6ー12
「怪我の程度は」
「大丈夫ですよ。治るのに二日もかからないです」
「そうか」
担架に乗せられた対戦相手のレイ・フィールドを見詰めていると、意識を失っていた筈の彼が目を開く。
「こ、こは……」
「魔術闘技場です。先程まで貴方は戦っていました」
「…………ああ、そうか。負けたのか、俺は」
通路に運ぼうとしたギルド職員二人に「待ってください」と掠れた声で制止をかけるレイ。その目は、傍に立ち尽くすマーリンをしっかりと映していた。
「すまない……不甲斐ない試合を、してしまって」
「なにを言う」
レイの言葉に優しく笑うマーリン。
彼に近寄って「ほら」と視線を促す。
「かっこよかったぞー!」
「ようやった二人とも!」
「また来てくれよ、レイ!」
「ありがとうー!」
「誰も、お前を責めてない」
レイの口元が、僅かに震える。
その目元を腕で覆う。
ギルド職員二人が頷き合って、ゆっくりと担架を運んでいく。止まぬ歓声に包まれながら、レイ・フィールドは闘技場を後にした。
本戦に出場が決まった選手は観戦許可が出ている。
試合を終えた少年が通路を歩きながら、席の場所をギルド職員に尋ねているとき横から口が挟まれる。壁に背中を委ねて「俺が案内しよう」と一言。
黄金の魔術師が、そこにはいた。
「アンタの連れなら控え室に行ったよ」
カナメの姿を探していると、マーリンの背後にいるマネー・マネーがそう言った。
「どうして俺とカナメの関係を知ってる?」
わざとらしい笑みを浮かべて「まあ座れよブラザー」と促すマネー・マネー。従って席に座るマーリン。観客席の最前列、見渡せば控え室で目にした術師の顔がちらほら。
腰をおろした席は一般客とは少しだけ離されている。マネー・マネーの姿を見ては発狂して近寄ろうとする客に、ギルド職員が頑張って対応していた。
「さっきの質問だが」
まるで何事もないように、マーリンの隣に座るマネー・マネー。
「アイザックからある程度のことは聞いている。アンタの正体もな、魔術王」
「護衛でも頼まれたのか」
「まさか。俺はただアンタと喋りたかった、それだけさ」
「信じろと?」
「信じられないか?」
少しの間。
我慢できなくなったのか、笑みをこぼすマネー・マネー。
「まあ疑うわな。初対面の人間を信じろというのが無理な話だ。こうしてるいまも敵に命を狙われてるアンタの立場からすれば全てが疑わしいだろう」
「お前と敵が繋がっている、その線も俺は疑っているよ。名前の通り金に目が眩んでな」
その言葉を聞いて驚いたような表情をしてから、次第に口元が歪み、豪快な笑い声をあげる黄金の魔術師。




