記録.25『ロリコン達の聖戦』
〔Congratulations!〕
〔フォレスティアシープを倒した!〕
〔システム〔スクリーンショット〕が解放された!〕
〔システム〔プレイヤーランキング〕が解放された!〕
ほ、本当に迷惑かけてすんません……
俺と決戦兵器は廃人共を前に平謝りを繰り返した。
ヘルプコールとメッセージで事情を伝えると、廃人達は我先にと事件現場へと駆けつけてレイドバトルが始まった。
〔フォレスティアシープ〕は廃人共を前に何も出来ずに死んでいった。
なにせ奴の強みは花粉を吸わせる事と、その巨体を生かした攻撃だ。そんな単調な攻撃を廃人共は容易く攻略する。
花粉があるならば、風の魔法で吹き飛ばせ。
身体がデカいなら、当たるな。
周りの蔦がウザいなら、班を分けて除去に回れ。
脳筋理論は結局最強なのだ。
風魔法を使えるプロペラが途中離脱をしなければ俺達はもしかしたら四人で攻略できたかもしれねぇ。そう思うと腸が煮えくり返る。奴さえ…奴さえしっかりしていれば……
しかし、その怒りはプロペラのどうしようもなさを思い出すとスン…と収まった。俺の母性が「プロペラ君ならしょうがないよ!」と囁くのだ。現実なんてしょうがない事ばっかりだ。
そうして俺達は、無事街に辿り着いた。
街の名前は〔シンリン〕。
へへ……中々良い名前じゃねぇか。俺達は最早名前については諦めていた。下ネタ以外の名前全てを許容しよう。
俺は〔シンリン〕の転移門で〔サイショ〕の街に転移し、ボロを連れてくる。さ、一緒に家選ぼうね。
「ルー!元気だったか?」
ボロはそう言って、俺に抱き着いた。
おー、元気だったよ。元気元気。
俺はボロの手を握ると〔シンリン〕の街を共に歩き始めた。
〔シンリン〕は至る場所に巨大な樹木が生えている。そして、家を巻き込む様に木が生えていたり、木をくり抜いて家が作られていたりと中々に自由な街だ。
一応ララに新しい街が出来たため、闇市の場所を探しとこうかと聞いたが〔コウザン〕以上に鍛冶師にとって住み心地の良い場所が出るまでは、闇市の総本山は〔コウザン〕で良いらしい。
ボロが俺の手を離れ、出店したばかりの食べ物の屋台の前で嬉しそうに飛び跳ねる。
「おお、ちっこいの。なんか買うかい……ってごみ溜め…てめぇのツレかよ…」
料理系プレイヤーが俺を見て、嫌そうな顔を浮かべた。
なんでだよ、別にいいだろ。
「お前値切りすぎなんだよ。口コミサイトで要注意人物になってたぞ。もうβテストの時とは違うんだ。自重をしろ」
俺は溜息をついた。
ったくよぉ。どいつもこいつも甘いんだよ。ルーキーから物資を搾り取る事は世の中ゲームの基本だろ?そうやってルーキー共は不条理を覚えるんだよ。んでもっていつかは俺達みたいなゴミと化す。そういう循環が出来上がっている。
そうだろ?
お前だってそのクチだ。
勿論、俺だってな。いろいろなゲームで散々騙されたさ。軍手を盗まれて、はちみつ詐欺されて、ゲンガーは帰ってこなかった。
俺達は搾取し、搾取されるんだ……。
そうやって、俺達ゲーマーは生きている…そうだろ…?
醜い生き物達……
◇■◇
たい焼きを頬張る俺とボロ。
俺は頭から食う派だ。カリカリのしっぽの方が断然美味いんだから後に食うに決まっている。
ボロも潜在的な尻尾は残す派だった。この子の食べ方は、まず半分に割って先に頭の方を食べる。その後に尻尾側を食べる。
珍しい食べ方だが、悪くはねぇ。
たい焼きの食べ方ひとつで、人間性は計り知れるってもんだ。尻尾を最後に残して食う奴は基本良い奴だ。そうだよな?ボロ。
「んー?……んー」
ボロはたい焼きに夢中だ。
ごめんね。まだ食べてるのに声かけて。
口一杯にたい焼きを頬張るボロの後ろを俺はついていく。
家っつーのは中々やっぱ決まんないもんだ。幾つか良い家は既にピックアップしているが、それでも決まらない。
俺は食べ終わったボロの口元を拭いて、水を渡した。
こくこくと喉を動かしているボロを尻目に、俺はふと視線を感じた。
誰だ…?
今、誰か俺達のことを見ていた…。一体何目的で…。ま、まさか…!
俺は咄嗟に水を飲むボロを見る。
ば、バレたのか?ボロがプレイヤーじゃないってことに…!い、いや、そんなまさか、あ、ありえるのか…?確かにプレイヤーにしては幼すぎる…。しかし、RPをしている連中は大量にいる…。
それこそ救えない業を背負ってRPしている者なんてごまんといる。
俺は辺りを睨み付け、警戒する。
そして気付く……
鼻息荒い抹茶が路地裏からこちらを凝視していることに……
「はぁ、はぁ、はぁ……可愛いよぉ…好きだよぉ、ボロちゃんんん……」
「………」
抹消対象だ。俺の中のドミネーターが起動する。
俺は、奴の姿がボロに見えない様に対角線上に立つ。教育上、ああいったものをボロに見せる必要はない。蝶よ花よと育てようとは思ってはいないが、あまりに教育に悪いものは排除すべきだ。
俺は奴にメッセージを送る。
〔ルート:消え失せろ〕
メッセージが届いた瞬間、抹茶はビクリと震え、辺りを見回した。
そして、メッセージを呼んだのかこちらをキッと強く睨む。俺も睨み返す。
あの女、自分がボロの保護者だと勘違いしてやがるのか?ふざけやがって…。ボロはうちの子だ。うちで俺が優しい子に育てる…。奴の手は必要ない…。
俺は睨みながら、奴に向けて親指を下に向けた。
奴はそれを見て、中指を上へと向けた。
「ロリコン野郎が」
酷く低い声でそう呟くのを俺は聞いた。
ふん……、そんな安い挑発に俺が引っかかると思ってるのか…やっぱお頭が弱いな…
俺は、一目散に抹茶の元へと駆け出した。
「死に晒せよやぁぁぁぁああああああああ!!!!!」
ロリコンは一般日本人男性の基本性癖だ。
男は皆、そこに付け足すように己の性癖を付け足していく。そして、いつしか皆オプションとして付足した性癖で、元々持ちえたロリコンという基本を失っていくのだ。
だからこそ、俺はロリコンを罵倒されることを許さない。
ロリコンは種族値だ。
ロリコンはルーラだ。
ロリコンはスタミナだ。
世界のロリコン共の思いが、俺の胸に灯る。
ケツイが満たされ、俺は優しい気持ちになる。しかし、もう戻れない。数多を殺してきた俺に残された道はたった一つだ。
血液で作った針を奴に向けて投擲する。
奴はそれを大きな杖で防ぎ、同時に自分へと付与魔法を掛ける。様々な光が抹茶へと纏わりつく。
奴のプレイヤーとしての強さは、魔法起動の速さだ。
奴ほど魔法を早く発動できる者は数少ない。正直、そのPSは目を見張るものがある。俺も見習いたいと常々思う。
だがな、てめぇの癖は知っているんだよ…!
抹茶はどんなに頑張っても接近戦の小手先技術は俺達接近職に劣る。一度捕まれば、レベルの差で俺が大敗するが、それの前に決めればいい話だ。
奴は戦いの初め、必ず”右の大振り”をする。言ってしまえば、劣化爆豪君だ。
何が来ると分かっていれば対処は出来る。
俺は右の大振りをすぐに防ぎに来れる範囲に血液盾を準備し、奴に突っ込む。大振りで空いた右っ腹にどでかい一撃をくれてやる…!
奴は案の定、真っ赤な光を腕に携え、思い切り腕を振ってきた。俺はそれに合わせ、血液盾を出現させる。終わりだぁ!劣化版爆豪がぁぁぁ!
しかし、俺は舐めていた。
廃人の力を。廃人共の絶え間なき修練を……
ばきん、と嫌な音が響く。
俺はその音を聞いた時、何も考えられなかった。そして、時間が圧縮される感覚を覚える。その圧縮時間の中で、理解した。
血の盾が、割られたッッッ―――――!!!
しかし、理解をしても体は動かない。俺は強化されまくった奴の右の大振りを受け、圧縮時間の終わりを知った。
俺の顔は、胴体からもぎ取られた。
もぎもぎフルーツと化した俺はせめて一撃を、と停滞させていた血液腕を抹茶の空いた腹に突撃させた。
そして、俺達は二人とも牢屋へと転送されるのだった……。
ボロちゃん……すぐにここ出るから大人しく待っててね…!




