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第29話 203ではない

203。


意味がない。


榊は言った。


私は。


それを確かめることにした。


アパート管理会社。


「203号室はいつから203ですか」


電話の女性が困る。


「建築時からだと思いますけど」


古い図面。


昭和四十八年。


二階。


201。


202。


203。


普通。


三崎物産。


備品台帳。


机203。


購入時に順番で付番。


201。


202。


203。


204。


普通。


旧字水上203。


地番。


202。


203。


204。


普通。


私は机へ資料を並べた。


「本当に意味ない」


私は資料を見ながら呟いた。


「何がです?」 小野寺。


「何がです?」


「203」


「そりゃ数字ですから」


正しい。


私は笑った。


全部。


私は紙を一枚ずつ離して置いた。 アパート203。 机203。 旧地番203。


離して見れば、ただの三つの記録だ。 重ねたのは私だった。


私が勝手に繋げた。


怪異に意味を求め。


同じ数字を見つけ。


喜んでいた。


久世へ電話した。


「203、関係ないかもしれない」


「そうですか」


「驚かない?」


「数字自体には意味がないと思います」


「知ってた?」


「はい」


腹が立つ。


「早く言え」


「聞かれなかったので」


「それ禁止」


久世が笑う。


「分かりました」


また。


*


それでも。


一つだけ。


気になった。


三崎物産の机。


203。


森山が座った。


河西も。


私も。


なぜ同じ机。


席替え。


異動。


偶然。


アパート。


会社借上げ。


なぜ203。


総務へ聞く。


空室だったから。


普通。


旧水上203。


スーパー。


なぜそこ。


店舗開発。


土地が安かった。


普通。


全部。


理由がある。


夕方。


私は一度、資料を片づけた。 今日はここまでにしようと思った。

意味のない数字を追って一日を使う方が、よほど数字に支配されている。


そのとき。


小野寺が言った。


「課長、これ」


古い社宅手配書。


私の赴任時。


〈希望条件:単身、1DK、会社徒歩圏〉


候補。


五部屋。


201。


105。


305。


203。


102。


決裁。


203。


決裁者。


森山孝一。


私は息を止めた。


「森山?」


「変ですよね。森山さん、もう本社の担当じゃないのに」


日付。


私の赴任。


一か月前。


さらに。


机の配置変更。


2004年。


河西失踪後。


203番机を。


森山が自分の席へ移している。


その後。


森山の異動。


机は。


課長席へ。


203が。


現れるのではない。


選ばれている。


誰かが。


数字を合わせている。


旧水上203は変えられない。


だから。


机を203にした。


部屋を203にした。


「誰が」


私。


小野寺。


「何です?」


「いや」


私は久世へ電話する。


出ない。


もう一度。


出ない。


メッセージ。


〈203を選んだのは誰だ〉


既読。


返事。


なし。


五分。


十分。


十三分。


返信。


〈森山さんです〉


その下。


もう一つ。


〈少なくとも、二回目までは〉


二回目。


なら。


三回目は。


誰が選んだ。


私は自分の赴任辞令を見る。


三崎物産。


課長。


人事決裁。


本社。


推薦者。


空欄。


承認時刻。


02:13。


背中。


汗。


203には。


たぶん。


それ自体には意味がない。


だからこそ。


怖かった。


誰かが。


意味を与えている。


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