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『舞台裏のシステムを視る —— 表現と社会の往還』   作者: あっちゅ寝太郎


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幸豊かな国の食――新潟、土地の記憶

【第3話】平野の奇跡:水、水はけ、土が魅せる「本物の米」

第1話で語った山菜を育む山の土、第2話で岩ガキを太らせる日本海のプランクトン。新潟という幸豊かな土地がもたらす大自然の循環は、最後にすべてが一つの生命力に満ちた結晶となって、この広大な平野へと行き着く。それが、我々が日々口にする「米」である。

世間一般の食通を気取る連中は、米を「主食」と呼び、あくまでおかずの旨味を引き立てるための「最高の脇役」として位置づけがちだ。しかし、新潟の本当に極まった米を前にしたとき、その常識は容易に引っくり返る。おかずを従えるのではない。おかずのすべてを完璧な脇役へと退け、それ単体で箸が止らなくなるほどの圧倒的な主役――「メインディッシュ」として君臨する米が、この平野には確かに存在するのだ。

だが、世間の人間はただ目の前に広がる美田と「魚沼産コシヒカリ」という五文字の記号だけを見て、うわべの知識で「やっぱり魚沼は違うねぇ」と分かった風な顔をする。彼らは、その平野が持つ本当の顔を知らない。

この日本一の米どころたる新潟平野は、今でこそ見渡す限りの黄金色の絨毯が広がっているが、かつては腰まで浸かる「底なしの沼」が一面に広がる巨大な湿地帯だった。信濃川や阿賀野川といった暴れ狂う「大河」が、幾度となく氾濫を繰り返し、山から莫大なミネラルを蓄えた豊かな泥(土)を運んできた場所なのである。先人たちはその大河の脅威と闘い、汗と泥にまみれ、命を懸けて溝を掘り、泥を上げ、何世代もかけて「水はけ」を改良し、美田へと変えてきた。この大河の恩恵と、水はけを勝ち取ってきた執念の歴史があるからこそ、今の新潟の米があるのだ。

平成の大合併を経て行政の枠組みが広がり、十日町の広大な信濃川沿いの平地までが一括りに「魚沼産」の大看板を背負わされて出荷されるようになった現状への憂いはある。だが、ここで誤解してほしくないのは、魚沼の米は平地も含めて「全体的に、文句なしに桁違いに旨い」ということ。そして、魚沼という名がなくとも、大河の豊かな土壌を受け継いだ広大な新潟平野の平地で獲れる米だって極めて優れている。

あの夏の太陽の光を限界まで浴びて育った平地米の「炊きたて」の旨さは格別だ。パカッと炊飯器の蓋を開けた瞬間に立ち上る甘い湯気。内釜の中で一粒一粒が自立し、眩いばかりの銀色の光を放つあのツヤ。口に運んだ瞬間に広がるふくよかな香りと適度な弾力は、他県の追随を許さない圧倒的な実力を持っている。

だが――その極めて高い平均値をさらに突き抜け、完全に別格の輝きを放つ「奇跡の特等席」が、大河のさらに上流、南魚沼の奥深くに存在する。

それが、南魚沼の中でもさらに限られた、「塩沢から湯沢にかけての一部、国道17号を上る左手の山あい」(魚野川の東側、三国山脈の麓の傾斜地)である。

なぜ、このわずかな傾斜地で獲れる米だけが、他を圧倒する真のメインディッシュになり得るのか。その秘密こそ、大河の源流がもたらす「水、水はけ、土」の三位一体のメカニズムにある。

まずは**【水】だ。平地に降りて生活排水や他の田んぼの水分が混ざる前、三国山脈の険しい山々から湧き出たばかりの、これ以上ないほど冷たく清らかな雪解けの一番水が、直接この山あいの田んぼに注ぎ込む。

次に【水はけ】。かつて平野の先人たちが血を吐く思いで追い求めた水はけが、この山の傾斜地には天然の恩恵として最初から備わっている。水が一日中淀むことなく流れるため、常に新鮮な水と酸素が土壌を巡り、稲の根が腐ることなく、大地の栄養を求めて地中深くへと力強く伸びていく。

そして【土】**。大河が下流へ運ぶ前の、気が遠くなるような年月をかけて山から崩れ、堆積したばかりの新鮮でミネラル豊富な火山灰土や粘土質の土壌。

この三つの奇跡が完璧に噛み合ったとき、お米は強烈な粘りと、噛むほどに脳を揺さぶるような深い甘み、そして冷めてもなお一粒一粒の輪郭がはっきりと主張する、至高のコシヒカリとなる。

この山手の誇りは、十日町の峻険な山沿いや棚田を守り続ける農家たちの意地とも深く響き合っている。平地での大規模効率化の波に背を向け、山の陰影がもたらす強烈な昼夜の寒暖差を味方につけ、手間を惜しまず本物を作り続けるプライド。これこそが、大河と平野と山が起こした、隠された本当の宝なのだ。

第1話で味わった山の山菜、第2話で堪能した海と湖の牡蠣。それら新潟のすべての贅沢を受け止め、至高の宴を完結させるための最高の舞台。炊きたてのツヤに目を細め、かつて泥沼だった平野の歴史と、あの「17号の左手」の美しい傾斜地に思いを馳せるとき、我々はこの地が起こした奇跡の重みと、そこに生きる人々の手のぬくもりを、真に噛み締めるのである。

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