6ー7
昼食には遅い時間となっていたが、闘技場周囲の飲食店は沢山の人で賑わっていた。仕方なくその場から離れて通りを歩くマーリンとカナメ。
予選を終え、現在二人はベンチに座り、本戦に備えて軽い食事を摂っていた。
「とにかく一安心」と合格を言い渡されたカナメがそう口にする。「マーリンはともかく、わたしは通れるか不安だったよ」
「自己評価が低いな、カナメは。俺は余裕だと思ってたよ」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど」
「あれだけ沢山の人がいて選ばれたのはたったの三十二だ。鼻が高いよ俺は、優秀な相棒が隣にいて」
「……ふーん? ……ありがと」
「頬あっか」
照れているカナメを見て笑うマーリン。からかうなと言って何度も少年の肩が叩かれる。
後二時間後には本戦の一回戦。
翌日には二回戦、三回戦。
最終日は準決勝、決勝の三日間で構成されている魔術闘技場。
「そういえば凄い騒ぎになってたね。あの試験官に傷を負わせたひとがいるって」
闘技場を後にする際、入口付近で固まっていた観客はその話題で盛り上がっていた。
「一級術師を相手にたった十秒で傷をつけるーー俺でも出来なかったことだ。是非、目にしたかったな」
控え室からは闘技場の様子が見えない。部屋にまで響く観客の盛り上がり具合で合否を察するくらいで、予選が終わるまで少年は暇していた。
手洗いに行くにしてもギルド職員が付いてくるあたり、闘技場の様子を見せないのは意図的なものだろう。
「考えてなかったけど」
カナメが呟くように、小さな声で発する。
「わたし、マーリンと本戦であたるかもしれないんだよね」
「ああ、楽しみだ」
「楽しみ?」
「俺と出逢ったあの夜」
月下。
初めて出逢ったあの夜を、二人して思い出す。
「あの時は互いに加減をしていたな。ーー今度は本気だ、カナメ。遊びはなしだ、あの夜の続きをやろう」
カナメの目を見て話をする少年。
互いに逸らしはしない。
「……分かった。今度は、本気で」
覚悟を決めた二人の魔術師が見詰め合っているところに人影が差す。
顔をあげれば、藍色の装束に身を包んだ、どこか神父を思わせる男がマーリン達の前に立っていた。
「すみません、お話し中に」
男の背後には二人、同じ衣服を着熟した若い男女が控えていた。二人とも見覚えがある、先まで控え室にいた予選通過の魔術師だ。
「お時間よろしいでしょうか」
「短い話なら」
藍色の短髪に黒い縁の眼鏡。にっこりと、笑顔を切り取って貼り付けたような表情をする細目の男。
怪しさしかない。
第一印象は最悪に近かった。
「私はアテナ教の幹部、ジンと申します」
「アテナ教? 聞いたことないな」
「設立して間もない組織でして。私達の理念は魔物の絶滅ーー率直に申し上げて、私達の仲間になって力を貸してほしいのです」
「断る」
「ごめんなさい、わたしも」




