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少年のマーリン  作者: 相澤カナデ
第6話 アラディアの死闘 前編

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84/99

6ー9

 

 

 

 

 足が震えている。

 心臓が高鳴り叫びをあげている。


 いつこの緊張感から解放されるのだろうと、レイ・フィールドは魔術闘技場の通路で椅子に腰をおろし何もない地面に視線を落としていた。傍には案内役のギルド職員がいて、会話もなく無言に徹している。それはレイにとって有り難いことだ。頭の中がいまは上手く回ってない、おそらく人並みのコミュニケーションはとれないだろう。

 額から嫌な汗。季節は秋だというのに体が熱くて仕方ない。さっき水を飲んだ筈なのにもう喉が渇いている。上から聞こえる観客の声が、プレッシャーとなってレイに襲いかかる。

 それでも、ここまで来た。

 緊張に弱いレイがこれだけ大勢のひとに見られながらも本戦に進むことができたのは、金銭的な面で家族を楽させてあげたいという、強い覚悟からだ。

 農業を営む両親に、大切に育てられた一人息子のレイ。経営は安定していたが、昨年魔物によって畑が荒らされ不作の年を迎えた。

 家族の助けになりたい。

 それまでギルドとは無関係だった彼がこの道を迷いなく選んだのには充分に足る理由だった。

 魔物を討伐し続け一年が過ぎ、現在レイの等級は四級。良くしてもらっているパーティーメンバーからも三級以上の実力はあると太鼓判を押してもらい、背中も押してもらう形で初の魔術闘技場に参加した。

 父と母からはもう充分助けになったと言われているが、エルドラは魔物の数が多い。またいつ畑が荒らされるかも分からなかった。

 大切な両親に、恩返しを。

 その為にはギルドの昇級に大きく影響する魔術闘技場で結果を残す。


 震えよ、止まれ。

 心臓よ、静かにしててくれ。


 その時を待っていると、ギルド職員が口を開く。


「お待たせいたしました。名前を呼ばれたら、通路から顔を出してください」


 来た。

 案内に従って席を立つ。

 額の汗を拭い、歩いて、通路の出入り口から闘技場が見えてきた。夜のはじめごろ、照明で輝くステージ。その奥には見たこともないくらい大量の人が、いまかいまかと舞台を見下ろしている。


「さあ、お待たせいたしました!」


 舞台の上に立ち、サングラスをかけた禿頭の黒人が陽気に踊りながら声を発する。遠くからはっきりと見えないが、おそらく首に魔術特有の紋様が走っている。あれが拡声の役割を果たしているのだろう。


「実況はこのワタクシ、毎年お馴染みケニー・Jがお送りします! みんなー! 盛り上がってるかー!?」


 ケニーの声に、観客達が大声で返す。

 会場が揺れているかのような大音量。

 レイの緊張が限界まで高まる。


「さて、本戦第一回戦! 待望の選手入場です!」


「行ってください。健闘を祈ります」


 ギルド職員に頭を下げて、照明と観客に顔を晒すレイ。

 緊張をなくすことはできない。

 ならもう、それと付き合っていこう。

 覚悟だけはできている。


「本格的に魔術を扱うようになって何と僅か一年! 初参加で本戦のチケットを掴み、アラディアの舞台へと足を踏み入れたのはこの男、新星、レイ・フィールドォォ!!」


 紹介を受けて闘技場へと立つレイ。

 対する反対の通路から、小さな人影が見える。

 あれが、今日の対戦相手。


「対するは、予選で派手にかました海外からの刺客! 魔術に年齢は関係ないと言わんばかりの不遜な態度! 天才少年! マーァァリィーン!!」

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