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少年のマーリン  作者: 相澤
第6話 アラディアの死闘 前編

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91/149

6ー16



 開戦の合図と同時に、右手の指を全て敵に向ける。

 魔術、爪爪(つめつめ)

 一瞬にして伸縮する五本の鋭利な(やいば)が、目に見えぬ速度で敵に遅いかかる。

 ーー予選と本戦では相手との距離が違う。

 マネー・マネーは真ん中にいたが本戦は端と端だ。接近戦が得意な術師にとって不利に働くルール。

 利用しない手はない。

 一方的に遠くから嬲ってやる。

 一歩、ゆらりと、まるで幽鬼のようにふらつくカナメ。

 不気味な感覚がアンジェリカを襲う。


「おおっとー!? カナメ選手、僅かな動きでアンジェリカの爪爪を躱したぁー!」


 実況と観客が盛り上がる。

 ただの偶然だ。

 見れば、カナメは紫電を纏っていない。

 刺突をする態勢で、縮んでは伸ばしてを繰り返す爪。

 ……当たらない。

 見てから躱せる速度でもないのに、どうして。


「カナメ選手が躱す、躱す、躱すぅー! 凄まじい反射神経だー! 魔術を使ってるように見えないがー?」


 観客が沸く。熱を帯びた視線が全てカナメに注がれるのを感じたアンジェリカ。

 ーーその視線は私のモノなのに!

 両手を駆使し、十の爪がカナメを突き刺そうとしてーー弾かれた。懐から短刃を取り出して、それを振るい、華麗に躱す。

 敵と目が合う。

 ただならぬ殺意がそこにはあった。


「ひっ……!」


 怖い。

 ゆっくりと近付いてくるカナメ。何やらぶつぶつと呟やいてるのが聞こえてきた。


「ユルサナイ……ユルサナイ……」


 怖い怖い怖い。

 爪爪を解除し、両手の指先に魔力を集め、腕を交差して思い切り振るう。

 爪葬(そうそう)

 十にも及ぶ、広範囲の風の刃。

 カナメに当たる寸前、彼女がとった行動はーー


「と、翔んだー!?」


 信じられないほど高く跳躍し、爪葬を回避したカナメ。難なく着地を決めた先は、アンジェリカの目の前だった。


「オネエサン、いいモノぶらさけてるネ?」


 酒場にいるオジサンと同レベルの猥褻な言葉に、苦笑いするアンジェリカ。


「ひ、貧乳でも好きなひとは好き、ぶっ」


 頬に強烈な殴打。

 地面に倒れ意識が薄れていく中、またもや殴りかかろうとするカナメに「ストップストップ!」の声が掛けられる。

 ……トラッシュトークはほどほどにしよう。

 一人反省をして、アンジェリカの意識はそこで途切れた。





「勝利おめでとう、クールビュ、」


「マーリン」


 音をたてて隣に座る彼女に少し肩が震えた少年。一回戦お互い無事に勝利し、めでたい空気の筈が何故かここだけピリピリしている。


「わたし、いまめちゃくちゃ機嫌が悪いの。言いたいこと分かるよね」


「あ、はい。すみませんでした」


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