなく、ボロが知っている確実に強い二人に状況を伝えるべきと判断した。


「あー?抹茶とエビふりゃーか。抹茶は出かけてるが、エビふりゃーならそこの角を曲がって、まっすぐ行ったとこの一番奥の部屋だ。案内しようか?」


「だいじょぶ!」


「あいよー」


 いそげ!いそげ!

 ボロは、廃人の言葉を聞いてすぐに走り出す。早くしないとルートが死んでしまう。それだけは避けなければいけなかった。しかし、ボロは一つ忘れた事を思い出し、振り返る。


「ありがと!」


 廃人へのお礼。

 ルーはいつも言ってた!一日いちまん回、かんしゃのせいけんづき?は出来ないから、しっかりお礼をしようねって!


 ボロは、ルートの言葉を思い出す。


 廃人は、ボロのそのお礼の言葉を聞いて、嬉しそうに返事を返した。


「おー!」


 そうして、ボロはエビふりゃーがいるという部屋の前に辿り着いた。数秒も置かず、扉をぶち開ける。そこには、


「加速する未来、おれが………ぇ?…ルートんとこのちみっこ?」


 エビふりゃーは疑問一杯というような表情を浮かべながら、そう言った。しかし、ボロはその疑問を解いてあげられるほどの時間がない。すぐに本題を言った。


「ルーを助けて!」


 それを聞いた瞬間、エビふりゃーの頭にぴきーんと電流が走る。


「あい、分かった。一応他の奴にも言っとけ。今の時間なら噴水広場でプロペラが紙飛行機でも飛ばしてるはずだ」


 エビふりゃーは迅速に、ボロへとそう伝えた。

 ボロはすぐに頷き、そちらへと走っていった。一人残された部屋で、エビふりゃーはホットミルクを一飲みした。


「ふぅ…」


 エビふりゃーの息が洩れる。

 そして椅子に座り、窓の外を見た。外は雪が少しずつ降り始めた。しゃんしゃんしゃん………エビふりゃーの頭には、ルートがこの時期によく歌う下手くそなジングルベルが流れていた……。


「…寒いし、いかなくていいや。場所聞くの忘れたし…」


 ズズズ……

 ホットミルクをすする。マグカップの底に砂糖の塊が固まっているのが見えた。


 エビふりゃー、動かない…!

 人としての矜持、消失…!加速するゴミ加減…。





 廃人とは、言い得て妙である。


 ◇■◇


「プロペラ―!」


「んー?あ、ボロちゃん。どうしたの?」


 プロペラはボロを見つけると、しゃがんで高さを合わせながら話しかけた。


「ルートが死んじゃう!」


 ボロがそう言うと、プロペラは首を傾げた後に、右手をぐーにしてポンと左手の平に置く。そして、ニコニコと笑顔のまま、ボロへと言った。


「分かった。それじゃ、ここで少し待ってて。すぐに人が来るからね」


 プロペラはそう言うと、立ち上がって紙飛行機に何かを言う。

 すると、その言葉は淡い翠色の風となり、紙飛行機の中へと入り込んでいく。紙飛行機は翠の光を放ち、プロペラの手から離れてどこかへと飛んで行った。


「ごめんね。今、フレンド機能が使えないから、古典的な連絡手段になるんだけど」


 そう言って、プロペラはボロの頭を撫でた。

 そしてベンチの雪を払い、そこにハンカチを置く。プロペラはボロの脇に手を入れて、その小さな体躯を持ち上げると、ベンチに座らせて、温かいたい焼きを渡した。


「ごめんね。僕は先に行ってるよ。ダスト君のとこ」


 そう言うと、プロペラはボロから離れていった。




「ぐっ…がッ……ア…ッ!!」


 少し離れた裏路地で、プロペラは吐血した。

 ぼたぼたと真っ白な地面に赤い斑点が出来る。荒い息が、白い空気を作って、霧散していく。


 プロペラは上を見上げる。

 ちらちらと雪が視界に映っては消えていく……。


「そっちにいくよ…ダスト君…」


 プロペラの体躯は浮き上がる…。

 彼は、静かに、ゆっくりと、光を浴びながら空へと上がっていった……。





 廃人とは、言い得て妙である。(二回目)


 ◇■◇


 ボロはそわそわしながら、ベンチでたい焼きを頬張っていた。

 ルー、平気かな?寒くないかな…?死んじゃわないかな…?一回戻ろうかな…?


 数多の選択肢がボロの頭の中を巡る。

 しかし、プロペラはここで待っててと言っていた。友達の言葉を信じられないほど、ボロは酷い奴じゃない。

 うずうずとする気持ちを必死に抑えて、ボロは待った。すると、


「あなたがボロちゃん?」


 そんな声が聞こえ、ボロは顔を上げる。


 そこには、黒いチャイナドレスみたいな服を着た美女が立っていた。

 ボロは、そんな彼女を見て、数秒見惚れてしまったがすぐに正気を取り戻した。


「うん!」


「そっか~。んじゃダストっちの場所教えてもらえるかな…?」


 その言葉には、酷く艶めかしい何かが見え隠れしていた。

 しかし、ボロにそんな事気付けるはずもない。


 彼女の持つくしゃくしゃの紙から淡い翠の風が洩れる。その風が、小さな音でこう囁いているのだった…。


『きつねさん、ダスト君死んじゃうらしいから、資源として有効活用してあげて。噴水広場……』



 ルートの死を内包する者と、ルートの生を願う少女―――。

 会わせてはいけない二人が出会う…。




 廃人とは、言い得て妙である。(二度ある事は三度ある)

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当作品はゴミ共の命によってモチベーションが賄われています。
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