第19話 十三分
河西の手帳から、規則が一つ見つかった。
13。
時刻ではない。
すべてが二時十三分ではなかった。
〈14:13〉 〈17:13〉 〈02:13〉 〈20:13〉
十三分。
以前。
二十時十三分に十三回の音が止まった。
私は過去の記録を並べた。
森山の電話。
河西失踪。
白紙FAX。
十三分。
久世は横で見ていた。
「十三分ごと?」
「違う」
私は時計を見る。
「毎時十三分」
「何が起きるんです?」
「分からない」
「確かめますか」
その言葉。
久世からだった。
私は顔を上げる。
「どうやって」
「一番記録が多い場所で」
スーパーの倉庫。
水上203。
私は即答しなかった。
風。
立ち止まれ。
「今日の二十時十三分」
久世が言う。
「スーパーはまだ営業しています。危険ならすぐ出られる」
理屈は通っている。
「行こう」
夜。
フレッシュマートみなみ。
店内は明るい。
惣菜。
家族。
レジ。
日常。
裏へ回る。
倉庫。
南京錠。
203。
鍵。
開く。
久世はそれを見ても驚かなかった。
「その鍵、どこで?」
「会社の応接室」
「そうですか」
倉庫。
木箱。
2004.8.10。
13。
203。
〈二回目〉。
時計。
20:09。
20:10。
煙草へ火をつける。
久世が言った。
「ここで?」
「煙があった方が分かる」
「森山さん」
「知ってるんだ」
「資料で」
20:11。
煙。
上へ。
20:12。
煙が。
横へ伸びた。
風はない。
五本。
細い筋。
私は息を止める。
20:13。
倉庫の奥。
壁が。
濡れた。
黒い染み。
あの夜と同じ。
広がる。
久世は逃げない。
むしろ。
一歩。
近づいた。
「久世」
返事がない。
染み。
中央。
奥行き。
壁ではない。
暗い。
遠い。
何か。
巨大なもの。
見える。
いや。
見てはいけない。
そう思った。
久世が。
私の腕を掴む。
「もう少し」
声。
初めて聞く声だった。
冷たい。
「もう少し見て」
私は。
見ようとした。
その瞬間。
風。
あり得ない。
倉庫の中。
閉じた扉。
風が。
横から叩いた。
煙が五本の線を崩す。
染みが揺れる。
久世の手が離れる。
木箱の紙が舞う。
〈二回目〉。
裏返る。
その裏。
文字。
〈三回目 開く〉
私は読んだ。
久世も。
読んだ。
染みの奥から。
音。
ザー。
波。
そして。
声。
女。
――ここ、どこ?
私は後ずさる。
風。
さらに強い。
倉庫の扉が。
勝手に開いた。
外。
スーパーの明かり。
私は走った。
久世も出る。
外へ出た瞬間。
風は止まった。
倉庫。
静か。
「今のは」
私が言う。
久世は。
いつもの顔へ戻っていた。
「帰りましょう」
「説明しろ」
「ここでは嫌です」
「なぜ」
久世は倉庫を見る。
「まだ、向こうが近い」
初めて。
彼女は。
向こう。
と、言った。




