第34話 歓迎会
金曜日。
歓迎会。
赴任して。
ずいぶん経った。
「遅すぎません?」
小野寺。
「俺が断ったから」
「知ってます」
駅前。
居酒屋。
座敷。
全員は無理だったが。
十五人。
アルバイト二人。
佐伯。
小野寺。
石井。
山根。
知らなかった顔も。
ちゃんと名前を覚え始めていた。
「課長、乾杯」
「何に」
「歓迎に決まってるでしょう」
「もう歓迎される時期じゃない」
笑い。
ビール。
枝豆。
刺身。
唐揚げ。
普通。
私は。
こういう席が嫌いだった。
会社の人間と。
仕事以外の話をする。
意味がないと思っていた。
でも。
石井に高校生の娘がいること。
小野寺が猫を二匹飼っていること。
佐伯が離婚していること。
山根さんの孫が恐竜好きなこと。
知らなかった。
知っても。
仕事は変わらない。
でも。
少し。
会社が違って見えた。
二時間。
佐伯。
酔う。
「課長」
「はい」
「河西さん、調べてるでしょう」
箸が止まる。
「何で」
「分かりますよ」
「何を知ってる」
「昔ね」
佐伯。
グラスを揺らす。
「河西さんも、課長になる予定じゃなかったんですよ」
「どういう意味」
「別の人が来るはずだった」
私は身を乗り出す。
「誰」
「名前......」
佐伯。
目を閉じる。
「何だっけな」
「何人いた?」
「候補?」
「うん」
佐伯。
指。
一本。
二本。
三本。
四本。
五本。
止まる。
「五人」
背中。
冷える。
「河西さんは?」
「最後」
私は。
何も言わなかった。
小野寺が向こうで笑っている。
山根さん。
デザート。
店員。
注文。
世界。
普通。
「佐伯さん」
「はい」
「森山さんは」
佐伯の目。
少し開く。
「森山さんもね」
「うん」
「最初じゃなかった」
「何番目」
佐伯。
笑う。
「何でそんなこと聞くんです?」
「気になるから」
「課長」
「何」
「仕事好きになりました?」
「全然」
佐伯。
大笑い。
そして。
小さく。
「五番目ですよ」
五。
河西。
森山。
私。
その夜。
私は。
初めて。
五本の煙を。
数字として見た。




