第69話 所有者
倉庫。
十六時五十七分。
北の船。
接岸。
三人。
作業着。
女。
男。
男。
黒くない。
普通。
一番前。
四十代くらいの女性。
久世。
「主任」
女性。
「久世」
「帰ります」
「嫌です」
即答。
主任。
ため息。
「命令です」
「もう担当外です」
「だからです」
私。
「こんにちは」
全員。
見る。
主任。
「富樫十兵衛さん」
「知ってる?」
「資料では」
「面倒な人?」
主任。
少し。
笑う。
「そう聞いています」
榊。
前へ。
「何しに来た」
主任。
「記録を持ち帰る」
「持って帰る?」
「必要なものは」
「処分するものも?」
「あります」
榊。
拳。
握る。
私。
今度は。
腕。
軽く。
掴む。
「やめろ」
「真理の記録も」
主任。
「対象です」
榊。
動かない。
主任。
私を見る。
「人は意味を作ることで、危険を増幅することがあります」
「仮説?」
「私たちの運用上の前提です」
「実績じゃない?」
主任。
一瞬。
止まる。
「そう呼ぶ者もいます」
森山。
後ろ。
何も言わない。
「203も?」
私。
主任。
「典型例として扱われています」
「203自体が危険?」
「そうは言っていません」
いい。
そこは。
同じ。
「だから記録を消す?」
「追う人を減らすためです」
「本当に減った?」
主任。
答えない。
久世。
「私は、増えた例も見ています」
「久世」
「事実です」
二人。
同じ組織。
同じ答えではない。
私は倉庫を見る。
石。
土。
時計。
写真。
榊真理。
河西。
意味がない。
ものばかり。
だから。
残った。
「全部は渡せない」
主任。
「あなたに権限はありません」
「あります」
社員証。
出す。
「三崎物産の資産だ」
榊。
「そこ?」
「そこだよ」
久世。
笑う。
主任。
書類。
見る。
「本社承認なしでは?」
「確認すればいい」
電話。
圏外。
私。
地図。
「通信塔」
時計。
十七時四分。
日没。
近い。
主任。
「その間に作業します」
「触るな」
「命令ですか」
「資産管理責任者として」
主任。
初めて。
少し。
笑う。
「会社員ですね」
「そうだよ」
私は。
通信塔へ。
走る。
三十秒で。
やめる。
早歩き。
久世。
ついてくる。
榊。
倉庫に残る。
森山。
いつの間にか。
いない。
私は。
気づいた。
でも。
戻らなかった。




