第48話 こちらから消えた人
女性。
写真。
市の古い行方不明記録。
新聞。
図書館。
一九八八年。
一件。
二十四歳。
名前。
水原佳奈。
会社員。
帰宅途中。
失踪。
車。
なし。
事件性。
不明。
記事の写真。
似ている。
「一年違う」
私。
久世。
「一九八八年に消えて、一九八九年の集合写真に写っている」
「同じ人なら」
「はい」
「でも、別人かもしれない」
「可能性はあります」
水原佳奈の家族。
両親。
すでに死亡。
妹。
連絡が取れた。
会えた。
六十代。
私は。
三崎物産の集合写真を見せた。
妹さんは。
泣かなかった。
ただ。
長く。
見た。
「姉です」
「本当に?」
「はい」
「この写真は、一九八九年に撮られています」
「姉がいなくなったのは一九八八年です」
「はい」
妹さん。
写真。
女性の左手。
指。
「この傷」
小さな。
白い線。
「子供の頃の火傷です」
私は。
何も言えない。
少なくとも。
妹さんは。
この女性を。
水原佳奈だと認めた。
「どこで撮ったんですか」
「三崎物産です」
「知らない会社です」
「お姉さんは?」
「たぶん、知らなかったと思います」
帰り。
私は。
写真を。
何度も見た。
水原佳奈。
一九八八年に。
こちらから消えた。
そして。
翌年の写真に。
写っている。
もし。
同じ人なら。
時間の順序が。
おかしい。
以前。
壁の向こうで見えた。
若い女性。
――ここ、どこ?
私は。
あれも。
同じ人だったのか。
そう思った。
でも。
決めない。
久世。
「向こうへ行った人間がいる可能性がある」
「可能性」
「戻せるかもしれない」
「可能性」
「富樫さん」
「何」
久世。
少し。
息を整える。
「それが、あなたのすることかもしれない」
私は。
止まる。
「決めるな」
久世。
口を閉じた。
風。
吹く。
強い。
封筒。
写真。
一枚。
飛ぶ。
私が。
掴む。
水原佳奈。
白いブラウス。
裏。
鉛筆。
薄い。
〈五番目ではない〉
誰の字。
いつの字。
何を数えた五番目なのか。
分からない。




