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「さて、魔術師諸君。ルールは既に聞いていると思うが、改めて説明を」
それは観客達にもいま一度、ルールを理解してもらう為の言葉。
正面の通路に目を向けるマネー・マネー。魔術師が列をなし、外にまで及んでいる為、全員には当然言葉が届かない。いま頃は通路と外で待機しているギルドの職員が術師にルールの説明をしている手筈だ。
「配られた整理券は大事に持っているな? 一から順に呼び、この闘技場に立ってもらう。俺はルーズな奴が嫌いだ、十秒以内に来なければ失格とする。そして、ここに立ってから参加者に与えられる時間もまた十秒だ。与えられた僅かな時間で自身の魔術を魅せてみろ。その魔術は俺を倒す為、はたまた己の力を誇示する為に振るうかは手前次第ーー」
言って、微笑うマネー・マネー。
本戦を見据えて手札を隠す魔術師もいるが、大概は前者だ。
何故か?
答えはシンプルだ。
一級術師を前に、力を試したいーー
ただそれだけの、魔術師らしい理由だ。
「ーーどうか悔いなき選択を、諸君」
ギルドの職員が案内を始める。
痺れを切らしたかのように、今日一番の歓声がアラディア・コロシアムを包んだ。
「不合格」
「あー、不合格」
「つまらん、不合格」
「不合格。つぎつぎー」
「不合格。さっさと降りろ」
「ん? んー、……ほりゅ、いや、不合格」
スムーズに列が進む。
そうして通路にいるときには見えなかったその姿を漸く目にすることができたマーリン。
現一級術師マネー・マネー。
彼がどのようにしてこれだけ数多くいる魔術師を捌いているのか気になって仕方がなかった少年。整理券を片手に彼を見詰めていると、いままさに先頭の術師が案内を受けて闘技場に立つところだった。
その瞬間から刻まれる僅か十秒の試練。当然、挑戦者に目をくれることなく黄金の魔術師だけを視界に収める。
カナメと同じく全身に纏う魔力は乱れなく洗練されていて美しい。そして挑戦者の魔術を軽々と片手で弾き「不合格」と告げ、列が進む。
合格を告げられた術師はここからでは確認できない。手元に目を向けるマーリン。与えられた番号は七十八。カナメの番号は四百三十九と大分離れてしまった。
瞬く間に闘技場へと近付いていく彼がどうしようかと未だに悩んでいるのは、披露する魔術についてだ。手札を晒すことは出来るだけ控えたい、が、予選に通らなければ何も意味がない。
「七十八番、前へ!」
案内を受け、闘技場に続く短い階段をのぼる。
その間、観客席から「かわいいー」などの黄色い声と、無数の視線。だが何一つとして気にした様子を見せない少年が興味を示すのは目の前にいる魔術師だけ。




