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少年のマーリン  作者: 相澤
第8話 アラディアの死闘 後編

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126/147

8ー18



 足元の小石を拾った後、全身に纏うは魔術・紫電。

 単純な話だ。開花する前よりも速く通り過ぎればいい。

 蕾を踏んでは駆け抜けていく小さな体、罪人まで一直線に続く火柱は少年に掠りもせず、次いで手にある小石を周囲にばら撒く。

 どんな小物でも物質が領域に侵入した時点で開花する彼岸の花。辺り一面火の海となり、その中心に対峙する二人の術師。

 間抜けと言ったのには理由がある。

 これで互いの逃げ道は閉ざされた。


「まずは腕を斬り落とす」


 狭い空間、即死圏内の状況下を自らつくったマーリンに対し、罪人は真剣な表情で構えをとる。


「その次は命をとる」


 互いの目が合う。

 少年の挑発に返事はない。

 火の粉が舞う中、考える時間を与えない速度で罪人の背後に回るマーリン。失われていく酸素、だがこれ以上ないほどに思考は澄んでいる。クルミ戦よりも遥かに命の危機が迫る状況、一手読み違えたら死ぬことを理解していながらの接近。

 炎刃が顔に迫る。 

 突きをすんでのところで躱し、懐に潜り込んでは振り上げた黒剣。罪人もまた間一髪で躱し、逃げるように距離をとったところをすかさず風斬で追撃する。

 反撃に転じて罪人が炎斬を放つ、その行動が僅かに遅れたのは、少年の片手にある筈の黒剣が存在していないが故に。

 振り上げたタイミングで上空に向けて手放し、二人の真上、半回転する黒剣が魔術を解放する。

 雷槍。

 風斬しか放っていなかったコア・メルリヌスが意表を突くーーだが雷の着地点に罪人の姿はなく、背後の気配に気付き、紫電による速度で炎斬を回避する少年。

 当然、予測はしていた。

 仲間が使えるのだから習得しているだろうと。

 紫電。

 罪人の体の周りで空気の弾ける音が鳴る。無駄な放電もない、カナメと同じ綺麗な紫電だ。魔術に対しての向き合い方が見え隠れするだけに失望する。どうしてその輝きを自ら曇らせるのかと。

 

「どうかしている」


 一瞬、心を見透かされたのかと思った少年。

 それはこちらの台詞だというのに、言葉とは裏腹に、罪人の眼差しには光があった。

 それはどこか、敬意を表するような。

 

「僅かでも触れたら死ぬ、それを分かっていながら俺を殺そうとしている。その、姿で」


 感服したかのような表情。

 気持ちが悪いほどの二面性に吐き気を覚えるマーリンを無視して、男は言葉を続ける。


「全盛の十分の一にも満たないのだろう? そして、体に刻まれたそれは簡単に(ほど)けるものでもあるまい」


「協力者に聞いたのか? 教団の」


 やはり裏切者はいるか。

 マーリンの情報は教団全体に行き渡ってはいるが、外部の術師には漏れていない筈だ。おそらくオリヴィエの事情聴取から内通者に伝わったのだと予測する。


「違う、と言っても信じないか」


 少年の考えを否定する罪人。


「何故ならその魔術は、ーー」

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