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会釈をして場を去ろうと背中を向けたアイザックだったが、何かを思い出したかのように突然振り向いては懐から書簡を取り出してマーリンに差し出す。
「忘れるところだった、これはアッシュ隊長から渡してくれと頼まれていたものだ」
「そうか」
「では」
闘技場の方へ足を運ぶアイザックを見送って、渡された紙をカナメにも見えるよう確認するマーリン。内容は教団の全隊員にマーリンの情報が共有されたこと、そしてブリタニアに対し、事の顛末を説明した書簡が送り届けられたと記されている。
最後に感謝と謝罪が記されたアッシュの言葉を目で通してから、少年は手紙を懐に仕舞う。
「何だか大事になっちゃったね」
「こうなることが目に見えていたとはいえ、正直面倒だな。厄介事に巻き込まれ……いや、自分から首を突っ込んだから仕方ないか」
「マーリンは優しいからね、仕方ないよ」
「やめろ。ただの自己満足だ」
「はいはい、素直じゃないなー」
悪戯に笑うカナメが急にマーリンの手をとる。
「あ、おい」
「いまはわたしがお姉さんなんだから、迷子にならないよう引っ張ってあげる」
そうして闘技場に向かって歩き出す二人。
されるがままにしていた少年が静かに呟く。
「耳真っ赤」
「……うっさい」
「ようこそおいでくださいました、紳士淑女の皆様方」
円形の闘技場、その中央に立つマネー・マネーが観客席に向かってそう声をかけると、地鳴りのような歓声が響き渡った。
闘技場を囲むようにして観客席もまた円を描き、危険がないよう充分な距離が開けられ、見下ろす形で術師達の戦いを観戦することができる。
天井は開けており、約五万人を収容できるアラディア・コロシアムはほぼ満席。言葉を聞き逃さないよう、沈黙を守り続ける客達を見て満足そうな表情を見せるマネー・マネー。
「本日はお日柄もよく、なーんて、つまらない挨拶はやめだ。 いまから予選を開始する! 試験官は毎年恒例この俺、偉大なるマネー・マネーだ!」
両手を広げて歓声を浴びる黄金の魔術師。
「賭けは今年から無くなった、だがそれがどうした? ドーパミンなんかよりも遥かに凄いモノがここにはある、俺が、黄金の魔術師マネー・マネーがそれを保証しよう! さあ紳士淑女、声を! 熱狂の渦を! ここに!」
再び、歓声。
その声は、上から降り続ける確かな圧は、一部の参加者を萎縮させる。




