第64話 中身
午後。
台帳。
全部は開けない。
記録。
優先。
年代。
場所。
備考。
特定の箱だけ。
同じ記号。
〈風〉
二十七件。
久世。
「組織の符号と似ています」
「同じ?」
「断定できません」
「いい」
一箱。
北海道。
石。
一箱。
山形。
木片。
一箱。
群馬。
泥。
一箱。
静岡。
壊れた時計。
一箱。
福岡。
写真。
どれも。
単体なら価値が分からない。
でも。
誰かが運び。
番号を付け。
保管した。
証明ではなく。
記録だったのかもしれない。
榊。
棚。
止まる。
箱。
二〇〇四。
番号。
146。
ラベル。
半分剥がれている。
名前。
〈榊〉
榊。
動かない。
私は箱を開けない。
「どうする」
彼。
長い。
「開けます」
蓋。
中。
ハンカチ。
鍵。
学生証。
榊真理。
写真。
二十二歳。
榊。
声。
出ない。
久世。
見る。
触らない。
私は小さな手帳を取る。
水。
染み。
最後のページ。
〈島〉
〈立会〉
〈私ではない〉
三行。
だけ。
榊。
座る。
私は聞かない。
生きてる。
死んでる。
今どこ。
全部。
聞ける。
でも。
聞かない。
「持って帰る?」
榊。
「いいんですか」
「私物だろ」
「でも」
「妹さんのだ」
榊。
手帳。
持つ。
手。
少し震える。
「真理は」
止まる。
「ここまで来た」
私。
「そうだな」
「でも、ここで終わったかは」
「分からない」
榊。
私を見る。
「それ、慰めですか」
「違う」
「じゃあ」
「確認」
少し間。
榊。
小さく笑う。
「嫌な人ですね」
「よく言われる」
久世。
学生証を見る。
「〈立会〉」
私。
「また」
「〈私ではない〉」
榊。
「何が」
誰も分からない。
時計。
十三時四十二分。
「十分休憩」
久世。
「今?」
「今」
「次は?」
「丘」
榊。
「地下は」
「後」
「理由」
「急ぐと、意味を作る」
二人。
黙る。
私は倉庫の外。
海を見る。
遠く。
岸。
白いもの。
一瞬。
見える。
人ではない。
波かもしれない。
私は見続けなかった。
十分。
休む。
それも探索。




