第65話 無番
十四時。
倉庫。
出る。
草。
石。
坂。
十五分。
古い貯水槽。
水。
濁る。
焚き火跡。
新しくない。
空き缶。
底。
錆。
榊。
「いつの」
「分からない」
私。
「昔でいい」
「雑ですね」
「今は」
中央丘陵。
登る。
汗。
私。
遅い。
久世。
「課長、運動」
「うるさい」
頂上。
島。
見える。
船着場。
倉庫。
採石場。
通信塔。
北東の岬。
だけ。
見えない。
「死角」
私。
榊。
「地形です」
「まずは地形でいい」
下る。
採石場。
岩。
切断。
人工。
入口。
扉。
鍵。
榊。
「固定資産図にはありません」
「もう驚かない」
中。
地下。
観測室。
机。
棚。
壁。
席。
六つ。
中央。
五席。
円。
少し離れて。
一席。
久世。
「六」
「数えるな」
私。
近づく。
机札。
1。
2。
3。
4。
5。
そして。
最後。
番号。
ない。
「六番がない」
榊。
私は無番の席を見る。
「立会」
久世。
棚。
記録。
一九七七。
〈立会〉
氏名。
空白。
一九八九。
〈立会〉
薄い。
森山孝一。
疑問符。
一九九八。
〈立会〉
判読不能。
二〇〇四。
〈立会〉
榊真理。
榊。
息。
止まる。
「真理が」
久世。
「選ぶ側?」
榊。
強く。
「違う」
私。
「役割かもしれない」
「何の」
棚。
マニュアル。
古い紙。
〈立会者は意味を確定してはならない〉
〈観測者五名の一致を確認する〉
〈一致しない場合、記録を保留する〉
私は読む。
「裁判?」
久世。
「科学実験に近い」
「でも」
次。
〈立会者自身の解釈を記録してはならない〉
榊。
「なぜ」
次ページ。
破れている。
私は無番席を見る。
「五人が見て」
「一人が」
久世。
「意味を決めない」
「記録だけ残す」
榊。
「それが立会」
仮説。
きれい。
きれいすぎる。
私は椅子に触らない。
「決めるな」
久世。
「何を」
「今の説明」
「でも合っています」
「合いすぎる」
沈黙。
壁。
小さな通気口。
外。
風の音。
ある。
室内。
空気。
動かない。
紙。
一枚。
無番席。
前。
床。
落ちている。
拾う。
文字。
〈立会者は最後に残る〉
私は読む。
久世。
私を見る。
榊。
私を見る。
五番目。
最後。
富樫。
そう繋げることはできる。
私は紙を机へ戻す。
「座りませんよ」
久世。
「聞いてません」
「顔に出てた」
榊。
少し笑う。
私は無番席を見たまま立つ。
最後に残る。
それが役割なのか。
結果なのか。
誰かがそう書いただけなのか。
まだ。
分からない。




