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ゴミ溜めVRMMO記録  作者: どうしようもない
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記録.21『隠匿者』

 

 俺とプロペラと決戦兵器は洞窟倒壊の件でしこたま怒られた。

 まあ、しゃあないよな。中にも色々珍しい魔物いたっぽいし、なにより未踏破地帯がほとんどの手つかずだった場所だ。

 あそこをもう一度探索できるようにするには、一体どれくらいの歳月が掛かるやら…


 俺はそんなことを思いながら、一人の女性プレイヤーに声をかけた。


「おーい、おっはぎーん!」


「あ、ごみ溜めさん!」


 ぱあ、と表情が明るくなったこいつの名は『おはぎ』。

 闇金に借金をして自分の店を手に入れた図太い奴だ。しかし、借金をするくらいだ。自分の作る菓子に自信があるようで、現に俺はこいつに胃袋を掴まれている。もう、離さないで…!


 しかし、それでもおはぎの店は赤字だ。


 その理由は分かってる。

 こいつ、販売価格が安すぎるのだ。確かにこいつの店は、安い美味いが揃い踏みの神みてぇな店だ。しかも、おまけまでつけてくれるとなっちゃ、もうやばい。


 ただでさえ、団子やら羊羹やら原材料が高い物を使っているのに、客にいい顔しちゃ黒字にもなんねぇさ。


 俺は、この店を愛しているからこそ、奴に苦言を呈した。


「おはぎよぉ、もうちょい価格高くしようぜ?おまけも減らさねぇと借金返せねぇだろ?一緒に考えてやっからよぉ、な?」


 その提案に、おはぎは悲しそうな顔をした。


「…で、でも…せっかく好いてくれるお客さんが増えてきたのにここで値段上げても平気なんでしょうか…?おまけだって、有難いからこそつけてあげたいですし…」


 ………か―ッ!!!!

 こ、こいつ…いや、この子…いい子過ぎる…!

 こんな子、どこ探しても滅多にいやしませんよ。俺のゲームで荒んだ心が浄化されていく。最近はルーキー共もゴミ化してきた。しかし、未だこんな絶滅危惧種のような子も生きているのだ。


 俺は、こういう子供達を保護して生きていきたい…。


 そして、俺は思いついたのだ。

 価格を下げず、おまけも減らさず、誰もが幸せになれる方法を…。



 ◇■◇


「ララ、闇金から金借りてるおはぎっつープレイヤーの借金、無かった事にしてくれねーか?」


「?いーよ?」


 飴を転がすララは、俺の膝の上で俺が愛用する〔血のナイフ〕を弄りながら、そう言った。


 ララは闇界隈を取り仕切るドンだ。

 ちょっと前までは闇市で頭を張っていただけの筈だったのに、いつの間にか闇世界全てを牛耳る幼女になっていた。

 この子の成長率半端ないね。


 あまりの呆気なさに俺は拍子抜けする。

 ほ、ホントにいいのか?無くしてくれるのか?本当に?


「ほんとだよ」


 Reary?マジ?ガチ?


「りありーまじがち」


 まさかこんな簡単にいくとは俺も思ってなかった。

 お前はいい子だなぁララ~。本当に可愛い奴だよぉ。ういうい。


 俺はララを撫で繰り回し、頬をつつく。

「きゃー♪」と嬉しそうに暴れるララ。しかし、暴れるそれに全く力が籠っていないので、俺に為すがままにされている。


 俺は逆に申し訳なくなってララに言う。


「いやー、なんか悪いなぁ。俺に出来る事あったら言えよ~」


「あ!じゃあわたしのいうこと、なんでもいっこだけきいて!」


 ん~?

 いいぞぉ。言ってみろ~。

 俺が出来る範囲なら何でもしてやるよ。ほれほれ、願い事を申してみろ。


「ん~、いまはつかわない!とっとく!」


 ………そうか。

 そこはかとなく、嫌な予感が胸に到来する。

 いや、しかしララに限って俺に地獄のような酷い事をさせるはずがない。きっと、ああ。きっと大丈夫だ。


 得も言えぬ嫌な予感は過ぎ去らない。

 結局ララと別れるまで、その嫌な予感が払拭される事は無かった。



 ◇■◇


 ある日、運営共は公式サイトでとある爆弾を投下した。


 その爆弾は、一枚の画像だった。

 その画像には様々な文字列が並んでいる。


 そして、その画像の名前は『職業別人数リスト』だった……。


 情報隠匿者たちを炙り出す、醜い戦いの幕が開けた―――!





 そのリストには、見慣れない職業名が幾つかあり、その横にプレイヤー実数値が記載されている。例えば〈戦士〉ならば、その数は膨大な量になる。

 しかし、マイナーな職業、レアな職業となるとその実数値は一気に減少する。


 既に職業バレをしている決戦兵器の職業、〈決戦兵器〉ならば実数値は”1”だ。

 これは当たり前だ。寧ろ、こいつ以外に決戦兵器がいたらキャラ被りすぎて笑いが出る。



 エビふりゃーが〔サイショ〕の街で情報隠匿者共を炙り出す為の演説を行っている。


 ちなみに、未だに情報が出ていない実数値が十以下の職業は、



 〈仇なす者〉

 〈禁忌に触れる者(アンノウン)

 〈翔ける者(ジャンパー)

 〈恐怖達(スケアリーズ)

 〈怠惰〉

 〈断罪者〉

 〈治癒天使(ナイチンゲール)

 〈騒音(ノイズマン)

 〈不運の渦(バッド・ラック)

 〈(ベーシック)

 〈暴食〉

 ※五十音順



 以上の11職業達だ。

 俺の職業である〈教唆者(アジテーター)〉も実数値29と非常に低かった。しかし、俺は追い掛け回されるのは御免なので早々に白状した。


 んでもって俺と決戦兵器は、互いに顔を見合わせる。

 ちょっと困ったことがある。

 それは、プロペラのことに関してだ。


 俺はプロペラに目の前で職業進化をされた。そして、ユニークを得たところも目撃している。決戦兵器も薄々感づいているのだろう。

 プロペラの元職業は〈駆ける者(ランナー)〉だ。そして、情報が出ていない職業の中には、それと同じような職業、〈翔ける者(ジャンパー)〉がある。


 これは、恐らく確定だ。

 プロペラの職業は〈翔ける者(ジャンパー)〉だ。

 しかし、俺も決戦兵器も助けてくれた奴の情報を売るほど腐っちゃいない。


 それに俺はもう一人、目の前で職業進化した男を知っている。

 その男の名は、エビふりゃー。

 今、前に立って演説をするあいつだ。あいつは、どうやら仲間内には〈戦士〉の正当進化先の一つである〈狂戦士(バーサーカー)〉であるとのたまっている。


 そんな訳あるか。

 正当進化の場合、強制的な職業進化は訪れない。しっかりと選択肢として出現し、選び取ることが出来る。


 しかし、奴の場合は違った。

 突然進化しやがったのだ。それにユニークまで引っ提げて。

 あいつの職業は〈狂戦士(バーサーカー)〉なんかじゃあない…。


 エビふりゃー……てめぇのその舐め腐った姿勢……俺が矯正してやるよぉ…ひひひ…!




 その自信はどこから?私は虚無から!

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