第54話 普通に書ける
翌朝。
小野寺。
「課長、青ペンあります?」
私は。
一瞬。
考えた。
引き出し。
透明な袋。
「これ使って」
「袋?」
「気にしないで」
小野寺。
ペンを取る。
伝票。
さらさら。
〈小野寺〉
書けた。
普通に。
「……書ける?」
「はい?」
「いや」
続けて。
〈北辰商事 確認済〉
青。
きれい。
私は。
黙る。
「課長?」
「それ、貸して」
受け取る。
同じ紙。
〈富樫〉
書く。
出た。
富。
樫。
全部。
青。
「昨日は」
小野寺。
「何です?」
「何でもない」
佐伯。
来る。
「それ、懐かしいペンですね」
「知ってる?」
「会社は知らないです」
「書いてみて」
「何を」
「何でも」
佐伯。
〈佐伯〉
出る。
数字。
〈418〉
出る。
丸。
線。
全部。
出る。
私は。
203。
書く。
出る。
202。
出る。
204。
出る。
二〇三号室。
出る。
何でも。
書ける。
昨日の。
規則。
消えた。
久世へ。
見せる。
昼。
会議室。
「昨日、俺だけ203しか書けなかった」
「記録は?」
写真。
見せる。
203。
二〇三。
久世。
長く。
見る。
「動画は?」
「ない」
「他の人が試した記録は?」
「昨日は俺だけ」
「では」
「証明できない」
「はい」
腹が立つ。
正しいから。
榊。
ペン。
回す。
「ただのボールペンに見えます」
「昨日もそうだった」
「会社名は?」
「誰も知らない」
私は。
社内の取引先マスター。
仕入先。
廃業先。
旧コード。
検索。
〈東央事務用品株式会社〉
なし。
田所。
本社。
電話。
「聞いたことない」
「昔の販促品じゃない?」
「そう思う」
「なら何で電話してきた」
「何となく」
「お前、最近その何となく多いな」
切る。
久世。
「捨てますか」
私は。
ペンを見る。
何でも。
書ける。
普通。
「捨てない」
「なぜ」
「昨日、変だったから」
「証明できませんよ」
「だから」
透明な袋。
戻す。
「残す」
その日の夕方。
小野寺。
書庫から。
古い台帳。
持ってくる。
「課長」
「何」
「これ、探してました?」
開いたページ。
一行。
鉛筆。
薄い。
〈東央事務用品株式会社〉
あった。




