第53話 書けない
翌日。
ボールペン。
机。
東央事務用品株式会社。
朝から。
書けない。
コピー用紙。
付箋。
伝票の裏。
どれも。
出ない。
ペン先には。
インク。
ある。
「詰まってるだけだろ」
私は。
別の紙。
何となく。
数字を書く。
2。
青。
出た。
手が。
止まる。
0。
出る。
3。
出る。
203。
きれいに。
書けた。
「……何だこれ」
次。
202。
最初の2から。
出ない。
204。
出ない。
302。
出ない。
23。
出ない。
「数字じゃない」
私は。
203。
もう一度。
書く。
出る。
筆圧。
変える。
出る。
速く。
出る。
ゆっくり。
出る。
右手。
出る。
左手。
汚い。
でも。
出る。
漢数字。
二。
〇。
三。
二〇三。
出た。
背中。
少し。
冷える。
「文字を選んでる?」
違う。
試す。
二〇二。
出ない。
二〇四。
出ない。
二〇三号室。
書こうとする。
最初の。
二。
出ない。
私は。
ペンを置いた。
203。
だけ。
そう思って。
書くと。
出る。
二〇三。
だけ。
そう思って。
書くと。
出る。
「何を書こうとしてるか」
声に出して。
やめる。
決めない。
インクが。
たまたま。
出たり。
出なかったり。
しているだけかもしれない。
紙。
机。
湿度。
筆圧。
手の温度。
説明は。
いくつも。
作れる。
だから。
写真。
撮る。
203。
二〇三。
その二つ。
残して。
ペンを。
透明な袋へ。
入れた。
引き出し。
閉める。
昼。
普通に仕事。
見積。
電話。
納期。
十八時。
みんな。
帰る。
私は。
引き出しを見る。
開けない。
帰る。
エレベーター。
一階。
ドア。
開く。
そのとき。
思った。
私は。
あのペンで。
自分の名前を。
まだ。
書いていない。




