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ゴミ溜めVRMMO記録  作者: どうしようもない
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記録.17『アシタカへと至る道』

 

「俺に勝てると思っとんのか~~~~!!!!」


 簀巻きにされた俺はそう叫んだ。


 掲示板システムが解放されたばかりの頃、俺が殺したルーキー共が、俺を殺す算段をわざわざ俺のスレで話し合っていた。

 俺だって馬鹿じゃない。

 興味無い振りして自分のスレは流し見で確認しているし、ルーキー共が俺を襲った時の為にフレンド共にも協力を仰いである。なにかあれば助けてください…と。


 大量のルーキー共は、瞬く間に俺を取り囲み、そのまま俺をリンチした。このゲームに優しさはない。あったとしても、周りのゴミに呼応して、純粋だった心は少しずつ摩耗する。


 その為、初めは優しく、マナーが良かったルーキー共も今や簀巻きの俺を囲んで嘲笑している。くそっ……エビふりゃー君さえ…エビふりゃー君さえいれば…お前らなんか…!


 俺はルーキー共に簀巻きにされた身体をもぞもぞと動かし、メニューバーからフレンドリストを持ってくる。そして、ありとあらゆる連中にメッセージを送信した……。



 〔ルート:助けてください。今、シンガポールにいます〕



 私の作るこの地下鉄も、きっといつか、誰かの青春を乗せるから……!


 ◇■◇


 〔エビふりゃー:忙しい〕

 〔空の人:ごめん、ちょっと行けそうにない〕

 〔きつね:自業自得じゃな~い?〕

 〔ララ:しんがぽーるたのしい?わたしもいきたい〕

 〔抹茶:手が離せま〕

 〔ぺろりん:すいません…今クエスト中でして…〕

 〔ラック:ごめんね…シンガポールには行けないや…〕


 は、薄情者どもがッ!

 あいつら…!俺のことを見捨てやがった…!


 くそ…くそ…くそくそくそっ!


 俺は必要最低限の食事を与えられて、どうにか生き長らえている。

 こいつらはなぜか俺を殺さない。しかし、一体なぜ…?


 こいつらの目的は”俺への復讐”だ。

 でなければ、俺相手にわざわざこんなことしないだろうし、時間の無駄だ。現に殺されないからと言っても、罵倒は浴びせてくるし、嘲笑もされる。


 俺と仲の良いルーキー幾人かがこの計画には紛れ込んでくれていたようで、その内の一人が丁寧に俺の口に食事を運ぶ。

 これが、俺とは全く仲が良くない復讐したいだけのゴミだったならば、喉を噛み千切るくらいのことはできるのに…。


 身体が動かせないから、俺の身体に傷もつけられない。《血液操作》を使うにはどんなに小さくても良いから傷が必要だ。今までは常に小さな傷を体のどこかに作っておいた。今回捕まった時だってそうだ。

 だが、こいつらは俺への復讐計画を立てるくらい用意周到だ。

 俺を簀巻きにした後、びちゃびちゃとポーションを掛けられた。見えにくい場所につけておいた傷は瞬く間に修復されてしまった。


「噛めますか?」


 そう言ってルーキーの一人が干し肉を口へと運ぼうとする。

 あー!噛み切れなそうだなぁ!もののけ姫みてぇに噛んで柔らかくしてくんねぇかなぁ?


「ええ……なにこの人…」


 ルーキーは俺の要望に困惑する。

 そりゃそうだ。こいつが女ならまだしも。こいつは男だ。しかもバリバリの筋骨隆々。


 しかし、何も悪いことじゃねぇだろ?

 爪の垢を煎じてのみゃ、そいつの良いところが引き継げるかもしれねぇ。それと同じだ。人の唾液飲んで俺はお前の筋肉を貰いてぇよ。


「いや…キャラメイクの時…体格決めれたじゃないすか…」


 キャラメイク適当だったんだよ。

 なあ、くれよ。お前の噛んだ干し肉くれよ…!


 その肉体を俺に分けてくれよ……




 アシタカの成り損ない……。


 ◇■◇


 その日の夜、ルーキー共が簀巻きにされた俺のいる洞窟へと入ってくる。


 そこには……、


「なっ!……し、死んでる…!」


 口から泡を吹き、白目を剥いて息をしていない俺の姿があった…。



 ぴかっ!どんがらがっしゃーん!(セルフ落雷SE担当:ルート)




 ルーキー共が話し合っている上で、俺は自由になった身体を堪能していた。具体的に言えば、幽霊だがこの幽体状態、非常に動きやすい。壁はすり抜けられるし、いつもうざいと思っている誰かを、バレずに罵ることもできる。出来ない事と言えば、ハラスメント行為に該当する行動が一切できなくなることくらい。スカート覗き…女湯覗き…まあしゃあないさ。いつか覗ければそれでいい。


 俺が自由に飛び回る中、下のルーキー共は容疑者を絞り切ったようだった。


 容疑者①

『バル』

 昨日の俺の食事係を担当した筋肉質のルーキー。

 俺とは仲が良い。ぺろりんとも面識があるようで、話しているところをたまに見る。

 容疑:食事担当だった為、毒を入れた可能性がある


 容疑者②

『なごなご』

 女のガワを被った男、ネカマだ。

 こいつの罵りは、かなりストレートタイプで気持ち良かった。しかし、ただそれだけで深く関わったことはない。

 容疑:今日のアリバイが一つもない


 容疑者③

『決戦兵器』

 その名の通り、身に決戦兵器を装着するいささかやばい奴だ。

 というかこいつはルーキーではなく、廃人組の一人だ。製品版になって遺跡で遊んでたら、呪われたとこいつ自身から聞いた。その時にプレイヤーネームまで変更されたらしく、一時期は大分凹んでいた。元気になったようで良かった。

 容疑:なんか全身に(おびただ)しい量の血ついてますけど……




 薄暗い洞窟、降りしきる豪雨、鳴りやまぬ轟雷、誰もが被害者に恨みを持っていた…。誰がやっていても、何らおかしくはない…。


 今…一世一代の推理合戦が幕を開けようとしていた……




「ぎゃあああああ!」


 その瞬間(とき)、外から悲鳴が聞こえた。

 ルーキー共は何事か、と俺の遺体を放置しそちらへと向かう。なんだよ、なんだよー。今いいとこなのにさー。俺はぶつくさと文句を言いながら、そちらへと飛んでいく。


 そこには洞窟の前に立っていたと思われる門番二人が、血だまりを作って倒れこんでいる。

 こ、これは…一体何が…。


 動揺する俺達。


「や、やってられるか…!俺は自分の部屋に戻らせてもらうぞ!」


 そう言って、一人のルーキーが洞窟内に走っていく。


「あああああああ!!」


 すると、数秒も経たない内に洞窟内から悲鳴が上がる。

 ルーキー共は嫌な予感を胸に携え、悲鳴が上がった洞窟内へと戻る。そこには、何者かに切り裂かれたルーキーの変わり果てた姿があった…。


 その傷口をはっきりと目視した途端、決戦兵器の様子がおかしくなっていく。背中についた蒸気機関が頻りに煙を上げ、ガコッ、ガコッと何かが外れるような音が奴の胸から鳴り響く。足はたたらを踏み、少しずつ後退していく…。


「あ、あ、ああ、あああ」


 決戦兵器の口から言葉が洩れる。

 そして、それを怪訝に思ったルーキー達が決戦兵器に声を掛けようとする。その瞬間―――、




 ルーキー達の頭と胴体が、分離した。




「……え?」


 くるくると視界が空中で回転する。

 一番最後にルーキー共が見たものは、自分のものだった筈の己の身体が、地面へと倒れこんでいく姿だった。



 ◇■◇



 ―――血飛沫が舞う。


 がたがた、と決戦兵器が小刻みに震える。


「ま、まってくれ…。わ、わざとじゃないんだ…たまたま、そう偶々だったんだ…!」


 そう言い繕う決戦兵器。

 その醜い姿の前に、小柄な人影が佇んでいる。

 その手には、小さな背丈とは比べ物にならないほどに大きな大剣が握られていた。


「じゃあ、かえしてあげれる?」


 そう言った彼女に、決戦兵器はコクコクと首が取れる勢いで上下に頭を振る。


「そっか、でもね……いちど()()()んだから、ばつがひつようだよね」


 そう言って、彼女………ララは大剣で決戦兵器の腕をちょん切った。


 は?え、え?

 太刀筋が見えなかった。振った残像すら見えない。決戦兵器も何も見えなかったのか、腕に突如生まれた衝撃に困惑する。そして、やっと己の腕が切られたことを実感したのか、息遣いが荒くなる。


 ララは淡々と決戦兵器を追い詰めた。

 もう一本の腕を斬り、二本の足も断ち切った。

 気付けば、決戦兵器は達磨になり、何も出来なくなっていた。


「はあ…はあ…はあ…く、そがあああああああああ!!!!」


 やけくそになり、決戦兵器は己の胸にあるコアから一世一代のビームを放射した。しかし、ララはそれすらも斬った。


「は、はは」


 笑いが零れる。

 決戦兵器はそれから数十秒もせずに死んだ。

 幽霊となった決戦兵器が同じく幽霊の俺を見る。



 …きっとこいつは、魔が差してしまっただけだ。

 俺を殺したのだって、さっさと殺して楽にさせた方がいいだろう、というこいつなりの不器用な計らいだったはずだ。しかし、偶然にもドロップしてしまったのだろう。


 ―――〔Unique・Skill〕、《血液操作》が。


 ユニークはプレイヤーからドロップした際、そのドロップを受け取るか、受け取らないかを選べる。受け取れば、元々の持ち主のユニークは消失する。受け取らなければ、ドロップしたという事実自体が消え、持ち主のユニークも消えない。


 そこからも分かる様に、運営でさえもユニークはスキルの中でも特別扱いしているのが見て取れる。


 魔が差しても、仕方がないのだ。

 ユニークは夢のようなスキルだ。持っているだけでちやほやされるし、それに強い。


 だから、偶然でもドロップしてしまった()()を、決戦兵器は懐に仕舞い込んでしまった。


 幽霊となった決戦兵器は、自分の心臓から光る塊を俺に差し出す。

 俺はそれを受け取り、自分の心臓に仕舞い込んだ。どくん、と心臓が脈を打つ。ステータスを開けば、そこにはいつも通りの俺のスキルが広がっていた。何一つ欠けていない、俺のスキルが。



 俺は、立ち惚けるララを見る。

 すると、ララもこちらを向いた。

 幽霊と人間。見えていない筈だが、俺達は見つめ合った。



 俺は懐から飴を取り出し、ララに見せる。そして、口パクで言うのだった。



 これ食うか?



 飴を差し出した俺の横をララは通り過ぎていった。

 ただ一人、洞窟で飴を差し出し続ける俺は、静かに飴をしまった。



 て、てれてるのかな…!!?!?!?!?



 一人の男が、顔を真っ赤にしてそう言った。




 勘違い男……爆誕…!


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当作品はゴミ共の命によってモチベーションが賄われています。
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