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ただの人也。  作者: 梅酒
彷徨う魂
5/51

005「崩壊した町で 5」

 非日常の危険な世界で半日歩き続け、遭遇した変異体とも戦い、ようやく目的の施設に辿り着いた仁成は、安全とは言えない中でも月夜たちを信じて眠りについた。

 夢を見ないほどの眠りは、この世界に来てから初めてのことだった。それだけ、仁成は常に緊張の中で暮らしていたということだろう。


 まだ日が昇らない時間に目を覚ました仁成は、固まった身体を解すように大きく伸びをしながら、琥珀と千影の温もりを感じそっとその毛並みを撫でる。

 二頭ともぐっすり寝ている様に見えたが、仁成が動いたことで少しだけ瞼を上げて見詰めていた。

「まだ寝てていぞ」

 小声で告げると、二頭ともまた瞼を閉じて寝に入った。

 月夜は何処だと暗闇の中で視線を動かすと、黄色く光る双眸と目が合う。彼女は仁成の足元で丸くなっていた。

 それを確認した仁成は再び眼を閉じて、暗闇の中でこれからのことを、そして変異体について考えていた。


 ホムセンに来た目的は物資の確保もあるが、荷物を運ぶためのカートの改造、もしくは今使っている物よりも積める量が多く、性能も良い物があればそれに換えたいと考えていた。これは予想外の同行者(月夜たち)が加わったことで、彼女達の食料を積むためである。

 出来る事ならカートを琥珀か千影に引かせ、戦闘時はすぐに外せるようなギミックを追加したいが、残っている材料次第では諦めることにしている。さらに昨夜から使っているこの寝袋など、野外で過ごすための道具類も揃えたいと考えていた。

 それは、町から脱出することに他ならない。

 ここまで町を探索して気付いたことは、仁成の予想が外れていたということ。

 当初は町の中心にある謎の丸い物体から離れれば、変異体の数も減り、強個体もほぼいないのではないかと予想していた。

 だが、それは間違っていた。町の北に広がる耕作地帯では、月夜よりも大きい熊が拳大のスズメバチと激しい戦いを繰り広げていた。最初の拠点である整備場の近くにも、月夜程の体躯を持つ変異体がいるのを遠目に確認した。スズメバチや蜘蛛など小さな昆虫や動物でさえ変異している事も仁成には予想外だった。

 ただ目撃数が極端に少ない事から、小さな動物や昆虫は変異しにくいか、上位の捕食者によって強個体に変異する前に狩られているからではないかと予想も出来る。

 しかし、蟻や蜂の様な百を超える群れで生活する動物なら、変異する可能性が高いのではないかとも考えられた。

 今の仁成には情報が少ない。ただその一言に尽きる。

 何故変異体がいるのか。町の中心にあるあの物体は何なのか。人は何処にいるのか。町から離れた先に変異体はいるのか。様々な疑問が仁成の頭の中で巡っては、また違う疑問が浮かんで来る。

 そうしているうちに、また寝入っていた。


 二度寝から起きると既に外は明るくなっていた。だが、店内は出入り口付近以外は薄暗いまま。店の奥に至ってはかなり暗い。

「始めるかぁ」

 のそりと起きた仁成は、店内の商品配列から予想して入口から真っ直ぐ店の奥に歩いて行く。

 今仁成が歩いている場所には、昨夜拝借したアウトドア商品が並ぶ棚と、文房具やカー商品などが陳列された棚が並んでいる。そこからさらに奥に行くと、店内の端から端まで貫く通路を挟んだ先に、仁成は目当ての物を見つけた。

「こっちの世界でも大体同じなんだな」

 彼の目の前にはペット用品が陳列された棚が二列並んでいた。その中から月夜たちの食べ皿と水皿を適当に選び、月夜厳選のドッグフードを持って再び入口まで戻る。

 三頭それぞれに食事を用意した仁成は、入口に貼られていた店内地図を見ながら昨夜と同じ携帯食で食事を済ませた。


 地図によると店内配置はほぼ仁成が想像していた通りだった。レジが置かれている中央入口から北東エリアには一般的な日用品から調理器具などが続き、仁成がいる北出口前は先程歩いて見た通りの商品が並んでいる。

 北東後列には北側からペット用品に始まり、家具、寝具、電灯などが続き、そこから南西側に入る。

 西側後列には水道や電気関連の部品が続き、洗面台やトイレも置かれている様だった。さらに南に進むとネジやナットなどの機械用品部品が並ぶエリアに入る。そして南西端に木材や合板、鉄筋などの資材エリアがまとめて置かれている。そこから北西エリアにはチェーンソーや草刈り機といった工作、園芸などに使われる機械や関連商品が続き、肥料や除草剤などもそこにある。

 そして南から中央入口に向かうと、衣服類エリアになっている。

 表記はされていないが、飲料水などはレジ近くにあるのだろう。それに店の奥には倉庫があれば、段ボールに入ったままの状態の商品も見つかるかもしれない。

 少しの期待を抱きながら、食べ終わった携帯食のゴミをその場に捨てると、仁成は月夜たちの食事が終わるのを待つのだった。



 スーパーマーケットとは違い、このホムセンが無事だった理由は分からない。しかし、そのおかげで仁成は様々な工具を含む物資を手に入れることが出来る機会を得た。

 仁成はまず、入口近くにあった自転車類と積もった埃を片付けると、そこに物資集積所を作った。そこに必要となる物資を纏めて置き、後に選別を行う予定にした。

 それが終わると、買い物カートを押しながら日用品類の確保から始める。

 歯ブラシやトイレットペーパー、ポケットティッシュなど必要となりそうな物は目に付いたものから片っ端にカートに放り込み、集積所に運び込む。

 ここで手に入れた一番嬉しかったものは、除菌シートや汗拭きシートだった。これまで仁成は風呂に入っていない。頭何てぼさぼさのまま、何時しか痒みも全く気にならなくなっていた。

 頭は洗えないが、これらのシートで身体は幾分か拭けるようになる。出来るだけ持ち出したいと思い、大量に集積所に運び込んだ。ついでに出発前に全身を拭くつもりでいる。


 続けて衣類。今仁成が着ているのは服は、警察署で手に入れた戦闘服に近いもの。軍で言えば迷彩服の様な物だろう。一緒に手に入れたタクティカルベストと共相性が良く、この服から替えるつもりは今のところない。

 今必要としているのは下着類である。パンツ、シャツ、靴下はもちろんだが、手袋類も数個欲しいと思っていた。

 その他で言えば合羽や帽子と靴。合羽はポンチョの様な羽織るだけのタイプにした。靴は歩きやすさと頑丈さを重視で選び、出発前に履き替える。帽子は適当に視界を塞がない程度の鍔が短めの物を選んだ。


 さらに南に行くと電動工具から草刈り機などが並んでいるエリアに入るが、仁成は一瞥もすることなく通り過ぎた。

 此処に在るものはほぼ使えない。電源を確保できないし、ポータブル発電機は重すぎて持ち運ぶには邪魔になる。持ち運ぶとしたら鋸など電機も燃料も必要としないものだろう。

 それらが置いてある棚が見えると、仁成は一応覗いてみることにした。

 仁成が持っている工具は全てプラモ用に買った小さな工具が多い。鋸も手の平サイズの目も細かいものは持っているが、それで硬い枝を切れと言われても時間は相当かかるだろう。

 棚には大小様々な鋸や鎌などが並んでいるが、その中で仁成の目に留まったのだ 非日常の危険な世界で半日歩き続け、遭遇した変異体とも戦い、ようやく目的の施設に辿り着いた仁成は、安全とは言えない中でも月夜たちを信じて眠りについた。

 夢を見ないほどの眠りは、この世界に来てから初めてのことだった。それだけ、仁成は常に緊張の中で暮らしていたということだろう。


 まだ日が昇らない時間に目を覚ました仁成は、固まった身体を解すように大きく伸びをしながら、琥珀と千影の温もりを感じそっとその毛並みを撫でる。

 二頭ともぐっすり寝ている様に見えたが、仁成が動いたことで少しだけ瞼を上げて見詰めていた。

「まだ寝てていぞ」

 小声で告げると、二頭ともまた瞼を閉じて寝に入った。

 月夜は何処だと暗闇の中で視線を動かすと、黄色く光る双眸と目が合う。彼女は仁成の足元で丸くなっていた。

 それを確認した仁成は再び眼を閉じて、暗闇の中でこれからのことを、そして変異体について考えていた。


 ホムセンに来た目的は物資の確保もあるが、荷物を運ぶためのカートの改造、もしくは今使っている物よりも積める量が多く、性能も良い物があればそれに換えたいと考えていた。これは予想外の同行者(月夜たち)が加わったことで、彼女達の食料を積むためである。

 出来る事ならカートを琥珀か千影に引かせ、戦闘時はすぐに外せるようなギミックを追加したいが、残っている材料次第では諦めることにしている。さらに昨夜から使っているこの寝袋など、野外で過ごすための道具類も揃えたいと考えていた。

 それは、町から脱出することに他ならない。

 ここまで町を探索して気付いたことは、仁成の予想が外れていたということ。

 当初は町の中心にある謎の丸い物体から離れれば、変異体の数も減り、強個体もほぼいないのではないかと予想していた。

 だが、それは間違っていた。町の北に広がる耕作地帯では、月夜よりも大きい熊が拳大のスズメバチと激しい戦いを繰り広げていた。最初の拠点である整備場の近くにも、月夜程の体躯を持つ変異体がいるのを遠目に確認した。スズメバチや蜘蛛など小さな昆虫や動物でさえ変異している事も仁成には予想外だった。

 ただ目撃数が極端に少ない事から、小さな動物や昆虫は変異しにくいか、上位の捕食者によって強個体に変異する前に狩られているからではないかと予想も出来る。

 しかし、蟻や蜂の様な群れで生活する動物なら、変異する可能性が高いのではないかとも考えられた。

 今の仁成には情報が少ない。ただその一言に尽きる。

 何故変異体がいるのか。町の中心にあるあの物体は何なのか。人は何処にいるのか。町から離れた先に変異体はいるのか。様々な疑問が仁成の頭の中で巡っては、また違う疑問が浮かんで来る。

 そうしているうちに、また寝入っていた。


 二度寝から起きると既に外は明るくなっていた。だが、店内は出入り口付近以外は薄暗いまま。店の奥に至ってはかなり暗い。

「始めるかぁ」

 のそりと起きた仁成は、店内の商品配列から予想して入口から真っ直ぐ店の奥に歩いて行く。

 今仁成が歩いている場所には、昨夜拝借したアウトドア商品が並ぶ棚と、文房具やカー商品などが陳列された棚が並んでいる。そこからさらに奥に行くと、店内の端から端まで貫く通路を挟んだ先に、仁成は目当ての物を見つけた。

「こっちの世界でも大体同じなんだな」

 彼の目の前にはペット用品が陳列された棚が二列並んでいた。その中から月夜たちの食べ皿と水皿を適当に選び、月夜厳選のドッグフードを持って再び入口まで戻る。

 三頭それぞれに食事を用意した仁成は、入口に貼られていた店内地図を見ながら昨夜と同じ携帯食で食事を済ませた。


 地図によると店内配置はほぼ仁成が想像していた通りだった。レジが置かれている中央入口から北東エリアには一般的な日用品から調理器具などが続き、仁成がいる北出口前は先程歩いて見た通りの商品が並んでいる。

 北東後列には北側からペット用品に始まり、家具、寝具、電灯などが続き、そこから南西側に入る。

 西側後列には水道や電気関連の部品が続き、洗面台やトイレも置かれている様だった。さらに南に進むとネジやナットなどの機械用品部品が並ぶエリアに入る。そして南西端に木材や合板、鉄筋などの資材エリアがまとめて置かれている。そこから北西エリアにはチェーンソーや草刈り機といった工作、園芸などに使われる機械や関連商品が続き、肥料や除草剤などもそこにある。

 そして南から中央入口に向かうと、衣服類エリアになっている。

 表記はされていないが、飲料水などはレジ近くにあるのだろう。それに店の奥には倉庫もあるはず。そこに行けば、段ボールに入ったままの状態の商品も見つかるかもしれない。

 少しの期待を抱きながら、食べ終わった携帯食のゴミをその場に捨てると、仁成は月夜たちの食事が終わるのを待つのだった。



 スーパーマーケットとは違い、このホムセンが無事だった理由は分からない。しかし、そのおかげで仁成は様々な工具を含む物資を手に入れることが出来る機会を得た。

 仁成はまず、入口近くにあった自転車類と積もった埃を片付けると、そこに物資集積所を作った。そこに必要となる物資を纏めて置き、後に選別を行う予定にした。

 それが終わると、警察署から持ち出したランプで足元を照らしながら、買い物カートを押して日用品類の確保から始めた。

 歯ブラシやトイレットペーパー、ポケットティッシュなど必要となりそうな物は目に付いたものから片っ端にカートに放り込み、集積所に運び込む。

 ここで手に入れた一番嬉しかったものは、除菌シートや汗拭きシートだった。これまで仁成は風呂に入っていない。頭何てぼさぼさのまま、何時しか痒みも全く気にならなくなっていた。

 頭は洗えないが、これらのシートで身体は幾分か拭けるようになる。出来るだけ持ち出したいと思い、大量に集積所に運び込んだ。ついでに出発前に全身を拭くつもりでいる。


 続けて衣類。今仁成が着ているのは服は、警察署で手に入れた戦闘服に近いもの。軍で言えば迷彩服の様な物だろう。一緒に手に入れたタクティカルベストと共相性が良く、この服から替えるつもりは今のところない。

 今必要としているのは下着類である。パンツ、シャツ、靴下はもちろんだが、手袋類も数個欲しいと思っていた。

 その他で言えば合羽や帽子と靴。合羽はポンチョの様な羽織るだけのタイプにした。靴は歩きやすさと頑丈さを重視で選び、出発前に履き替える。帽子は適当に視界を塞がない程度の鍔が短めの物を選んだ。


 さらに南に行くと電動工具から草刈り機などが並んでいるエリアに入るが、仁成は一瞥もすることなく通り過ぎた。

 此処に在るものはほぼ使えない。電源を確保できない問題もあるが、そもそも嵩張る。ソーラ発電式のポータブル発電機もあるにはあったが、重すぎて持ち運ぶには邪魔になる。持ち運ぶとしたら鋸など電力も燃料も必要としないものだろう。

 さらに一列進むと鋸や鎌などが置いてあるのが見えると、仁成は一応覗いてみることにした。

 仁成が依然持っていた工具は、全てプラモ用に買った小さな工具が多い。鋸も手の平サイズの目も細かいものは持っているが、それで硬い枝を切れと言われても時間は相当かかるだろう。

 棚には大小様々な鋸や鎌などが並んでいるが、その中で仁成の目に留まったのが「金属加工」の文字が目立つ、片刃鋸。大きさも持ち運ぶのに邪魔にならない程度しかなかったので、一つだけカートに放り込んだ。

 その他に目ぼしいものはなく、ドライバーなどの工具も整備場で手に入れたツールで今のところ間に合っているためこれらも素通りしつつ、板材が置かれた列に辿り着いた。

 ここから南のエリアは資材関連が並んでいたが、ここも今は用は無いため店の奥側の棚に向かうことにした。

 南奥側はネジなどの機械部品製品が並ぶエリア。これも今はまだ必要ないと判断し、次に向かう。

 その後も電機、水道、家電製品、寝具、家具と並ぶエリアを次々に素通りし、昨日一度訪れたペット関連の製品が置かれたエリアに出た。

「これで大方店内周ったな」

 時間にして二時間ほど。資材関連のエリア以外を周り終えた仁成は、そのままペット関連とアウトドア製品、そして文房具などを適当に漁っていると時計は12時を指していた。

「昼にするか」

 その一言を聞き付けた琥珀と千影は、店の奥に姿を消した。

「・・・?何だ急に」

 しばらくその場で待っていると、二頭は思い思いのドッグフードを口に咥えて戻って来た。ちゃっかり月夜が選んだ物も咥えている。

「ぐっ。ここに来て、好みが分かれたのか」

 三頭それぞれが選んだ物は、琥珀は柔らかめのもの。対して千影は硬めのもの。月夜はその中間の標準的な硬さの物を好んでいることがこれで分かった。が、それは同時に持ち出す物資が増えたことを意味する。

「…ぐぐぐ。抑えろ仁成。この部隊のリーダーは月夜だ。彼女の判断に…」

 結局、仁成はそれぞれの好みに合わせた餌を持ち運ぶことになった。


 昼休憩。仁成は警察署を出て以降同じ携帯食で食事を済ませている。これは単に携帯コンロを入れ忘れていたためである。一応、携帯コンロとガス缶も午前中に手に入れたが、持ち運ぶかはまだ分からない。

 レトルト製品や米は五日分は持って来ているが、このまま町から脱出することを考えると不要にも思えて来ていた。それよりも一本で十分なエネルギーと栄養を確保できる携帯食とサプリは持てるだけ持って来ている。嵩張らないし重くもないため、しばらくはこれだけでいいかとも考えていた。

 幾つかのサプリを水で流し込み食事を手早く終わらせた仁成は、餌皿に開けられたドッグフードをがむしゃらに食べる三頭をみながら、ふとあることに気付いた。

「体はでかいのに、思ったほど食べないな」

 琥珀と千影は大きいと言っても大型犬一歩手前。中型犬を飼っていた仁成にも食事量もある程度分かる。だが、月夜は大型バイクを超える体躯を誇っているはずなのだが、食べる量は思ったより少ない。

 これも変異の影響なのか、それとも個体差なのかは分からないが、疑問点の一つとしてメモに追加した。

 ただ、これで持ち運ぶ量は少し減らしても問題なさそうだと安堵もした。


「さて、選別するか」

 仁成は休憩を終えると、ホムセンのあちこちから運び込んだ物資の選別を始めた。

 まずは何と言っても食料と水である。食料は長期保存可能な携帯食料を中心に様々な商品を集め、全て持って行くことにしている。飲料水は災害用の500ml.ペットが入った箱が一箱だけ、レジ横のスペースに詰み上がった段ボールの中から見つかっただけだった。できればもう一箱あればと思ったが、見つからなかった。

 衣類はシャツを三枚。パンツは三枚入りのボクサータイプを選んだ。靴下は四足。これも束になっているものを選び、毎日履き替えることにした。

 水質など気にしなければ川や用水路の水でも洗濯は可能だろうと判断し、お徳用洗剤も一つ。それに合わせ、軽めの針金ハンガーを二つと洗濯バサミも数個用意した。

 次に小物類。歯ブラシは呼びを含め二本。歯磨き粉などは消費期限が過ぎていたため見送った。文房具は包みから出して使い心地で決めながら、ボールペンは五本入りを選んでいる。この他にライター五本入り何かに使えるかもとジッポオイルも一缶選んだ。

 凡そ身に付けるものと日用品を仕分け終わると、アウトドア製品が並ぶ棚に再び出向き、何か使える物で持ち運べるものはないか探した結果、防水レジャーシートと新品の寝袋。そして小さな折り畳みコンロと固形燃料、チャッカマンを手にして戻り、これらも持ち出すことにした。

 特に折り畳みコンロは幅を取らないうえに、使う固形燃料も小さいため重さも気にならない優れものだった。


 再び店の奥に歩き始めた仁成は、ペット製品売り場で月夜達用のブラシを選びを始めた。

 月夜たちはこれまで野生下で過ごしていた事も有り、毛並みは固くなっている所も目立つ。とりあえず、全てのブラシを籠に詰めるとすぐに明るい入口に戻り、三頭の毛並みを整えることにした。

 まだ身体が小さいとは言っても、大型犬一歩手前の琥珀と千影の手入れにもそこそこ時間が掛かる。月夜はさらに倍の時間以上が掛かるだろう。

 仁成は犬を飼っていたとはいえ、序列は一番下に見られていた。さらに毛並みの手入れは父と母以外にはさせない頑固な犬だったため、実の所犬の毛を梳くのは初めての経験だったりする。

 どのブラシを使えばいいのかなど、パッケージの説明を読みつつとりあえず目の粗いものから順に少しずつ毛を解す事から始めた。

 解し始めてすぐ、三頭の体毛に絡まった砂や埃が大量に抜け毛と一緒に床に落ちる。仁成はそっと防塵マスクと保護メガネをかけた。


「お、終わったぁ」

 慣れないブラッシングに悪戦苦闘しながら、気付けば既に午後3時を過ぎていた。三時間近く掛かったブラッシングのほとんどは、一番体の大きい月夜に費やされた。

 月夜の年齢は分からないが、彼女の体毛はかなり固くなっている所が多く、その分砂や埃、そして抜け毛も多かった。

 だが時間を掛けた甲斐あって、三頭とも毛並みの艶が幾分か戻り、ついでに顔周りの伸びた毛も鋏で梳いたことで、凛々しく見える。

 三頭も絡まった毛が無くなったことで、満足気に毛づくろいを始めた。

 そして月夜たちの反応から、三つのブラシを持って行くことにした。一応もう一つ、毛を解すように目の粗いものも持って行くが、ブラッシングを欠かさなければ必要は無くなりそうだった。

 この日はそれぞれの好みのドッグフードを集積所に運んだ後、資材エリアを一通り周り、何があるか無いかを確認して周った。

 そこで使えそうな資材とカートに幾つか目星を付け、どの様な改造を施すかイメージしながら、工具類と釘やネジなどを見繕いながら、適当な所で切り上げた。

 予定では明日からカートの新調と、出来る事なら琥珀と千影が引けるように改造できればと思っているが、まだ出来るかは分からない。実際に作ってみてから決めるしかない。

 最悪、資材エリアの端に転がっていた大型の荷車を使う事も視野に入れて考え直す必要はあるが、ひとまず明るい内にスケッチブックに幾つか考えている改造案を描き出しながら、また味気ない携帯食で夕食を済ませた。


 そして、仁成の予定を大きく狂わせる出来事が発生する。 

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