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第47話 彼女
女。
白い服。
水。
――ここ、どこ?
顔。
思い出せる。
でも。
描けない。
私は。
古い写真を見た。
一九八九年。
三崎物産。
倉庫前。
社内行事らしい。
集合写真。
端。
知らない女性。
白いブラウス。
二十代。
「社員?」
佐伯。
「知らない」
「当時の名簿は?」
「この人はいません」
久世も。
首を振る。
榊。
「見たことありません」
河西美津子さんへ。
写真を見せた。
手が。
止まった。
「この人」
「知ってます?」
「主人が」
写真へ。
指。
「探していました」
「誰なんです?」
「知りません」
「名前は?」
「聞いていません」
河西。
失踪前。
数週間。
女の人を。
探していた。
「なぜ」
「仕事だって」
「この写真は?」
「見たことありません」
「それでも、この人だと思う?」
美津子さん。
長く。
見る。
「似ています」
「何に」
「主人が描いた絵に」
絵。
残っていた。
押入れ。
古い封筒。
鉛筆。
女性。
顔。
不鮮明。
白い服。
その背後。
五本。
縦線。
「これ」
「主人が何度も描いていました」
裏。
文字。
〈水上〉
〈声〉
〈戻す〉
戻す。
開く。
ではない。
送る。
でもない。
戻す。
河西は。
何かを。
向こうへ送りたかったのではなく。
誰かを。
こちらへ。
戻そうとしていた?
そこまで考えて。
止めた。
絵と。
三つの言葉。
それだけだ。
女。
誰。
集合写真。
撮影日。
〈一九八九年八月十日〉
河西が消える。
前日。
偶然なら。
嫌な偶然だった。




