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お嬢様とハエの神

様々な種族のお客様が訪れるダンジョンコンビニ

本来、敵対する同士が、本来の姿を隠し、上手く共存している者たちもいる


店員は、曇った眼鏡を外すと息を吹きかけ汚れを拭きとっていた


テッテレー♪ガー

「いらっしゃいませー」

「なんて、狭苦しい店なのでしょう!」


パタパタと羽根のついた団扇をはたきながら、そのお客様は声高らかに悪態をついた


「爺っ!見なさい!これが庶民の行くお店なのですね!」

パタタタタタ「ハイ」タタタ「お嬢様」タタタ


シルクのハンカチで手を拭いながら、スーツを着て二足歩行する山羊の姿をした爺と呼ばれた男が自動ドアから赤い絨毯をひきはじめる


「だいたい、お父様も急にここで庶民の暮らしを見て勉強をしなさいなんて」

パタタ「ですが」パタタ「お嬢様」タタタ


しかし羽音が五月蝿いですね


店員が拭き終わった眼鏡を掛けて爺と呼ばれる者を見ると、一匹の、でかいハエがブンブンお嬢様の周りを飛んでいた。あ、そっちの羽音でしたか


本来はハエの姿なんですね。なぜ山羊の姿になっているのでしょう


「わざわざ、爺を執事にしてからここに行けだなんて」


無数のたてがみロールを振りかざしながら、どピンクのドレスを羽織り、金色のヒールをカツカツ鳴らしながらその女は、まるで汚い物を触るかのように商品をつまむ


「そもそも高貴なる私が、こんなホコリ臭い場に出向いて何を学べと言うのかしら」


まずは常識とマナーですかね


「お嬢様、御主人様は何か1つでも買い物を行いお金の流通を知れと言われておりました」

「フッ、流通?流通って・・フフ、フフフフホーホホホ」


んな、頭が床につきそうなくらい背中を反らなくても


「流通って何かしら」

「流れを知るということですお嬢様」

「流れ?何を言ってるの爺ったら、何も流れてなどいないじゃない。お父様も世間知らずね」


あ、この、お嬢様アンポンタンです。だから、山羊と羊と執事の違いが分からなかったんですね


「ところで爺、お父様は何を喜ぶかしら」

「御主人様の為になにか買われるのですね!さすがですお嬢様!」

「ウフフ、そんなことありますわ」


謙遜という言葉をどこかに忘れてきたようだ


「御主人様は、最近げぇむにハマっていると仰っておりました」

「げぇむ?何かしらそれは」

「チェスとかカードとかVRとかでしょうか」

「カード?あれはお父様が召喚される為に、使われるものでしょう。あら、でもこの前召喚された先でデス・ゲームをさせたっていってたわね」


お嬢様は、眼鏡をかけたり外したりしてハエと山羊のギャップを楽しんでいる店員に団扇を顔の前に突き出した


「これ、そこの店員、げぇむはどこにあるの?」

「こちらですね」

「あら、それならクリスマスの朝に私の枕元にも置いてあったわ」


こんな大きな子供にサンタがくるなんてメルヘンチックなお父様


「たしか・・あ、これよこれ」

お嬢様が、ゲームコーナーに置いてある古い機種のゲーム機を持ち上げホコリをはらう


「ずいぶん古い機種ですね、お嬢様」

「ええ、クリスマスにぴったりって言ってたわ」


サターンを選ぶとかクリスマスに渾身のオヤジギャグを混ぜたダジャレだろうか


「こちらはセガですね」

「セガ?お父様に、見せたらお父様の名前と似てるから大事にしなさいって言ってたわよ。ぜんぜん名前似てないじゃない」


お嬢様は、爺がもつカゴにゲーム機を入れるとコンビニ内を物色する


「あら?あれは何かしら」

「食べ物のようですね」


冷凍食品の中からコーンのついたソフトクリームを取り出す


「お、お嬢様っ!そちらはだいぶ食欲が湧きますね!」

「あら、そぉ?なんだか形が何かに似ているわ、毎日見ているような」


そういうとトイレの方をチラリと見ている

「私の好物です!」

「そうなの?じゃあ。これも買いましょう」

「ヒャッフー!ありがたき幸せ!ちなみにチョコレート色が最高です」


ずいぶん際どい好物みたいだけど、あえて知らないフリをしよう


「あら?あちらの方は何だか見覚えがあるわね」


「奥様の元カレのお父様に似ていま「おだまりっ!」


お嬢様が爺の頭をペシンと団扇で叩く

あ、それハエたたきだったんですね


「ま、こんな所にいるはずないわね」


視線の先の裸神が、小声で「オーマイゴッド」と呟きながら顔だけ本で隠している。公共の場ではもっと違う場所を隠してほしい


「それにしても、あの本の表紙・・・よくお父様が書斎の奥に隠しているのに似ているわ」

「御主人様はたしか一押しの方がいらっしゃると呟いてましたね。たしか禁断の果実と似た名前の方でした」


リンコブですね


「疲れたわ爺。そろそろ帰りましょう」

「そうですね、でわ、お嬢様。レジにてお支払いを」

「それにしてもなにの流れを学べたのかしら」



母親の元カレの父親が流れ着いた先ですかね


「12560ペソです」

「ツケで」

「お嬢様、ここではツケはできません。物に見合った対価を払わねば」

「あらそう。では、んん。・・・店員よ、貴方に何を与えようか?願え」

「12560ペソです」

「あら、お父様はいつもこのセリフを召喚先で爆笑しながら言うって言っていたわ」

「お嬢様、それは御主人様ではなく、奥様の元カレの父「おだまり!」」



裸神が厨二病のときに言ったセリフを後悔して顔を赤めて頭を抱えている。他に恥ずかしがることが、あると思うんですが


この際、このお嬢様に知恵を授けてあげてはどうだろうか


お嬢様はカードを取り出し、対価を支払うと最後まで裸神を見ながら「どこかで見たことあるのよね」と首を傾げていた



テッテレー♪ガー

「ありがとうございましたー」













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