40 ヒロイン属性5
「クーデレって、どう思いますか玖来さん」
神代 七が変なことを言うのは日常である。
特に彼氏の玖来 烈火が学校で隣の席にいる時は、授業の合い間にある短い休み時間ごとに言ってくる。
シャーペンに芯を追加しながら、烈火は言う。
「クールにデレデレだっけ。……なんだろう、一単語の中に矛盾が内包されているような気がするんだが」
「別に矛盾はしていません。クール、冷静であっても人を好きになります。好きになれば甘えたがるのは自然の摂理ですから」
「それもそうか」
シャーペンをカチカチと鳴らして具合を確認。よし、使えるな。机において、七へと視線を向ける。
「どうって言われるとあれだが、そうだな、おれは割と好きだぞ」
「え、マジですか」
「まあ人に危害を加えないし危なくないしあざとさも薄めだし。悪い要素がないじゃん」
「あぁ、いえでもデレている対象を除けば興味を持たなかったり、冷たく当たるのもクーデレの一種ですよ?」
そこはある意味でよくない点だろう。コミュニケーションが難しい相手ということなのだから。
烈火は別に構わないと言う。
「そりゃぶっちゃけ人見知りが入ってるだろ。それは仕方ないと思うわ。徐々に打ち解けていけば問題ないだろ」
「ふむふむ」
「感情表現が苦手なのは共感できる。不器用さも理解できる。表情は、できれば笑顔であって欲しいけど瞬間の美と考えれば悪くない」
「へぇ、随分と高評価ですね。はじめてじゃないですか、この手の話題では」
はじめての好感触に、七はちょっと楽しそう。
勢いで続けてもうひとつ挙げてみる。
「では素直クールっていうのはどうです」
「なにそれ。クーデレさんとは別物なのか?」
「似た風情で別の存在ですね。素直クールとは表情変化もなくクールな雰囲気を残して、恥ずかしいことも素直に言ったりやったりとオープンデレデレって感じです」
「へぇ、確かに別物だな。人見知りではなさそうだ」
「いえ、意中の相手だけの場合もありますし」
「ふぅん」
烈火はしばし黙考し、うんとひとつ頷く。
「それもたぶん嫌いじゃないぞ。実際の描写を見たわけじゃないが、たぶん好みだろうな」
「やはり高評価……決めました」
七は威勢よく立ち上がって宣言する。
「では私、今日からクールになりますね、玖来さん!」
「そりゃ無理だ」
まずその発言の時点で声が張ってて元気一杯でクールとは程遠い。
三日で飽きるだろうなぁ、烈火はほとんど確信していましたとさ。




