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ゴミ溜めVRMMO記録  作者: どうしようもない
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記録.14『ルーキー達の逆襲』

 


 廃人の中にも有能(エビふりゃー、ラック君、その他)と無能(狐面、抹茶、プロペラ)がいる様に、ルーキー共にも格付けは存在する。


 最も有能なルーキーは廃人共や俺を讃え、何故か貢物を持ってくる連中だ。

 あいつらの思想は未だに読めない。ゲームをすりゃ、誰でもまず初めの方は、有名になりたい欲っつーのが湧く筈だ。なのにそいつらはそれを求めない。心が読めないというのは至極恐ろしい。


 しかし、有能な奴は手元に置いておきたい。

 だから、俺達は奴らの心を見て見ぬ振りするのだ。例えそれが破滅に繋がろうとも……


 ◇■◇


 ぺろりんやーい。

 おーい、ぺろりんやーい。苺味の飴やるからこっちきなー。ぺろりんやーい。


 俺はフレンドリストから、何度も何度もメッセージとヘルプコールを送信する。

 すると、どうだ?俺の前に先程までいなかった筈の人影が現れる。俺は、そいつにひしっと抱き着いた。


「どうしたんですかー?ダストさん」


 そう言って、目の前のイケメンは俺の背中をポンポンと叩く。

 こいつの名は『ぺろりん』。ルーキーの中で、俺のことを気にかけてくれるいいやつだ。しかもイケメンだ。まあ、ゲームなんだから基本皆自分を美形にしてるけど。


 俺はぺろりんに抱き着きながら、金をせびた。

 お金貸してくれよぉ~。絶対返すからさぁ~。約束するってぇ~。半べそをかく、俺の姿にぺろりんは同情したのか、すぐにお金を渡してくる。


「しょうがないですね。はい、どうぞ」


 よっしゃ!さんきゅー!

 絶対倍にするからよ!任せとけって!

 俺は金の枚数を数えながら、そう言った。ぺろりんはいい奴だ。なにせ、羽振りがいい。なんでこんなに羽振りがいいのかは謎だが、まあいいさ。そんなこと気にしてたら、やってらんねぇぜ。


 俺はぺろりんを残して、その場から走り去った。

 やはり持つべきものは有能なルーキーに限るぜ…!



 ◇■◇


 〔システム〔転移門〕が解放された!〕


 突然響いたそのシステムコールに俺達は動揺する。

 な、一体だれが!?一体だれが解放しやがった!!!盤上のチップが床に飛び散る。俺と廃人達はルーキー達からせびった(チップ)を踏み躙り、状況の把握に努めようとする。


「他の連中からボスに挑戦するっつー連絡あったか!?」


 廃人共は、ルーキー達が持たない独自の連絡網を持つ。

 そして、廃人が新たに発見されたボスに挑戦する場合、その連絡網を使って、ボスに挑む旨を報告する義務があるのだ。

 それが、β時代に出来上がった暗黙の了解。

 下手な争いを生まない最低限のマナーだった。しかし、今、それが破られた。どこぞの廃人が勝手にボスに挑戦しやがったのだ。許せない……報酬を独り占めしたかったのか…?殺してやる…


 俺達は怒りに震え、武器を持って雄たけびを上げた。丁度街にある〔転移門〕が解放されたんだ。思う存分使ってやろうじゃねぇか。俺達はすぐさま全ての街へ赴き、帰ってくる連中を皆殺しに……


「お、おい!」


 突然悲鳴のような声を上げた一人の廃人。

 一体どうした、と周りの連中がそいつに声を掛ける。


 おい、そんなことどーでもいいだろ。今は犯人捜しだ。はやくしねぇと逃げら――俺が言葉を紡ぎ終わる前に、そいつは震えた声で叫んだ。


「ぼ、ボスを倒したのは廃人じゃねぇ……!ルーキー共だ…!」


 あ?

 ………ああ!!!?

 有り得ない言葉を聞いた。なんだって?ボスを倒したのがルーキー?おいおい、どんな冗談だよ。お前、死にてぇのか?なあ、今は忙しいってわかってんだろ?おい。


「掲示板を見ろ…ルーキー板がクソほど盛り上がってる。あいつら、とうとう廃人抜きでボスを攻略しやがった……!」


 信憑性皆無だった事実に、少しずつ肉付けがされていく。

 無言の時間が、俺達の中で流れる。


 今思えば、俺達の実力は追い付かれ始めている節はあった。

 〔ワールドクエスト〕の時だって、ほとんどの廃人が参加しなかったにも拘らず、クリア条件の王、王女、子息の生還は達成していた。街への被害だって、全くと言って良いほど無かった。


 や、やばいぞ…おい。


 俺達の中に流れる空気は次第に嫌なものへと変わっていく。それは、酷く粘着質で、それでいて酷い虚無感が漂うものだった。


 俺達の中の”特別”が一つ消える感覚がする。


 重なり合う全ての世界(サーバー)に映し出されているという己への特別感。それが今、俺達の胸の内から、泡沫の如く消えていく。待って…待ってくれ…!い、いかないでくれ…!置いていかないでくれ、まだ、まだ俺は特別でいたい…!



「や、奴らよりも俺達が上ということを示せばいい……だ、だろ?ひ、ひひひっ…」


 廃人の一人が、そう言った。

 その言葉はあまりに魅力的で……俺達は…おれ、たちは…。


 ◇■◇


「あ!ダストさん!見てください!この武器!」


 〔コウザン〕の街の前で、俺とぺろりんは出会った。

 ぺろりんの持つ武器は、プレイヤーの鍛冶師じゃつけられない効果が付随されている特別製だ。効果までは分からないが、装飾やら刀身の色を見りゃわかる。…つまり、そういう事だ。


「今までずっと、黙っていたのか」


 お前の本当の強さを。


「…え?」


 その武器は、そういうタイプの武器は、貢献者ランキング一桁台にのらないともらえない特別報酬枠だ。その武器を持っているってことは、お前は今まで俺へ嘘をついていたことになる。


 ぺろりん、答えてくれ。

 お前は、今まで、一体どんな思いで俺達に金を渡していた?他のルーキー共もそうだ。金をせびれば、お前たちは絶対にくれたよな。不思議でならなかった。でも、気にしなかった。




 ―――ぺろりん、お前は俺の”敵”か?”味方”か?




 ぺろりんはその問いに答えてはくれなかった。

 しかし、先程まで嬉しそうに握っていた剣を、今は無表情で握っている。そうか、それがお前の選択か。よく分かった。お前が、愚かだってことがな。


「死に晒せやああああああああ!!!!」




『飴好きか?』


 思い出が甦る。フラッシュバックするように、次々と。


『え、と。はい。好きです』


『そか、名前は?』


『ぺ、ぺろりんです』


『飴好きそうな名前だな。ほれ、味選んでいいぞ』


『え…と。じゃあこの苺味を…』


 もう、戻らない。

 あの頃の、あの時には。



 俺は、周りの目なんて気にする暇なく《血液操作》を発動させた。

 俺の背後に真っ赤な腕が二つ浮かぶ。


「こいよ…」


 悲しい挑発が辺りに響いた。

 ぺろりんは王宮剣術のような構えで、こちらに迫りくる。

 左手を臀部よりも少し上につけ、そのまま華麗なステップを踏み、剣を振るうぺろりんの空きっ腹に俺の血液腕の一撃がドッ、と入る。


「か、ひゅッ―――」


 あばらにヒットしたぺろりんは大きくバックステップを踏み、一歩二歩と俺から距離を取る。


 なあ、ぺろりん。

 無理な話だろうよ。俺はβ組で、お前は未だルーキーだ。

 確かにお前らの団結力はすげぇよ。ルーキーだけでボスを倒しちまうそのチームワークは、俺達にはないもんだ。


 でもな、個人の総合力はまだギリギリこっちが上なんだよ。

 俺はユニークっつーズルをしてっけどさ…。なぁ、ぺろりん。俺はルーキーの中じゃお前好きな方なんだぜ?まだやり直せることだってあるだろうよ。だからさ―――、


「領域展開……」


 ぺろりんはそういうと、自分の顔の前に手を持ってきてそれっぽい形を作る。こ、こいつ……!まさか…領域展開が出来るレベルの呪力を持って……!?や、やばい…!


「『無量空―――」


 俺はすぐさま血液腕を飛ばし、奴の体中を殴り倒す。

 しかし、奴の体は動かない。そして、奴の言葉は―――、


「――処』」


 その言葉をぺろりんが言い切った時、俺の意識が少しずつ薄れていく。

 消えゆく意識の中で、ぺろりんがこちらに舌を出している。



 その舌の上には、きらりと光る機械仕掛けの時計があった―――。



 ◇■◇


 目を覚ますと、そこは〔サイショ〕の街のすぐそばの森だった。

 俺は自分の記憶をまさぐり、最後に見た機械仕掛けの時計を思い出す。


 あれは…一体…はっ!


 俺が辺りを見回そうとすると、身体が動かないことに気づく。どうにか首だけを動かして、辺りを見るとそこには廃人共が転がっていた。

 そして、その顔触れは皆ぺろりんやルーキー共に金をせびっていた連中だった。


 俺がその事実に気づくと同時に、そいつらも目を覚ます。一体、何故こんなところに俺達はいやがる……?


 そんな疑問は、一人の男の登場によって氷解する。

 その男は、後ろにルーキー共を連れて登場した。


「ぺろりんんん……」


 一体何をしやがった。

 俺達はそろって口を開いた。それと同時に罵倒が飛び交う。

 プレイヤー達に煽り耐性はない。煽られたら煽り返すのがマナーだと思っている廃人共は最早取り返しがつかない。


「…始まりは偶然でした」


 ぺろりんは、静かに喋り始めた。

 その瞬間、ルーキー共は俺達を罵るのをやめ、その言葉に耳を傾ける。


 たかがゲームで、どうしてそこまでお前らは……


「俺は本当に偶然、”遺失の欠片(オーパーツ)”を見つけたんです。」


 遺失の欠片(オーパーツ)

 それは、βテスト時代、どんなに労力を掛けても欠片一つ見つける事が叶わなかった伝説のオーバーテクノロジーの一片だ。


 その捜索は今もなお、続けられている。この男…いつのまにそんなものを…!


「その性能は破格のものでした。そして、貴方達廃人に鉄槌を与えるには十分すぎる効果があった」


 そう言って、ぺろりんは俺達に新しい玩具を自慢するように、その性能が記載されたフレーバーテキストを表示させたのだ。



 〔消えた金達の嘆き(パレード・クロック)

 機械仕掛けの懐中時計。

 金を貸した相手を睡魔に誘った後、操作不能時間を与える。

 操作不能時間は、貸した金の量によって増減する。

 遺失の欠片(オーパーツ)の一つ。



 ………ぺろりんさん。

 いまからでも引き返すことは出来ますか?


 俺がそう言うと、ぺろりんは笑ってこう言った。


「ダストさんのことは、先輩として好きです。だから助けてあげたいですけど、皆がそれじゃ納得しませんし…不公平でしょう?」


 ぺろりんはそう言って、その場から去っていった…。

 俺は何も言うことが出来なかった。廃人共も、何も反論が出来なかった。俺達は…ルーキーに惨敗したのだ…。


 体躯は停止を続ける。

 最早、そこに躍動の二文字はないかのように。

 ステータスを開くと、名前の横にこんな表記が増えていた。



(操作不能:あと42:39:54(42時間39分54秒)



 ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!




 因果応報。

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当作品はゴミ共の命によってモチベーションが賄われています。
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