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第45話 久世の失敗

久世が。

来なかった。


一日。


二日。


三日。


電話。


出ない。


メッセージ。


既読なし。


私は。

一度だけ。


心配した。


二度目からは。


腹が立った。


四日目。


十八時。


三崎物産。


玄関。


久世。


立っている。


「遅い」


「すみません」


顔。


疲れている。


「何かあった?」


「少し」


「便利な言葉だな」


「富樫さんに言われたくありません」


会議室。


久世。


黒いファイル。


机へ置く。


「私は外れました」


「何から」


「担当です」


「俺の?」


「はい」


「なぜ」


紙。


三行。


〈富樫十兵衛への接触中止〉


〈観測対象外〉


〈追加接触を禁ず〉


私は。

読む。


もう一度。


読む。


「誰から」


「私たちの側からです」


「君の組織」


「はい」


「理由は」


「分かりません」


「俺が危険だから?」


「書かれていません」


「対象じゃないから?」


「それも、理由かどうかは分かりません」


観測対象外。


あの古い紙。


〈ここですることがある〉


正反対。


に見える。


でも。


同じ人間が。

書いたとは限らない。


同じ時代でもない。


私は。

紙を置く。


「従うの?」


「そのつもりでした」


過去形。


「今は?」


久世。


私を見る。


「来ました」


「命令を無視して?」


「はい」


「失敗?」


「はい」


「何が」


久世。


少し。

考える。


「私は、こういう命令に従う人間でした」


「わかりましたって?」


久世。


初めて。


声を出して。

笑った。


短く。


「そうかもしれません」


「じゃあ俺のせい」


「嫌な言い方ですね」


「事実?」


「少し」


窓。


風。


弱い。


久世が。

見る。


「富樫さん」


「何」


「私は、あなたの味方ではありません」


「知ってる」


「今も、向こう側を見たい」


「知ってる」


「必要なら、あなたを使うかもしれません」


「知ってる」


久世。


困った顔。


「それでも?」


「それでも何」


「私を、ここに置くんですか」


私は。

考える。


課長。


部下。


配置。


判断。


でも。


これは。


違う。


「置くとかじゃない」


「では」


「来たいなら来れば」


「危ないですよ」


「君が?」


「はい」


「風も危ない」


久世。


黙る。


「榊も怪しい」


「それはそうです」


「向こうも分からない」


「はい」


「森山も分からない」


「はい」


「俺も分からない」


私は。

少し笑う。


「全員、同じだ」


久世。


長く。


私を見る。


「五番目らしいですね」


「それ、悪口?」


「褒めました」


初めて。


久世との距離が。


少し。


近くなった。


だから。


私は。


一歩。


離れた。


信用した。


わけではない。


疑う理由が。


一つ。


増えただけだ。


それでも。


帰れとは。


言わなかった。

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