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少年のマーリン  作者: 相澤カナデ
第6話 アラディアの死闘 前編

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81/99

6ー6

 


 のぼりきって地に足が着いた時点で、十秒。

 何をするべきか。

 どんな魔術が通じるのか。

 一級術師とは、どれほどの実力を持ち合わせているのか。

 ーー楽しみだ。

 微かな笑みを浮かべて、闘技場の地に足が着いたと同時に、掌を翳しては即座に魔術を展開する。






「へえ?」


 マネー・マネーが嬉しそうに笑って正面を見る。いまにも自身を飲み込もうとする巨大な炎はどこか虎の口を連想させた。

 咬炎(かえん)

 観客の熱狂と共に襲いかかる魔術を前にマネー・マネーもまた右手を前方に翳し、魔術を展開する。


 ーー三秒が経過。


 闘技場が揺れ、地面から湧くようにして光り輝く黄金の城壁がマネー・マネーと咬炎の間に出現した。曰く其の右手はありとあらゆる形で黄金を生み出すーーマネー・マネーの魔術、ミダスの右手。

 金の城壁が咬炎と衝突し、無力化しては地面に溶けるようにして解除された。その一瞬の出来事を見届けてから前方に目線を向けたマネー・マネーが驚きで目を見開く。


 ーー五秒が経過。


 いない。

 先程までいた筈の少年が、そこにはいなかった。

 直ぐさま空を見上げて、またも驚く。

 ()()()()()()()

 信じられない光景を前にしかしマネー・マネーは警戒を解かずに迎撃の態勢をとる。少年を中心に円を描く幾つもの灯火が、次第に槍の形を成す。


 ーー八秒が経過。


 少年の指先が弧を描くようにして地上へ向けられたと同時に魔術ーー火雨(ひさめ)が降り注ぐ。

 対して、新たな城壁を咄嗟に生み出すマネー・マネー。

 衝撃と共に、闘技場が煙に包まれる。


「しゅ、終了! 終了!」


 十秒。

 ギルド職員が慌てて告げたのは、この少年に追撃をさせてはならないと危険を察したが故。

 静まり返った会場で空にいた少年がゆったりと地に降りる。息を呑む観客、中には安否を心配してか悲鳴をあげるものもいた。次第に煙が晴れ、闘技場の中央に人影ーー両腕を広げては無傷をアピールするマネー・マネーが其処には立っていた。

 瞬間、拍手と歓声。

 狂乱の中、対峙する二人の魔術師。


「で、合否は?」


「ふ、観客の声を聞けば分かるだろーー合格だ」


「そうか」


 颯爽とその場を去ろうとする小さな背中に「一つ聞きたい」と声を掛けるマネー・マネー。


「炎にこだわったのは何の意図だ?」


 振り返っては、笑みをこぼす少年。


「お前の黄金を溶かしてみたかった、ただそれだけだ」


 そう言い残して、職員の背を追っては控え室に案内される少年。

 空に立った時点で、()()()()()()から疑いは既に消え去っていた。

 あれが魔術王。

 厄災チェノースを殺した英雄マーリンか。


「七十九番、前へ!」


 余韻に浸る暇もなく次の挑戦者が闘技場に立つ。効率がいいとはいえ、降りかかる羽虫を払うのは相も変わらず鬱陶しい。

 だが全ては金の為だ。

 夜の飲みを楽しみに役割を全うするマネー・マネー。そんな彼と観客全員にやがて衝撃が訪れる。




 与えられた僅か十秒。

 魔術闘技場が開催されて以来、参加者の中から誰一人として黄金の魔術師に傷をつけたものはいない。

 その歴史が、今日で変わる。

 抽選番号五百十七。

 名をドロシー。

 黄金を裂いた、唯一の魔女である。






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