48 語感
「アルマゲドンとアルマジロって似てますよね」
神代 七が変なことを言うのは日常である。
特に彼氏の玖来 烈火が学校で隣の席にいる時は、授業の合い間にある短い休み時間ごとに言ってくる。
烈火は一度、言われた単語を脳内で反芻。それから音でも確かめるために小さい声で二度ほど呟いて確認。
結果。
「いや似てねぇーよ」
アルマの部分が重なっただけじゃん。いやそれは似てるとカウントすべきなのか?
「いや、でもそれだとアルマオイルも似てることになるじゃん」
「あー、確かにアルマオイルは似てる感じしませんねぇ」
アルマゲドン、アルマジロ、アルマオイル。
なんだこの単語の並びは。非常に因果性の見えない集合体だな。どんな数奇な運命を巡って出会ったんだろう。
烈火は真にいらんことを頭を抱えはじめる。
それを眺めるのが好き。七はにこにこしながら話を続行する。
「まあ、名前や語感が似てても内容が似てるとは限りませんからねぇ」
「逆に内容が似てても名前が丸きり違うものとか挙げてみるか」
「ロリータコンプレックスとペドフェリア」
「それ以上はやめろ」
そもそもそれらは成り立ちが違うしな。ネーミングが似てなくて当たり前だ。
とか言ったら失言。七がわなわなと恐れを抱いて後ずさる。
「え、玖来さん、なんでそんな知識あるんですか、怖い……」
「お前がうるさいからだよ!」
七の言ったことならだいたい調べておく。律儀な烈火なのでありました。




