第42話 白紙
ファックスが鳴った。
午前十一時十三分。
小野寺。
「また紙切れじゃないですか?」
「昨日入れた」
佐伯。
「詰まり?」
機械。
ガガ。
一枚。
出る。
白紙。
私は。
立った。
「課長?」
白紙。
何もない。
それなのに。
嫌な感じだけ。
覚えている。
「捨てないで」
小野寺。
「何かあるんです?」
「分からない」
言い直した。
「だから見る」
窓際。
光へ。
透かす。
何も。
ない。
指で。
紙面をなぞる。
わずかな。
凹凸。
小野寺。
「圧痕じゃないですか」
「圧痕?」
「上に何か置いて書いたとか」
鉛筆。
横にして。
薄く。
こする。
一本。
二本。
三本。
四本。
五本。
縦線。
文章ではない。
「バーコード?」
佐伯。
「五本」
私。
小野寺。
「課長、最近“五”に縁ありますね」
「言うな」
送信履歴。
表示。
番号。
市外局番。
続く数字。
佐伯が。
画面を見る。
「あれ」
「知ってる?」
「昔の、うちの番号ですよ」
「三崎物産?」
「FAX専用です」
「いつまで」
「十年以上前だったと思います」
電話会社へ。
確認。
現在。
未使用。
割り当ても。
されていない。
「じゃあ、誰が送った」
誰も。
答えない。
午後。
久世。
白紙を。
机へ置く。
「五本」
「はい」
「五人?」
「分かりません」
「煙も五本」
「はい」
「候補も五人」
「はい」
「関係ある?」
「確認できません」
私は。
少し笑う。
「いい答え」
久世も。
わずかに笑う。
「学びましたね」
「君に言われたくない」
紙の裏。
何もない。
端。
小さな穴。
五つ。
等間隔。
「FAXのローラー?」
「位置が違います」
久世。
穴へ。
指を近づける。
私は止めた。
「触るな」
「なぜ」
「分からないから」
自分で言って。
少し。
可笑しかった。
窓。
閉まっている。
エアコン。
止まっている。
それでも。
紙が。
わずかに浮く。
風。
ほんの。
一瞬。
五つの穴から。
細い音。
笛。
にも。
息。
にも。
聞こえる。
――こ。
私は。
手を離した。
久世。
「聞こえました?」
「聞こえた」
「何て」
「分からない」
白紙を。
封筒へ入れる。
その夜。
二〇三号室。
机。
封筒。
もう一度。
開く。
五本の線。
変わっていない。
そう思った。
でも。
一番右。
途中で。
薄く。
切れている。
最初から。
そうだったのかもしれない。
私は。
写真を撮った。
そして。
封筒へ戻した。
意味は。
まだ。
つけない。




