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第57話 立会

作業日誌。


一九八九年八月十一日。


作業員。


五人。


その下。


〈立会〉


氏名。


空欄。


久世。


「六人目」


私は。


「まだ言うな」


「でも欄は六つです」


「人が六人いたとは書いてない」


榊。


日誌。


覗く。


「立会は作業員ではありません」


「誰が立ち会った」


「空欄です」


「じゃあ、分からない」


久世。


少し。


笑う。


「最近、そればかりですね」


「便利だからな」


「便利に使わないでください」


それ。


私の台詞。


ページ。


前日。


八月十日。


作業員。


五人。


〈立会〉


空欄。


翌日。


八月十二日。


作業員。


五人。


〈立会〉


空欄。


毎日。


同じ。


「特別じゃない」


私。


「欄そのものが書式」


榊。


「そう見えます」


つまり。


六番目。


ではない。


最初から。


五人と。


立会。


役割。


そういう紙。


少し。


安心する。


その安心が。


気に入らない。


奥。


導水路。


水。


浅い。


膝下。


流れ。


海へ。


向かうはず。


なのに。


ライト。


照らす。


水面。


小さな木片。


こちらへ。


流れてくる。


「逆?」


久世。


「勾配は」


榊。


図面。


見る。


「海側へ下がっています」


木片。


私たちの方へ。


来る。


一つ。


二つ。


三つ。


私は。


長靴。


水へ。


入れる。


冷たい。


流れ。


足首。


押す。


向き。


分からない。


「錯覚かも」


私。


久世。


「水面だけ逆流?」


「決めるな」


「はい」


壁。


五本。


縦の溝。


ある。


古い。


工具で。


刻んだような。


一。


二。


三。


四。


五。


私は。


ため息。


「また五か」


榊。


「偶然かもしれません」


「先に言われた」


溝。


横。


小さい文字。


鉛筆。


ほとんど。


消えている。


〈数えるな〉


久世。


「何を」


「知らない」


榊。


黙る。


私は。


そこだけ。


写真を撮る。


全文。


読めない。


「六番目を数えるな」


そう。


補うことは。


できる。


でも。


書いてあるのは。


〈数えるな〉


だけ。


足元。


青い線。


ここで。


終わる。


その先。


水路。


続く。


「線は終わり」


久世。


「通路は続く」


私。


「今日は戻る」


榊。


「まだ行けます」


「行けると、行くは違う」


「会社員ですね」


「褒めてる?」


「少し」


戻る。


点検箱。


もう一度。


見る。


立会。


氏名。


空欄。


私は。


写真。


撮る。


そのとき。


気づく。


八月十日。


十一日。


十二日。


全部。


立会欄。


空欄。


なのに。


押印欄。


丸い印。


ある。


読めない。


誰かは。


立ち会った。


名前だけ。


書かなかった。


それとも。


名前を書く必要が。


なかった。


外。


海。


風。


強い。


私は。


日誌の写真を。


見返す。


立会。


人。


とは。


限らない。


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