第37話 風を追うな
風を追うな。
榊は言った。
だから。
追った。
私はノートを作った。
日付。
時刻。
場所。
風向。
気象庁の記録。
自分が感じた風。
一致。
不一致。
七日。
十一回。
不一致。
三回。
一回目。
旧取水施設。
二回目。
会社。
三回目。
アパート。
共通。
私が。
何かをしようとした直前。
風は。
進行方向から吹いている。
止めるように。
そう見えた。
なら。
逆へ行く。
土曜日。
午後。
会社前。
風。
南西。
気象データ。
北東。
逆。
私は。
南西へ歩いた。
駅。
商店街。
住宅地。
川。
一時間。
風。
弱くなる。
公園。
古い。
滑り台。
ブランコ。
ベンチ。
一人。
老人。
新聞。
私は立ち止まる。
風。
止まる。
「ここ?」
何もない。
公園の端。
小さな石碑。
〈平成十七年 区画整理記念〉
裏。
協賛企業。
三崎物産。
北辰商会。
そして。
一社。
見覚え。
昔。
彼女の父親の会社。
私は石碑へ近づく。
「懐かしい名前ですね」
老人。
「知ってるんですか」
「昔、この辺に会社がありました」
「どこ」
老人。
公園の向こう。
マンション。
「そこ」
「何の会社」
「紙箱」
私は。
息を止めた。
紙箱。
十万円。
彼女。
最後。
渡された。
あの箱。
「会社名」
聞く。
老人。
石碑を指す。
同じ。
私はスマホで検索。
廃業。
二十年前。
代表。
彼女の父親。
公園。
風。
また。
吹く。
今度は。
帰れと。
言っているように。
そう感じた。
「風を追うな」
背後。
声。
榊。
私は振り返る。
「いたのか」
「来ました」
「なぜ」
「あなたが追ったから」
「ここ知ってる?」
榊は石碑を見る。
「知りませんでした」
「嘘」
「本当です」
「じゃあ何で来た」
榊。
私を見る。
「風を追う人を」
少し。
間。
「追っています」




