第46話 できる人
できる人。
何が。
できる。
私は。
河西の記録。
森山の記録。
自分のメモ。
机へ並べた。
河西。
〈分かった〉
森山。
〈分かった〉
私。
〈分からない〉
「違いはそれだけ?」
小野寺。
「何の話です?」
「独り言」
「怖いですよ」
昼。
私は。
仕事をする。
見積。
納期。
在庫。
人。
判断。
分からないこと。
多い。
それでも。
決める。
「課長、これAとBどっちです?」
「分からない」
佐伯。
「え」
「でもAで行こう」
「根拠は?」
「在庫と納期。外れたら俺が謝る」
佐伯。
少し笑う。
「了解」
分からない。
でも。
決める。
それは。
知っているふりをすることとは。
違う。
向こう側。
河西は。
理解しようとしていた。
森山も。
久世も。
記録を読む限り。
そう見える。
分からないものを。
分かりたい。
だから。
近づいた。
だから。
開いた。
そうだったのかもしれない。
私は。
違う?
いや。
私も。
知りたい。
ただ。
最近。
分からないものを。
分からないまま。
置ける。
能力か。
諦めか。
年齢か。
分からない。
夜。
スーパー裏。
榊。
缶コーヒー。
私。
煙草。
「できる人って何」
「知りません」
「君もそれか」
「本当に」
「河西にできなかった」
「はい」
「森山にも」
榊。
少し考える。
「たぶん」
「俺なら?」
榊。
私を見る。
風。
少し。
「あなたは、まだ何もしていません」
「それ、いいな」
「何が」
「ヒーローじゃない」
榊。
笑う。
「なりたかったんですか」
「少しだけ」
正直。
あの古い紙に。
自分の名前があったとき。
少し。
特別だと思った。
「残念でしたね」
「五番目だった」
「それも」
私は。
煙草へ火をつける。
「でもさ」
「はい」
「一番から四番は、ここにいない」
榊。
「久世さんに言われました?」
「何で分かる」
「言いそうだから」
煙。
一本。
風。
散る。
「最後に残るって」
私は。
考える。
「悪くない」
榊。
「勝ち負けですか」
「違う」
もう少し。
考える。
「見届けられる」
榊は。
何も言わなかった。
その顔が。
少し。
寂しそうだった。




