第70話 現地保存
通信塔。
十七時二十三分。
遅い。
息。
切れる。
久世。
隣。
通信。
一本。
本社。
田所。
「富樫?」
「島」
「知ってる」
「倉庫の資料」
「何」
「廃棄止めたい」
「誰が廃棄」
「説明長い」
「警察?」
「そこまでじゃない」
「何なんだよ」
「資産」
「最近そればっかだな」
確認。
固定資産。
旧臨海保管所。
三崎物産所有。
資料。
現地保存。
本社承認なし。
廃棄不可。
「普通だろ」
田所。
「普通が助かる」
切る。
戻る。
十七時三十八分。
煙。
「火!」
倉庫。
南側。
黒い。
久世。
「主任!」
作業着の三人。
消火器。
走る。
主任。
「違う! 私たちじゃない!」
榊。
倉庫の中。
「真理の箱!」
私は。
入口。
熱。
煙。
入る。
久世。
「富樫さん!」
「一分!」
箱。
203。
ない。
202。
ある。
棚。
炎。
全部。
無理。
「榊!」
彼。
146の箱。
抱える。
「まだ」
「全部無理!」
「でも」
「一つでいい!」
言って。
自分で。
止まる。
一つ。
何を。
選ぶ。
棚。
古文書。
河西。
森山。
写真。
石。
土。
どれも。
理由。
ある。
理由が。
ありすぎる。
床。
普通の。
青い大学ノート。
表紙。
手書き。
〈次の人へ〉
私は。
取る。
根拠。
ない。
ただ。
今。
選んだ。
外。
南浜。
全員。
移動。
主任たち。
最後まで。
消火。
でも。
火。
強い。
風。
吹く。
炎。
煽る。
煙。
海へ。
流す。
助けている。
のか。
悪化させている。
のか。
分からない。
主任。
消火器。
空。
「燃えます」
久世。
「はい」
榊。
妹の箱。
一つ。
私。
ノート。
一冊。
主任。
小箱。
一つ。
「何それ」
私。
「業務です」
「ずるい」
主任。
「あなたもでしょう」
屋根。
落ちる。
大きい。
音。
船着場。
帰りの船。
見える。
十八時二分。
私は。
燃える倉庫を見る。
202の箱。
203の記録。
サンプル。
写真。
歴史。
消える。
久世。
「無意味でしたか」
「何が」
「ここまで来たこと」
私は。
ノート。
見る。
「分からない」
「でも」
表紙。
開く。
最初のページ。
一行。
〈あなたがこれを読んでいるなら、私は最後まで残れなかった〉
その下。
〈だから、続きを頼む〉
私は。
閉じる。
最後まで。
残れなかった。
失敗。
とは。
書いていない。
「帰ろう」
誰に。
言った。
全員。
たぶん。
主任も。
久世も。
榊も。
私も。
同じ船に。
乗れる。
敵。
味方。
まだ。
決めなくていい。
島から。
持ち帰るものは。
残った。




