第61話 足跡
島へ着いたのは。
十一時十分。
船着場。
コンクリート。
錆びた係船柱。
雑草。
海。
船がエンジンを落とす。
急に。
静か。
「いた」
私。
岸。
さっきまで。
白いシャツ。
黒いズボン。
男。
今。
いない。
久世。
「どこです?」
「高台」
榊。
「見間違いでは」
「分からない」
「いい答えです」
「うるさい」
荷物。
降ろす。
船員。
「帰り、十八時半目安で」
風。
普通。
旧作業道。
三人。
歩く。
砂。
土。
草。
足跡。
「止まって」
新しい。
靴。
四種類。
私。
運動靴。
久世。
細いトレッキングシューズ。
榊。
底の大きい靴。
そして。
もう一つ。
革靴。
「島で革靴」
久世。
「森山さん?」
「決めない」
榊。
「少なくとも、私たち三人のものではありません」
船。
誰も追加で降りていない。
私は。
少し笑う。
「名簿は三人」
久世。
「足跡は四人」
「そっちの方が嫌ですね」
歩く。
四百二十メートル。
木々。
海。
見えなくなる。
倉庫屋根。
現れる。
足跡。
扉前。
止まる。
そこで。
革靴だけ。
消えている。
扉。
南京錠。
錆。
閉じている。
榊。
「中へ入った?」
「鍵、閉まってる」
久世。
「出ていない可能性」
「まずは」
私は鍵を出す。
三崎物産。
資産管理。
正式な鍵。
回る。
カチ。
「普通に開く」
榊。
「それが一番怖いですね」
扉。
開く。
暗い。
紙。
錆。
海。
匂い。
一歩。
入る。
時計。
十一時二十一分。
背後。
風。
扉。
少し動く。
私は振り返る。
外。
誰もいない。
四人目。
まだ。
見えない。




