第33話 五番手
人事候補。
田所に頼み込んだ。
「これ以上は本当に怒られるぞ」
「最後」
「お前の最後、最近多い」
会議室。
端末。
三崎物産課長後任候補。
五名。
一番。
高橋。
営業企画。
二番。
西村。
購買。
三番。
坂口。
関連会社。
四番。
黒田。
総務。
五番。
富樫十兵衛。
「五番目」
私。
田所。
「お前、評価低かったんじゃない?」
「うるさい」
候補登録日。
六月十三日。
五人同時。
その後。
高橋。
六月十七日。
部長昇進内示。
候補外。
西村。
六月二十日。
シンガポール案件。
本人希望。
候補外。
坂口。
六月二十二日。
住宅購入に伴う転勤猶予申請。
候補外。
黒田。
六月二十五日。
関連会社出向。
候補外。
六月二十六日。
富樫。
内定。
全部。
普通。
誰も事故に遭っていない。
誰も脅されていない。
むしろ。
高橋は昇進。
西村は希望案件。
坂口は家を買った。
黒田も出向先で役職が上がった。
「お前」
田所が画面を見る。
「選ばれたっていうより」
「何」
「残ったんだな」
残った。
私はその言葉をメモした。
「過去も見られる?」
「何の」
「松永さん」
検索。
十数年前。
三崎物産。
後任候補。
四名。
松永は。
四番目。
「また最後」
田所。
「偶然だろ」
「そうだな」
私は答えた。
本当に。
そう思いたかった。
*
帰り。
久世から電話。
「何を調べています?」
「俺の人事」
「そうですか」
「知ってた?」
「五番手だったことですか」
私は立ち止まる。
「知ってたんだな」
「はい」
「なぜ言わない」
「聞かれ――」
「それ禁止」
久世が。
電話の向こうで笑った。
「では、言い直します」
「うん」
「重要だと思っていませんでした」
「今は?」
少し。
沈黙。
「重要かもしれません」
「河西も調べたい」
「できます」
「森山も」
「はい」
「久世」
「何でしょう」
「俺をここへ送ったの」
一拍。
「君たち?」
長い。
沈黙。
「いいえ」
即答ではなかった。
だから。
少しだけ。
信じた。




