第67話 引き返す
地下。
森山。
迷わない。
「何回来た」
私。
「数えていません」
「十三回?」
森山。
「それは、つまらない」
初めて。
返された。
北洞口。
旧排水坑。
水。
低い。
十五時四十二分。
外。
岩。
海。
洞。
干潮。
森山。
「この道は、河西さんが見つけた」
榊。
「真理は?」
「通りました」
「どこへ」
森山。
止まる。
「そこから先は、私には分かりません」
「船じゃないのか」
「船の記録はありません」
記録。
ない。
だから。
何でも言える。
私は。
洞の壁。
見る。
削った跡。
人が通れる。
幅。
一人。
森山。
「榊真理は、この隙間を広げた」
榊。
「見たのか」
「作業記録を見た」
本人。
見ていない。
「道を残した?」
「そう考えています」
森山。
言い直す。
「私は、そう解釈しました」
そこ。
大事。
事実。
ではない。
榊。
手帳。
握る。
「向こうへ行った?」
森山。
「その言葉で説明すると、分かった気になります」
久世。
「では、何が起きたんです」
「分かりません」
森山。
海を見る。
「水原佳奈も」
「河西も」
「真理も」
「同じ場所へ行ったとは限らない」
私は。
少し。
安心する。
世界が。
一枚の地図に。
ならない。
「五番目」
私。
「203」
「十三分」
森山。
「人は数字を残したがります」
「分かりやすいから?」
「はい」
「本当に意味ない?」
「私は、意味があるとは確認できていません」
それでいい。
意味がない。
とも。
言わない。
洞。
先。
暗い。
榊。
ライト。
向ける。
細い隙間。
岩。
古い。
削り跡。
「真理?」
「かもしれない」
私。
榊。
見る。
「決めないんですね」
「本人が書いてないから」
時計。
十六時八分。
波。
さっきより。
近い。
森山。
「あと十五分なら」
私。
「戻る」
久世。
「まだ行けます」
「行けると、戻れるは違う」
森山。
「正解です」
「褒めるな」
四人。
戻る。
背後。
波。
音。
少しずつ。
大きくなる。
途中。
私は。
一度だけ。
振り返る。
隙間。
暗い。
何も。
出てこない。
それで。
よかった。




