第35話 残った人間
河西。
森山。
富樫。
三人。
五番目。
偶然。
まず。
河西。
古い人事台帳。
久世が持ってきた。
一九八九年。
三崎物産。
課長候補。
五名。
一番。
本社昇進。
二番。
結婚に伴う勤務地希望。
三番。
親会社プロジェクト。
四番。
本人辞退。
五番。
河西正臣。
次。
森山。
一九九八年。
五名。
一番。
営業所長。
二番。
海外。
三番。
家族事情。
四番。
転職。
五番。
森山孝一。
「同じ」
私。
久世。
「はい」
「君たちがやった?」
「違います」
「じゃあ誰」
「分かりません」
「調べてなかったの」
「河西さんと森山さんが五番目だったことは知っていました」
「俺も五番目」
「それは赴任後に知りました」
私は久世を見る。
「怖かった?」
「少し」
初めて。
素直。
候補者。
十五人。
調べた。
死者。
なし。
不審事故。
なし。
失踪。
なし。
犯罪。
なし。
昇進。
結婚。
転職。
海外赴任。
家族。
普通。
人生。
「排除されたんじゃない」
私。
久世。
「そう見えます」
「みんな自分で選んでる」
「はい」
「じゃあ」
何だ。
誰かが。
五人目以外を。
幸せにした?
馬鹿らしい。
「富樫さん」
久世。
「選択肢を消す方法は」
「何」
「不幸だけではありません」
「どういう意味」
「行きたい場所を与えれば、人はそちらへ行きます」
私は。
西村を思い出した。
希望していたシンガポール。
高橋。
昇進。
坂口。
家。
「誰かが望みを叶えた?」
「それなら神様ですね」
久世は笑う。
「君が言うと怖い」
「私もそう思います」
資料。
五人。
五人。
五人。
最後。
残った。
人間。
私は思う。
選ばれたのではない。
残された。
いや。
残るように。
周りの道が。
開いていった。
そのとき。
風。
会議室。
窓。
閉まっている。
十五枚の候補者資料。
四人。
四人。
四人。
紙が。
机から落ちる。
一枚。
また一枚。
床へ滑る。
久世は拾わない。
私も。
動かなかった。
風が止む。
机の上。
残ったのは。
河西。
森山。
富樫。
三枚。
久世と。
私。
しばらく。
動かなかった。




