閑話 七ちゃんがひとりでいると
たまに不安になることがある。
玖来さんのことが、よくわからなくなる。よくわからない考えで、よくわからないことを言って、よくわからない行動にでる。そういう人だから。
それは玖来さん自身の中ではおそらく法則化されていて、理屈も通っているのだろう。
だいたいの人間は自分の中の理屈があって、それが他人にわかりやすいかどうかでしかない。それがわかりづらい人のことを変人とか天才とか言うのだろう。逆にわかりやすい人のことを親しみやすいとか単純とか言う。
それで言えば、玖来 烈火は変人で、わかりづらいのだ。
昔はよかった。少し前、出会って一年くらいは不思議パワーが健在だった。
その頃なら、玖来さんの心を私は知れて、意味がわからないけど嘘はないと確信できた。
けれど今は単なる人の身だから。只人は人の心なんか読めない、見えない、知りえない。
ただ態度や言葉だけで繋がっている。
そんな脆さが当たり前で、そんな拙さが人間同士のコミュニケーション。
だから私のこのもやもやは人として当然のもので、その解消を望むのはとてもおこがましいこと。
人を見下しているゆえなのかもしれない。
けれどどうしたって不安なのだ。怖いのだ。
烈火が自分の傍から離れてしまうのが。烈火が自分への興味を薄れさせてしまうのが。
――この恋心に、応えてくれなくなってしまうのが。
こんなに好きなのに。大好きなのに。愛しているのに。
なんて、それは自分勝手な理屈でしかないけれど。
私は精一杯、自分の好意を玖来さんに告げる。
忘れられないように。不安を打ち消すように。心が通じ合うように。
烈火もちょくちょく好きだと言ってくれる。行動で示してくれる。その度に安心して、また好きになって、でも一抹の不安が膨れて。
どうすればいい。どうすれば心満たされるんだろう。
幸せ一杯で、幸福過ぎて――だからこそ怖いのだ。
この幸福がいつか崩れてしまうのではないかと怯えて、震えて、もはや泣いてしまいそうだ。
そういう不安が沢山沢山溢れた時は、決まって玖来さんに抱きしめてもらう。そうでもしないと本当に泣き喚いてしまうから。
玖来さんが触れてくれると、ちょっとだけ安心する。
玖来さんが撫でてくれると、ちょっとだけ安心する。
玖来さんが抱きしめてくれると、とても安心する。
そう、もう私は玖来さんなしでは生きていけないのだろう。
だから、今日も私はあなたの元へと急ぐのだ。




