第49話 風のない日
朝。
風が。
なかった。
天気予報。
南風。
三メートル。
外。
木。
揺れる。
旗。
揺れる。
でも。
私の周りだけ。
何も。
カーテン。
動かない。
ベランダ。
煙草。
煙。
真上。
会社。
紙。
動かない。
気のせい。
そう言うには。
少し。
静かすぎた。
榊から。
電話。
「外へ出ないでください」
「なぜ」
「今日は風がない」
「気象上はある」
「あなたの周りにない」
それが。
何を意味するのか。
榊は。
言わなかった。
十分後。
久世。
「今日です」
「何が」
「開けます」
「榊は出るなって」
「だからです」
「君たち、仲悪いな」
「富樫さん」
声。
硬い。
「今日しかないかもしれません」
机。
二つの言葉。
出るな。
行け。
私は。
どちらも。
採用しない。
小野寺。
「はい」
「午後、俺いない」
「どこへ?」
「アパート」
「帰るんですか」
「うん」
「体調?」
「違う」
「じゃあ」
私は。
自分で決める。
「始まった場所を見る」
二〇三号室。
昼。
壁。
染み。
ない。
私は。
何もしない。
待つ。
一時間。
二時間。
夕方。
十八時四十七分。
壁。
薄い。
染み。
現れる。
煙草。
出す。
火は。
つけない。
染み。
濃くなる。
十九時一分。
音。
水。
十九時七分。
女。
――ここ。
私は。
壁から。
一歩。
離れる。
十九時十分。
ドア。
叩く。
久世。
「富樫さん!」
開けない。
十九時十一分。
廊下。
榊。
「開けるな!」
どちらを。
聞く。
どちらも。
聞かない。
十九時十二分。
私は。
壁を見る。
「俺が決める」
誰に。
言った。
分からない。
十九時十三分。
風。
来ない。
染み。
黒。
女の声。
――ここ、どこ?
私は。
答えなかった。
まだ。




