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ゴミ溜めVRMMO記録  作者: どうしようもない
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記録.15『もうやだこの人』

 

 俺と一部の廃人達が操作不能となり、しばらくの時間を無駄に浪費している間に、待ちに待ったアップデートが遂に為された。


 運営は自慢気にTwitterでアップデート内容を告知する。


 そのアップデート内容は以下の通りだった。



 ・職業システムの追加

 ・シーズンパスの追加

 ・〔Skill〕の追加・一部修正

 ・ボスの追加・一部修正

 ・街の追加

 ・〔遺失の欠片(オーパーツ)〕の追加・一部修正

 ・致命的なバグの修正



 俺達は運営を褒めることはしなかったものの、心の中ではそこそこに運営を讃えた。どうやら、最近の運営は一味違う。日本サーバーに襲撃してきたときは終わりだとさえ感じたこの運営達も、やればできる子だったらしい。


 俺はワクワクしながらログインした。

 すると、ゲーム内にもアップデート内容の情報がポップアップされる。俺はそれをどかして、適当に街を散策する。


 やはりというべきかプレイヤー共は浮足立つようにそわそわしている。そりゃそうだ。俺だってちょっとドキドキしてるんだ。


 とりあえず俺は職業システムとやらを見に行こうと、専用の施設に足を運び――――、


「なあ」


 突然、背後から声を掛けられる。

 こ、こいつ…!俺の背後をこうもやすやすと……!キエエエエエエエ!


 何の前触れもなく、後ろに立たれた事実に耐え切れず、俺は奇声を上げて背後を振りかえる。そこにはニコニコ顔のエビふりゃーがいた。なんだ、こいつなら背後とられても仕方ねぇや。で?何の用?


 俺は今気分が良い。

 優しい気持ちでエビふりゃーに問いかける。すると、奴は笑顔で言い放つのだった…。


「新スキル、取り行こうぜっ!」


 その言葉を拒否する権利は俺にはなかった。

 暴れる俺をエビふりゃーは首根っこを掴み、ずるずると引きずって行くのだった……。タスケテ…



 ◇■◇


「え、ダストっちまだ職業ついてないの?」


 おお、そうなんよ。

 だから俺はさっさと誰かがスキルとって、「わぁ~、こんなスキルなんだぁ~」ってなって、早く職業取りに行きたい訳。


 〔コウザン〕の街のさらに地下。

 そこには大きな洞窟がある。壁一帯は露出する鉱石によってきらきらと光り輝き、土竜型の魔物がうようよと俺達を取り囲む。


 その瞬間、エビふりゃーがリヴァイ兵長みたいな回転斬りで、ほぼ全てのモグラを斬り殺す。俺は運よく生き残った土竜さんを殺しにかかる。まてまて~。


「職業すごく良いよ~。補正が大きいの」


 へぇ、そりゃいいや。

 狐面、お前は何のジョブとったんだ?


「私はね~、〈魔導士〉!魔法使うと+補正のるんだ~」


 るんるんと嬉しそうに話す狐面を見て、俺は羨ましがった。

 俺も欲しいなぁ…

 就きたいなぁ…職業…


「これ終わったら取り行けば~?一緒に行ってあげよか」


 マジ~?

 良い奴じゃーん。フールのくせによぉ。


 俺は狐面の言葉に感動する。

 最近、俺とこいつの間には色々とあった。しかし、少し経てば元に戻る。ゲーマーってのはそんなもんよ……。うん、そんなもんだよな…信じていいんだよな。


 一抹の不安を残し、俺は土竜を狩り続ける。


「ってかさぁ、ダストっちがよく使う”フール”ってなんだろ~って思って調べたら、道化って意味らしいね~」


 いや、わざわざ調べんなよ。

 そのくらい知っとけって。

 そう言って、俺は土竜共の猛攻を受けて死にかける。ヒーラーがゴリ押しで回復をし、俺は血液爆発を巻き起こして、どうにか土竜共を一掃した。


 ってか、ホントにこいつから新スキル出んのかよー。

 さっきからなんも出ねぇじゃねぇかよ。


 最初の方は《空間把握》やら《敏感な察知》やら有能そうなスキルをゲットしたが、それ以来スキルが出る気配は一切ない。

 俺が今やっているこの作業に意味はあるのか…?一度考えだすとその思考は坩堝に嵌る。嫌な感じだ。





 ………俺達が狩りを始めて八時間が経った。

 ララに飴を咥えさせて、バグったように上を見上げるプロペラ君にお手製の木彫りタケコプターを渡す。狐面にはその辺歩いてた抹茶を渡しておけば勝手に内臓をひり出して遊ぶだろう。


 流石にもう我慢ならない。

 俺の周りの連中はそろそろ疑い始めている。

 俺だって疑ってる。


 俺は自分の持ち場を離れて、エビふりゃーを探す。

 すると、丁度戦闘が終わったエビふりゃーが佇んでいる。


「おい」


 そう言って、俺はエビふりゃーの肩に手を掛けた。


 てめぇ、適当言ったんじゃないよな?

 俺はわざわざ職業にも就かずにここにいる。てめぇがこいつから新スキルが、しかも強いのが出るって言ったからな。だけどどうだ?現状を見ろよ。


 俺はそう言って奴の顔を、ぐるりと見回させる。


 未だ一人もスキルをゲットしていない。

 未だ、戦い続けている。この戦いは本当に意味があるのか?


「ある。意味はある」


 ああ、そうかよ。

 確証があるんだな。分かったよ、信じるぜ。俺はてめぇのそういうところは買っている。だから信じるさ。ゲームに真っ直ぐなお前を俺は知っているからな。


 俺はそう言って、自分の持ち場へと戻る。

 奴は嘘をついていない。癖が出なかった。奴が嘘をつくときは、決まって右の薬指がにぱにぱと動く。それが無かった。つまり奴が持つ情報はホンモノだ。


 ならば、さっさとスキルを出してやろう。

 俺は立ち上がり、武器を取った。

 見せてやる。人間が物欲センサーに勝つ瞬間を、な……!


 ◇■◇


 狩りを始めて十二時間が経った。

 遂に狐面は泣きだした。おお、よしよし可哀想にねぇ…


 ララは先程ログアウトし、プロペラも珍しく用事があると言ってこの場を去っていった。廃人達の剣戟が聞こえる。


 狐面は俺の服で鼻水を拭って、素直にお礼を言った。

 うんうん、お礼を言えるなんて偉いねぇ…飴ちゃんあげようね…何味が良いかい?


「りんご」


 そうかい、そうかい。

 りんごが好きかい。それじゃ、ほら美味しく舐めなさいよ。

 俺は懐からりんごの飴を取り出して、狐面へと渡した。嬉しそうに飴を頬張り、口の中で転がす狐面。奴はもう駄目だ。


 みんながみんな限界だ。

 このままじゃいつまでこの狩りをやっているのか分かったもんじゃない。


 俺はもう一度エビふりゃーに話をするべく、持ち場を離れようとする。しかし、


「止まってください。ルートさん」


 俺の進路を抹茶が止めた。


 何故だ抹茶?

 お前ももういい加減うんざりだろ?俺はうんざりだ。おかげでとうとう俺自身のレベルが上がったよ。2もな…!今や俺のレベルは3だ。他のスキルだってもうすぐレベル上限だ。スキル進化までするぞ?だけどな、全然嬉しくねぇ。嬉しくねぇよなあ。


「きっと、きっともう少しです。もう少しで、出るはずです…きっと」


 そう言って抹茶は泣きだした。

 こいつももう限界なのだ。

 飯も食わず、風呂にも入らず、トイレに行く事すら許されない。ボトルは既に満タンだ…。


 俺は抹茶を憐れみそうになる。

 しかし、こいつを憐れむ事こそ、こいつの努力を否定することになる。俺にはそれが出来なかった。


 だから、俺はこいつを殺す。


 死をもって、お前の努力を肯定しよう。

 俺の背中に蜘蛛の足を再現した血液が凝固する。

 そして、スキルレベルを上げたことによって得た精密さで奴の体を貫いた…かと思われた。しかし、最早奴はただの付与士(エンチャンター)ではなくなっていた。


 己に付与し、仇なす者を殴り飛ばす。

 抹茶は、この環境に適応進化を果たしていた。真っ赤な光(ストレンジエフェクト)に包まれる奴の拳は、最早支援職の手ではない……。


「もう、これで終わってもいい……」


 ご、ゴンさん!?


 俺は顔面に全てを投げうった一撃が入る。

 俺の首は吹き飛び、壁にめり込んだ。


 YOU DIED…

 俺の人生は幕を下ろした。


 ◇■◇


「ああああああああああああああああああああああ!!!!!!」


 相変わらず土竜を倒していた俺達の耳に、劈く様な悲鳴が聞こえる。一体何が……俺は精神が壊れ始めた狐面の手を取って、ゆっくりと声がした方へと向かった。歩ける?だいじょぶ?そうそう、えらいよぉ。しっかり歩けてるねぇ。


 しばらく歩くと、一人の廃人が泣き喚いているのが見えた。おいおい、どうしたんだよ。なんかトラブルか?

 狐面の頭を撫でながら、俺はうんざりした気持ちで言う。すると、奴は言うのだ……。


「で、出た…!出たんだよ…!新スキル…!」


 あ、え?は!!!!?

 俺の頭は一気に冴え渡る。し、しししし、新スキル!!!???本当に?マジで?Realy?俺と同じ様な反応をした廃人共が周りを取り囲む。


 そして、泣きながらその廃人は言うのだ。


「ああ、ああ…ああ!本当だ…!俺達の時間は無駄じゃなかった!無駄なんかじゃなかったんだ…!」


 その言葉を聞いた瞬間、全てが報われた気がした。

 俺は狐面を揺さぶってその事実を伝える。俺と狐面はふたりでやんややんやと喜び合い、互いが互いを褒め合った。こんな事中々無い。

 すごいねぇ、すごいねぇ。


「さっそく、エビに伝え―――が、げ、ぇぼッ―――」


 喜色に溢れていた筈の顔が唐突に歪み、廃人の口から血が零れる。

 一体何が、と誰もが理解していなかった。


 しかし、ただ一人、その男だけは―――、


「よーし!さっさとスキル奪わねぇとな!」


 エビふりゃーは、そう言って廃人の腹から剣を抜くのだった。


 血が飛び散る。

 俺と狐面の顔に、返り血が飛ぶ。狐面は笑っている。未だに幸せに浸っているのだ。


「ははは!」


 エビふりゃーは、そんな笑い声をあげて廃人がリスポーンする街へと走っていくのだった。




 サイコパスは笑う。

 人の幸福だけが、奴の生命たり得るのだから。


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当作品はゴミ共の命によってモチベーションが賄われています。
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