第60話 四名
港。
朝。
夏。
船。
小さい。
私。
久世。
榊。
三人。
ヘルメット。
ライト。
水。
非常食。
会社員の。
出張には。
少し。
見えない。
小野寺。
電話。
「課長、お土産」
「仕事」
「島ですよね」
「何で知ってる」
「申請見ました」
「総務怖い」
「久世さんみたいなこと言わないでください」
切る。
船員。
「乗船名簿、お願いします」
紙。
私。
富樫十兵衛。
久世。
久世志乃。
榊。
姓だけ。
三行。
船員。
見る。
「四名ですね」
「三人です」
「いえ」
指。
四行目。
文字。
ある。
〈森山孝一〉
私は。
紙を。
見る。
久世。
榊。
見る。
誰も。
書いていない。
「予約名簿?」
「はい」
「当日記入じゃない?」
船員。
「会社予約の一覧を印刷してます」
つまり。
私たちが。
書いた三行の下に。
最初から。
四人目。
「この人、もう乗ってます?」
船員。
「確認します」
船内。
客。
老人夫婦。
釣り人。
作業員。
私たち。
森山。
らしい男。
いない。
船員。
端末。
「会社から四名で予約です」
「三名で申請した」
久世。
「変更ログ、見られますか」
船員。
困る。
榊。
「予約確認のためです」
端末。
追加。
一名。
日時。
深夜。
二時十三分。
私は。
笑う。
「またか」
久世。
「笑うところですか」
「もう怒るの疲れた」
榊。
「森山本人が追加した可能性は」
「予約番号を知ってれば」
船員。
「できるかもしれません」
「じゃあ人間でもできる」
私。
「はい」
普通の。
穴。
残る。
それでいい。
「名前、消せます?」
「出航前なら」
私は。
少し。
考える。
「消して」
船員。
操作。
〈森山孝一〉
消える。
三名。
になった。
「これで普通」
久世。
「普通ですか?」
「少なくとも名簿は」
船。
出る。
港。
離れる。
風。
強い。
海。
白い。
私は。
甲板。
久世。
隣。
榊。
少し。
離れる。
「森山、来ると思う?」
久世。
「分かりません」
「いいね」
「何が」
「その答え」
陸。
遠い。
島。
低い。
緑。
崖。
旧三崎物産。
臨海保管所。
あそこに。
何が。
残っている。
分からない。
船員。
前。
海を見る。
そのとき。
風。
一度。
止まる。
ほんの。
数秒。
船員。
「珍しいな」
「何が」
「この辺、風止まらないんですよ」
久世。
榊。
同時に。
島を見る。
私は。
二人ではなく。
海を見る。
風。
戻る。
強い。
島。
岸。
白いシャツ。
黒いズボン。
人。
一人。
立っている。
遠い。
顔。
見えない。
森山。
そう。
思える。
だけ。
私は。
決めない。
ポケット。
透明な袋。
ボールペン。
揺れる。
船は。
島へ。
近づいていった。




